今晩は。梅雨があっけなく終わってしまいましたね。ムシムシして嫌な梅雨ですが、これほど短く終わってしまうとちょっと名残惜しい気もします。まして、こんなに暑い日が続くとなれば、なおさらです…。そんな梅雨の話題から入っていきましょう。
梅雨どきの平井は、雨が無い日でも雲の中のような湿度です。霧に包まれた朝は歩くだけで肌がしっとりと湿っていきます。保湿にはピッタリかもしれませんが、汗疹で皮膚がかゆくなるのでトントンです。
梅雨を代表する花、アジサイの下には、おたまから大人になったばかりの蛙やカタツムリが隠れています。生垣のアジサイの葉っぱは地上付近から幾重にも重なっていることが多いので、かっこうの隠れ家になるのかもしれません。それにしても、カタツムリとアジサイは似合いますねぇ。
梅干し作り
丁度、この頃の季語の一つに「黄梅雨」というものがあります。意味はそのまま、梅が黄色に熟すころに降る雨、すなわち梅雨のことを指します。この季語通り、2月の活動報告で紹介した平井の梅たちも、たわわに実った梅の色が変わり始めていました。その梅たちを雨の合間に収穫していきます。
熟した梅の色は本当に綺麗で、球面の緩やかなカーブの沿って、淡くグラデーションを描いている様は、さながら朝焼け空のようです。
そういえば、梅や桜の葉っぱの紅葉の色合いにもそっくりです。実も葉っぱも同じメカニズムで色が変わっているのでしょうか。気になるところです。
収穫した梅は、塩漬けにして赤紫蘇漬けにして、晴れが続きそうな日を狙って天日干しにしていきます。この画像は天日干しの3日目ぐらいのときの写真です。可愛らしい淡い色はすっかり消え、見るからに酸っぱそうな丹色です。赤紫蘇の成分と梅の塩漬け汁に含まれるクエン酸で綺麗に発色しているそうです。
一方、田んぼにはアオサギの若い個体が来ていました。川下の方では見かけますが、平井ではこれまでそんなに見かけた記憶がありません(僕だけかも)。若いので色んなところに飛んで良いところを探しているのかもしれません。
串本の漁港に行くと、釣り人のおこぼれを狙って待っているアオサギを目にしますが、こうして田んぼを歩いている姿も良く似合っています。サギはじーーーっとこちらを見つめている感じが、何を考えているのか分からず神秘的です。森の哲学者と呼ばれているニホンカモシカよりも、よっぽど哲学者のような感じです。
こちらは郵便局の軒先で生まれたツバメの子ども達。あと一息で巣立つというところで、巣も窮屈そうです笑。集落にはヘビやらイタチやら、子ども達を狙う天敵だらけなのでここまで無事に大きくなれる兄弟も多くありません。実際、この写真を撮った日の夕方には、この子たちもヒヨドリの襲撃に遭ってしまいました。
土壌処理実験の準備
先週、土を準備するところまで終わった土壌処理実験の準備。今回からいよいよポット苗を作っていきます。
まずは、土の物理構造を均質にするため、赤玉土を混ぜ込み、処理ごとにポットへ入れていきます。今回は240ポットあります。昨年の実験が180ポットなので、それより若干多くなっています。
ここで、育ててきたどんぐりとサクラの出番です。1ポットにつき2個体ずつ、アカガシとヤマザクラを植えていきます。つまり480個体ほど植え替えていくことになります。
こちらは播種土壌から引き抜いたアカガシ。どんぐりから桃太郎のように元気に出てきているのが面白かったので、ついつい写真を撮ってしまいました。ここから土を落として、漂白剤で殺菌し植え替えていきます。
こうして植え替えた苗にたっぷりと水をやり、定着を待ちます。どんぐりは、ずんぐりむっくりの樹形で、幹もだいぶ太いのですが、サクラは細長く華奢な感じです。このような違いは、それぞれの種の生存戦略の違いから生じていると考えられます。どんぐりは暗い林床で耐えて耐えてやがて大木になるように設計されている一方、サクラはギャップなど日照条件の比較的良いところで、一気に成長する戦略を取っています。そのため、幹を太くするよりも、より早く垂直方向に成長出来る方がサクラにとっては重要です。
ちなみにこの葉っぱがアカガシで、
こっちがサクラです。
さて、丸3日かけて、ようやく植え終わりました。ここから身体測定です。樹高と基部直径、葉っぱの枚数と全ての葉っぱの長さを記録していきます。葉っぱは全部で約3000枚なので、これまた骨の折れる仕事です。しかも、このあたりから梅雨が明けてしまい、連日の灼熱地獄。温室も大変なことになっていました。
このとき、100枚の葉っぱを使ってヤマザクラとアカガシの葉の面積を予測するモデルを作っていきます。測定した葉の大きさ(長さ)と、画像編集ソフトで求めた面積をグラフにすると下のようになります。
見て頂くと分かる通り、長さの二乗に比例するような形で面積が増加しています。これは、葉の形が小さくても大きくてもだいたい同じで、スケール感だけが変化していることを示しています。
そこで、横軸を長さの二乗値にして、モデル式を求めます。その結果、図のように式が求まりました。これを使って、葉の長さから全ての葉っぱの面積を予想していきます。
そんなことをしてどうするのか?というと、食害処理を定量的に行うために、この数値を使います。模倣食害を全ての葉っぱに対し、一定の割合で行うためには、全ての葉っぱの面積が分かる必要があります。しかし、画像編集ソフトで一枚ずつ、3000枚解析するのは限界があるうえ、終わるころには、最初の方の葉っぱが成長してしまいます。そこで、モデルを使って簡略的に面積を求められるようにして、必要な食害面積を求めることになります。
模擬食害に使うのは、こちらの一穴パンチ。半径が0.25㎝なので、穴の面積は約0.2㎠です。この道具を使って、葉っぱの面積に対し、およそ8%の割合で食害が起こっている状態を模倣していきます。例えば、7㎝のアカガシに対しては5個の穴。5㎝のサクラに対しては2個の穴。といった具合です。これを120個のポット。240個の苗。およそ1500個の葉っぱに対して行っていきます…。
…3日後。
ついに必要な全ての葉っぱに穴を開け終わりました。あとは経過を見守るだけです!10週間経過後に、バイオマスや樹高・直径などの成長情報を測定する予定です。良い結果になるよう、平井の神社にもお参りしておきます。
ちなみに実験をしている温室はこんなところです。すっかり夏の空になった背景が、楽しい夏休み感を演出していますが、実際は灼熱地獄の観察日記でした。季節外れに暑い日が続いていますが、皆様も体調にはお気をつけてお過ごしください!