いよいよ花粉シーズン到来!
今年もこの季節がやってきました!負けずに頑張っていきましょう!
今日は以下のトピックでお話していきます。
①どんぐりの発根!こんどこそ!
②どんぐりの豊凶周期
③コウヤマキのお酒
④新聞記事から日本の林業の課題
それではどうぞご覧ください!
どんぐりついに発根!
今後こそ播種したどんぐりからの発根が確認されました!!!!
失敗してしまったのではないかと不安になっていたので、嬉しさも数倍です!無事発芽するところまで育ってくれ!と祈ります。
温室ではこんな調子のどんぐりですが、散歩中に偶然、どんぐり発根多発地帯を発見しました。どんぐりを食べるリスやネズミ、虫が少なかったのか、はたまた豊作年で大量のどんぐりが散布されたのか。気になるところです。
豊凶周期について
豊作凶作は、どんぐりに限らず多くの樹木でも見られる現象ですが、その理由については様々な説があります。樹木生理的な面からは、種子を生産するのに必要な養分がたっぷり溜まったときに一斉に種子を散布して、溜まるまでは小出しにするという説があります。人間でも子育てが大変なように、樹木も毎年子どもを送り出していたら力尽きてしまうので、元気なときにまとめて送り出すようなイメージです。
生理的な面でのもう一つの説明は、気象条件による影響です。一般的に樹木は高温・乾燥の夏の翌年は、よく実をつけるという事例があるそうです。これは高温・乾燥条件で花芽形成が促進されるためだとされています。
参考:ドングリの豊凶 -コナラ種子生産について- 岐阜県森林研究所
また、進化的な面からはネズミなど天敵との関係が豊凶周期を作り出したとも考えられます。毎年沢山のどんぐりを播いていると、それを食べる天敵も増えてしまいます。これを繰り返すと、そのうち播いたどんぐりを食べつくされてしまうかもしれません。そこで、凶作年を設定すれば天敵が減ります。天敵が少ない状態で再び大量のどんぐりを播けば、定着率が上がると考えられます。つまり、どんぐりの生存戦略として、豊凶周期が定着したのではないか、という説です。
個人的には、天敵が関わってくる後者の仮説の方がストーリーがあって面白いなと感じます。
コウヤマキ・クロモジのお酒!
真面目な新聞記事の内容に移る前に、面白い話題をご紹介します。それが木で香り付けしたお酒です。今月12日の新聞に載っていて、僕の大好きなコウヤマキの香りがするお酒がある!と思ってテンションが上がったので、皆さまにも共有したいと思います。
記事では国産樹木を使った様々なお酒が紹介されています。中でも注目が、クロモジとコウヤマキを使った商品。クロモジを利用したのが「香の雫」という商品。コウヤマキを使ったのが「槙 KOZUE」という商品です。以前、個人的に好きな木の香りランキングを取り上げたことがありますが、どちらも上位に来る大好きな香りの一つです。
クロモジは、高級爪楊枝材として有名で、最近ではのど飴やアロマの原料にも使われており人気の高い種です。一方のコウヤマキは、我らが和歌山を代表する観光地の高野山を名前に関した樹種で、美しい樹形で有名です。香りも非常に上品で、私は「森林の香りをわらび餅に詰めたような香り」であると主張しています。水に強い性質もあるので、お風呂の材に使われることもありますが、成長がゆっくりで流通量も少なく高級材となっています。
記事で紹介されていた「槙 KOZUE」は、高野山のある和歌山県の酒造で作られているようなので、是非一度酒造まで足を運んでみたいですね。コウヤマキだけでなく、温州ミカンの皮なども利用されていて、森林浴をしているような気分になるらしいです。和歌山県を体現するような飲み物ですね。
新聞記事から
さて、先週予告しましたように、日本経済新聞において、林業の抱える課題について3回に渡って特集記事が組まれていたので、解説しながらご紹介したいと思います。特集記事では大きく以下の3つのトピックが載っていました。
1. 放置される人工林
2. 木材流通網における連携不足
3. なぜ国内林業は補助金に依存するようになったのか?
