先日無事にクランクアップを迎え、絶賛編集作業へと入っている『映画 となりの肯定ペンギン』!
ここまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。しかし、そんなでこぼこ道を勇猛果敢に突き進み、劇団員を熱く導き続けたある人物がいます……。
監督・にこたまBBQです!
今回の制作プロデュースや監督業、撮影業などをずっしり担ったにこたまBBQに、本作への思いを聞くインタビューを行いました。
にこたまBBQ(日座裕介)
10年前から最注目株、満員劇場御礼座の怪演俳優にして、作・演出も行う。本業はクリエーティブディレクター・映像ディレクター・プロデューサー。代表作は、「オバチャーン」「銀山ボーイズ」など。世の中をざわつかせるプロジェクトを数多く手掛けている。
――映画の制作は初めてですか?
はい。学生時代の卒業制作以来だから、20年ぶりですね。
――なぜ、ペンペンを映画化しようと思ったのですか?
ペンペンは、年に1度の満劇の公演で、2012年から5回に渡って発表されている人気シリーズです。自分自身ペンペンに毎回笑わされているのもあって、もともと「ペンペンだけのコンテンツをやれればいいな」という気持ちがありました。
そうしたら今年の8月、劇団員のあべの金欠と浜マーボーが『となりの肯定ペンギン』という漫画シリーズを始めて。
漫画のペンペンは、人間と当たり前のように共存して、町の人それぞれの悩みを肯定しているんです。舞台のペンペンとはまた違った世界観で、「この形ならペンペンの映像を作れそう」と映像化のイメージが膨らみました。
そのとき、満劇はちょうど今年の演目について模索している最中でした。オンライン演劇をやろうか、でも稽古で密は避けられないし……そんな八方塞がりの中、映画なら作れるのではと思い劇団員に提案をしました。
今年は、コロナで大変な年じゃないですか。でもせっかく仲間がいるのに何もできなかったなんて、そんなの嫌だと思って。こんな時代だからこそ、みんなで新しいことに情熱を注いで「今年も前向きに頑張れてたな」って思いたかったんですよね。
――もともと映像化も視野にあったところで、コロナ禍で演劇ができないタイミングが重なったんですね。
そうですね。しかも実は今年、本業の仕事で短編映画を作るはずだったんですが、コロナで流れてしまったんです。だから、映画を作りたいって情熱が燻っていて。
「映画を作りたい」という情熱と、「ペンペンをコンテンツ化したい」という気持ち、「今年も満劇で何かやりたい」というタイミング。この3つが重なって、映画を作ろうと決めました。
――制作で大変だったことは何ですか?
大変といえば、全てが大変でした。映画化を提案したのは8月末。3ヶ月後の試写会までには完成させなければならない。でも、満劇は映画を作ったことがないんです。
資金はどうするのか。イベントはどうするのか。誰がどこで撮影をして、誰が出演して、誰が編集をする? 何も決まっていないところに1から筋道を作っていく時点で、既に大変でしたね。
そして、その不明瞭な筋道に劇団員にも付いてきてもらわなきゃいけない。しかし満劇は社会経験の豊富な大人ばかり。「映画を作ること」の大変さを、身に染みてわかっている人が多いんですよ。
そんな人たちの心に火をつけるのも大変でした。「どうして劇団が映画?」「間に合うの?」「誰が見るの?」「お金はどうするの?」 そういった疑問に1つずつ具体的に答えて、みんなの心の不安を解く。そして、スケジュールを組んで、スタッフを集めて、オーディションをして、ロケハンをして……自分が積極的に行動することで、「本当にできるんだ」と思ってもらう。
劇団員の心のブレーキをひとつずつ外してあげれば、だんだん火がついて、その火に向かってまた人が集まってくるだろう。そういう風に考えて頑張っていましたね。
――劇団員である私自身、最初は「映画なんて作れるの?」と不安でしたが、だんだんと監督の熱量にあと押しされて今年の活動を楽しむことができました。さまざまなことに尽力いただきましたが、つらくはなかったですか?
大変ではありましたよ。特に、ペンペンが住んでいそうな街を大阪近郊で探して、ロケーションを探すのも大変でした……各ロケ地にご挨拶して、路上撮影のために警察に許可をとるのも大変だったし……。
でも、自分が映画を作りたいって気持ちが根幹にあったし、やるべきだと思う理由がありましたから。つらいとかやめたいとかは、一度も思ったことはないですね。
――今回の制作でこだわったことは何ですか?
劇団員が全員出ることです。劇団員全員に配役を振って、1秒でも2秒でも、絶対にスクリーンに写す構成にしました。
劇団員が全員出演することで、「身内ネタっぽくなるのでは」と心配するメンバーもいました。
確かに、一般的な商業映画ならそうかもしれない。でも、これは「満劇の映画」です。「満劇が映画になったらこうなりました」という作品なんです。
そもそもクラウドファンディングでどうしてここまでご支援いただけているかというと、支援くださる方が「満劇のことが好きだから」お金が集まるんですよ。ファンの方々、関係者の皆さまが「満劇がやるなら」とご支援下さっているんです。
身内受け感は、撮影方法や編集でどうにかなるだろうと思っていました。なので、全員の出演を強く主張しました。また、制作に関してもなるべく劇団員で担うよう心掛けました。
あと、僕はある種、この作品を劇団のドキュメンタリーだと思っていて。
映画は舞台とは違い、出演者の挙動からシワの1本1本まではっきりと記録されます。「2020年の劇団員がどう生きているか」がまざまざと写し取られる。そんな作品に全員が少しでも出演していれば、「あのときこうだったな」って思い出すことができる……それって素敵だな、という気持ちもありましたね。
――撮影で印象的だったことはありますか?
文字で表された脚本が、撮影という行為で目の前でドラマとして生まれるとき、自分の想像を超える画が撮影できる瞬間が何度もありました。
美しい世界を描けるよう、テクニカルな部分では出来る限りこだわったのですが、やはり役者さんの芝居が入ると予想以上の出来事がたくさんあって面白かったです。今も編集していて、いいシーンが沢山撮れたなと実感しています。
――これから映画を観る方へ、メッセージをお願いします!
人間っていろんなことで悩みますが、今年は特に悩む1年だったと思います。今までは悩むほどじゃなかったことでも悩まなくちゃいけなくなって、今現在も悩みを抱えている人はたくさんいるのではないでしょうか。
だけど、基本的に「悩む」という行為は、「誰かを大切にしたい」から悩むのではないかと僕は思っています。その誰かが自分であれ、一緒にいる人であれ、悩むという行為自体に愛がある。『映画 となりの肯定ペンギン』は、そんな愛に気づかせてくれる映画だと思います。
本作は、小さな劇団の小さな映画です。だけど、こんな悩める時代だからこそ、悩む自分を肯定する気持ちになれるこの映画をぜひ観てみてください。
……と言っても、編集の進行状況はまだまだ50%ほどなのですが……。(笑) 12月5日・6日のお披露目イベント「満員劇場オンライン座」に間に合うよう、気を抜かず頑張ります!
――にこたまBBQ監督、ありがとうございました!
短編映画『となりの肯定ペンギン』をいち早く鑑賞できるお披露目Liveイベント「満員劇場オンライン座」のチケットは、本クラウドファンディングのリターンにてお届けします!
映画が気になる方は、ぜひあたたかいご支援のほど、よろしくお願いいたします。