6月になりました。関東の梅雨入りのニュース以降も、しばらく平井は晴れが続きました。今年は梅雨入りが遅いのかなあと思っていたら、14日に梅雨入りが発表され、天気予報も傘マークが続いています。
梅雨時に林内で淡く咲いているのが、タイトルの写真にしたコアジサイです。庭木などに使われているアジサイよりも、小柄で目立ちにくいですが、暗い林内で咲いているのを見つけると、ぼんやりと光がともっているかのように見えることもあります。
5月の後半から6月の初めにかけて、古座川をはじめ紀南で楽しみなのがホタルです。去年は隣の集落の用水路で大量に飛んでいて、まるで天の川のようでした。今年も期待して行ったところ、去年と同じ場所ではそれほど飛んでおらず、別の沢で沢山飛んでいるのを見つけました。カエルの声を聴きながら、田んぼの湿っぽい草と土の香り、そして蛍火を楽しめるのも贅沢なものです。
6月の楽しみとして忘れてはいけないのが、漁の解禁です。6月に入ると、古座川流域で鮎漁が解禁されます。平井の方も早速山ほど釣ってきたというので、見せてもらいました。予想以上の量でびっくりです。聞くと、古座川の中でもダムより上の鮎は格別に美味しいようです。確かに、ダムの上下で川の水の匂いが全然違っていて、味が変わるのも納得です。
また平井では養蜂も盛んで、独自のゴーラと呼ばれる丸太をくり抜いた道具を使って蜂を飼います。写真は丸太を使ったものではありませんが、せっせと蜂が密を集めているところでした。今年は木々の花が例年より多く咲いているそうなので、蜂たちも大忙しかもしれません。買い物に行く道中でも、クリの花が一斉に咲いているのが目につきました。
栗の花は長く見えますが、白い部分は沢山の小さな雄花の集合体です。この中に雌花が二つだけ紛れています。
土壌操作実験の準備
ようやく一通りの用事が終わったので、研究を再開していきます。今回は以前紹介した実験のうちの一つ。土壌操作実験の準備を始めました。実験では、土壌の採取位置(母樹の足元、人工林側へ30m、天然林側へ30m)、殺菌処理の有無、模擬食害の有無という3つの処理を行います。これらの処理それぞれに実生を栽培するための土壌が必要なので、重たい土を研究林から採取してくる必要があります。去年、この土壌採取を行った際には、余りの重さに膝の爆弾が爆発して、途中から職員さんに手伝ってもらいました笑。
さっそく山へ土取りに出かけます。土を取りに行くのは大森山試験地と垣内山試験地と呼んでいる場所にある12カ所のポイントです。雨が降ると土が重くなってしまうので、数日晴れの日が続いた期間に採取に行きました。写真は天然林内の表土を採取しているところです。ご覧いただければ分かる通り、天然林内は落葉が敷き詰められています。照葉樹の葉っぱは落葉してもてかてかツルツルしていて、重心の置き場を間違えると、一瞬で滑ってしまいます。そのため、スパイク付きの足袋が本領を発揮する環境です。僕は、足袋だと膝が痛くなってしまうので、登山靴で慎重に歩くようにしています。
土を取る際はこれらの落葉をどけて、分解が活発に行われており、菌類も豊富にいるとされる表層付近の土壌を拝借します。土を掘っていると、表層にはぎっしりと木の細根が密生していることが分かります。スコップを差した時に、畑に差した時のグサッという感覚ではなく、プチプチという感覚がします。根っこが切れているようです。土の匂いは天然林で強く、葉っぱが発酵しているような独特の香りがします。
終わったら落葉をかぶせて元の状態に戻しておきます。こうしておけば、また落葉が分解され有機物に富んだ土壌が再生します。僕の研究レベルの規模では、落葉を元に戻さなくても自然と葉っぱが覆いかぶさっていき元に戻るかもしれません。しかし、この面積が大きくなっていった場合、元の土壌が再生するのに時間を要してしまうことになります。例えば、粗雑な仕事をする事業者による皆伐や、自然災害などがそれにあたります。大面積の土壌に影響を及ぼすので、供給される落葉の量の劇的現象など、環境をがらりと変える可能性があるからです。だからこそ、森林施業は慎重に、かつ丁寧に行う必要があります。
さて、山から土を持って帰ってきたら、篩にかけて粒のサイズを揃えていきます。この作業をするのは、処理以外の物理化学性は揃えたいためです。意図した結果となった場合でも、こうした余分な可能性を十分に減らしておくことで、説得力が増していきます。
ただ、この篩の作業が思ったより大変です。去年制作した大型篩処理機は解体してしまったので、今年はこの小さな篩で土壌を準備しました。この小さな篩に100kg程度の土壌を少しずつ載せて、ゆすり続けなければなりません。腹筋に力を入れて振るわないと、なかなか土壌がはけないので筋トレのようでした。実際、この後背筋が張っている感覚になったため、プロテインを飲んでおきました。
振るい終わると、大量の根っこが出てきました。こうした根っこに絡みついている土壌は、なかなか落ちません。根っこが上手く土壌を捕捉しているのです。そのため、根っこにからみついた土壌がある場合、大根おろしのように根っこの束を、篩のアミにこすりつけながら土壌を取りだしていました。これだけの根っこが土の表面を覆っていれば、土壌が簡単に流出することは無さそうですね。
今度は殺菌処理です。去年同様、電子レンジを使って殺菌していきます。まず耐熱袋に入れます。
これをレンチンしていきます。600Wで7分半です。電子レンジを稼働中はずっと電子レンジの前で待っていなければなりません。そのため、半日の間ずっと電子レンジの前で待っていることになります。そんな様子を見た職員さんからは、「コインランドリーを待っている人みたいだ」と言われました(笑)。
そうしてできたのがこちらの土。合計で100kgぐらいあります。明日から苗を作っていく段階です。今月後半の活動報告にて、続きを紹介したいと思います。
林道作設で出た材の搬出
土を取っている最中、何やら作設中の林道の方で声がするので様子を見に行ってきました。すると、林道を拓くときに伐採した材を搬出しているとのことだったので、暫くの間、作業を見学させてもらうことになりました。間伐区の材は、研究プロットの影響を鑑みて、私の卒業後に出材する予定ですが、林道の方は、研究への影響がないと考えられるので、一足先に出材が始まっています。
和歌山研究林には、グラップルのような高性能林業機械はありませんので、既にある機械を使って工夫して集材していきます。主役は写真左手の黄緑?色の機械です。この先端に道の脇に置かれた材をくくりつけます。
道の脇から材を引き上げたら、持ち替えてトラックへ積んでいく作業です。操縦するのは今年和歌山研究林へいらっしゃった職員の方です。
器用にアームを動かしながら、丸太を置く位置を見極めます。大きな機械を使って繊細な動きが求められるので、なかなかに難しそうです。
最後はアームの先端で丸太の木口面をちょいちょいと押していきます。この正確性、非常に難しそうですが、今回運転された方はとても簡単そうにやっておられました。本人曰く、まぐれで上手くいったそうですが、とても素人の動きには見えないしなやかな動きを見せていました。
こうして集められた材は、土場へ貯蔵され必要な場所へと供給されていきます。どれくらいで売れるのか非常に気になりますね!
では月末もどうぞお楽しみに!