このうち、今日は1と2についてご紹介いたします(3は興味深い内容なので次回深く考察します!)。
1. 放置される人工林
元記事:荒ぶる放置林 座礁近づく「緑の資産」 日経
まずは、本プロジェクトのきっかけにもなった、荒廃する人工林の話題です。拡大造林期に急速に広がった人工林は、間伐などの管理を想定して植えらています。しかし、外材の輸入自由化や木材価格の低下、建築様式の変化などが生じた結果、国内林業がお金にならなくなり、放置される森林が増えてしまいました。そのため、木々は密なまま細長く育ち、林床には光が届かず下層植生が育たない暗い森林が広がってしまいました。このような森林は倒木などが発生しやすく、自然災害時に、人々の生活へ被害を及ぼす危険性があります。実際に、2019年に、千葉県内で発生した大規模停電も、こうした放置林が台風への抵抗性を失い、倒木が電線に引っかかった影響が大きいとみられています。
また、放置林は、国際的に炭素吸収源と認められる森林の基準を満たさないことがあり、国内の人工林1000haのうち約2割は吸収源にならないという意見もあります。樹木の持つ炭素貯留機能は、脱炭素時代に欠かせない機能の一つですが、その機能も管理不足により低下すると考えられているためです。
皆伐後の再造林も問題に
加えて問題になっているのは、皆伐後の再造林です。人工林を利用しようと、皆伐したは良いものの、林業従事者不足や意識の低い事業者によって、再造林されない造林未済地がこの3年で3割増えたといいます。この増加分がどのように増えたものなのか、記事の中で考察されてはいませんでしたが、私は主伐が増えたことで、連動して造林未済地が増えたのではないかと考えます。では、なぜ主伐が増えたのか。
この点について私は、2つの理由を考えました。一つは主伐向けの補助金狙いの事業が増えたことです。前述したように、拡大造林期に植栽し、伐期に達した人工林の利用を促進するために、主伐向けの補助金を設定する自治体が増えています。こうした制度を利用する動きが増えたことで、主伐が増加していることは十分に考えられます。
もう一つは、燃料用チップ需要の増加です。昨年度、木材自給率が40%を超えましたが、この上昇には燃料用チップとして消費された木材の影響が大きいとされています。脱炭素化へ向けた野心的な目標設定を達成するために、バイオマス発電事業の拡大が求められ、大量の燃料が必要となりました。発電事業者はプラントを稼働させるために何とか燃料をかき集めなければいけないので、まとまった量の木材を欲します。その結果、「まとめて買い取ってくれるなら」と、山で主伐が増加した可能性は大いにあります。(バイオマス発電に関する賛否の議論は、長くなってしまうので今回は割愛します。詳しくは2021年4月前半の活動報告でご紹介しております)。
いずれにせよ、植林しなければ木材といえど循環型社会の形成には貢献しません。皆伐後の監視体制が整っていないことについて、危機感を持って対応する必要があると考えられます。また、造林に関しては技術を持つ事業者が不足しているという話も聞きます。ドローンによる苗木運搬など、新たな技術活用を推進すると共に、技術をもつ事業体の優遇措置などを講じる必要があると私は考えます。
木材流通網における連携不足
Reference:ウッドショックが映す現実 再生モデルは一握り 日経
二つ目の課題が、木材流通網における連携不足です。記事では森林界隈で有名な西粟倉村の事例を紹介することで、対比的に国内流通網の課題が指摘されていました。
日本では川上の素材生産の現場から、川下のハウスメーカーなどの消費現場に辿り着くまでに、多くの仲介者が関わっています。森林の所有者は業者や森林組合に施業を委託し、切り出された木材は市場で競りに出ます。競り落とされた材は製材会社と問屋を経由し、場合によってはプレカット工場を経てハウスメーカーなどの消費地に届きます。
