映画のお披露目まで、あと2週間ほどとなりました。
舞台「肯定ペンギン」シリーズの作・演出で、映画「となりの肯定ペンギン」の脚本を担当したあべの金欠が、今回の映画に込めた思いを語ります。
ペンペンの住む町
映画「となりの肯定ペンギン」の舞台は、関西にある港町。肯定ペンギンのペンペンが住んでいて、町中を自由に歩き回っています。町の人たちはみんなペンペンのことを知っていて、見かけると気軽に声をかけます。
みんな、ペンペンが何でも肯定してくれることは分かっています。「どんなことを聞いたら、どんな答えが返ってくるか」尋ねる前から、だいたいの予想はついているんです。予想がついているのに、つい話したくなってしまう。ペンペンには不思議な魅力があります。
そんな町に、お互いに悩みを抱えた母と娘がやってくるところから物語が始まります。悩める母娘にとって、ペンペンの存在はプラスになるのかマイナスになるのか? ペンペン自身はプラスになる気もマイナスになる気もなく、いつも通り、ただ聞かれたことを何でも肯定してくれます。
もしも、となりにペンペンがいたら?
舞台の「肯定ペンギン」シリーズを観たお客さんから、「ペンペン欲しい」「ペンペン飼いたい」っていう感想をたくさんいただきました。「もしも、となりにペンペンがいたら?」
舞台を観ながら、そんな想像をめぐらせたお客さんも多かったのかなと思います。この映画の世界は、まさにそんな「もしも」の世界です。「もしも、自分がこの町に住んでいたら」
「もしも、ペンペンがそばにいて、ヒマそうに毛づくろいをしていたら」どんな話をしてみたいか、想像しながら楽しんでほしいです。
ペンペンのいる生活
この数か月、僕の頭の中にはいつもペンペンがいました。
今年の夏から、この映画のタイトルと同じ「となりの肯定ペンギン」という漫画の連載をSNSで始めました(作画は満劇の浜マーボーです)。そのスタートとほぼ同時期に映画制作の話もスタートし、脚本を担当することになったんです。それからは毎日、ペンペンのことを考えない日はないというぐらいの日々でした。
毎日ペンペンのことを考えていると、頭の中にペンペンが住みつきます。ちょっとした悩みごとがあるたび、頭の中でペンペンに相談するようになるんです。
あべ金「あんまり子供に勉強しろとか言わんほうがいいのかな?」
ペンペン「言わんほうがいいね。言えば言うほど、やる気なくすから」
あべ金「じゃあ、本人にまかせて、ほっといたほうがいいか?」
ペンペン「ほっといたほうがいい」
あべ金「でも、ほっといたら勉強せえへんやろ」
ペンペン「せえへん。するわけないやん。ほっといたら一日中ゲームやで」
ペンペンのセリフも自分で考えてるわけなんですが、普通に自問自答するのとは微妙に違うんです。一人で悩むとしんどくなるけど、頭の中でペンペンと会話していると、ちょっとだけ楽しいんです。
みんなのとなりにペンペンを
この映画はyoutubeで無料公開されます。舞台のときのように劇場までペンペンに会いに来てもらうのではなく、みなさんの自宅にペンペンがやって来ます。気に入ったシーンを繰り返し何度も観ていたら、そのうち、頭の中にペンペンが住みつくかもしれません。
休日、家事の合間にちょっとyoutubeでペンペンを観ていたら、いいところでピンポ~ンと玄関のチャイム。「出たほうがいいかな?」なんて考えると、「そら出たほうがいいよ」とペンペンの声が聞こえます。仕方ないなと玄関に出たら宅配便。実家から野菜が届きました。段ボールから野菜を取り出しながら、再びペンペンとの会話が始まります。「このキャベツ入らへんな」「絶対入らへんよ。野菜室パンパンやもん」「とりあえず今日はお好み焼きかな?」「絶対にお好み焼き!」「でも、こないだ食べたばっかりか?」「食べたばっかりや。どんだけ好きやねん。キャベツ使った料理は他にもあるやろ」……。
ペンペンがいろんな人の生活の中に入っていって、日々の悩みを少し楽しくしてくれる。そんな風になれたらいいなと思っています。