こうした長いサプライチェーンは、流通量の緩衝材的役割を果たしたり、ニッチな需要を探して付加価値を高めたりという利点もある一方で、川下と川上の連携を困難にしてしまいます。素材生産者が木材の利用先を把握できないので、柔軟な生産計画を立てられないためです。
西粟倉村ではこうした問題を解決するため、流通経路のシンプル化を進めました。軸となっているのは「株式会社百森」という会社です。この会社は村民と交渉し林分の集約化をするところから、森林組合に委託するところまでの計画を作ります。さらに、最終的に村内の木材加工会社、兼木製品販売会社である「西粟倉・森の学校」に木材を直接販売するところまで担っています。つまり、「百森」が素材生産(川上)から消費(川下)までを見通せるような流通システムを作っているのです。
その結果、川下のニーズに応じて素材生産を行うという連携が容易になりました。また、森林所有者にも自分の山の木がどのように使われ、どれくらいの収益になったのか、情報が共有されます。収益の半分は森林所有者へ還元されるため、住民の百森への施業委託のインセンティブとなり、依頼が増加します。その結果、施業の効率化の障壁となっていた林地の集約化なども促進されるという好循環が生まれたといいます。どんな町になっているのか、一度足を運んでみたいですね!
ウッドショックで露呈した川下と川上の相互不信
この西粟倉村のように川上と川下の連携がとれている事例は、全国的に見ればごく少数です。ウッドショックではそのような一面が浮き彫りとなりました。
そもそも、ウッドショックはアメリカにおける需要の見込み違いから始まりました。製材会社はコロナの感染拡大による景気の落ち込みを予想し、大幅減産に踏み切っていましたが、実際には郊外の一戸建て需要が高まってしまったためです。このアメリカでの出来事は、木材の半分を輸入に頼る日本でも影響を及ぼしました。品不足は木材価格の急騰を引き起こし、ハウスメーカーでは工事の遅れを余儀なくされた事例も発生しました。しかし、なぜ木材価格が高騰したのにも拘らず、国産材は大量生産しなかったのでしょうか?普通に考えたらビジネスチャンスの到来に胸を躍らせるはずです。
記事は、その原因が川上と川下の相互不信にあると言います。その仕組みを説明するため、少々建築様式の変化について説明します。かつて主流だった軸組工法と異なり、近年主流なのは枠組み壁工法(ツーバイフォー工法)で、工場で予め規定の大きさに加工されたプレカット材が必要になります。均質性が求められるプレカット材には、十分に乾燥した材が必要になりますが、日本に多い小規模な製材会社にとって、乾燥設備の導入はコスト面でのハードルが高い存在になっています。
そのため、たとえ木材価格が高騰したとしても、「外材の輸入自由化によって市場を失った」という過去を知る事業者は、価格高騰が落ち着いた際に、再び需要が落ち込むのではないかと不信になってしまい、設備投資に踏み切れないのです。その結果、国産材は大量生産が出来ず価格も量も安定しないというイメージが付きまとい、川下での需要も離れてしまうという負の連鎖が生じています。この相互不信を払拭しなければなりませんが、そのためには西粟倉村のようなシンプルな流通網を構築して、長期的な計画を立てるための密なコミュニケーションが必要になるというわけです。
さて、課題ばかりの林業で暗い気持ちになってしまいますが、日本の森林面積の40%にも及ぶ、国家規模の大規模な植林が始まってから、未だ1世紀も経っていないと考えると、課題に直面するのは当然ともいえます。他産業よりも生産サイクルが異常に長いぶん、必然的に課題の解決にも長い時間を要すると思います。この試行錯誤が今後1000年の指針作りに重要になることは間違いないと思うので、悲観的になりすぎずに取り組み続けていくべきだと僕は思います。
ということで、次回は、なぜ国内林業が補助金に依存するようになってしまったのか、と言う部分についてご紹介したいと思います!