おかげさまで、支援額は目標の約40%を達成し、メンバー一同驚き、歓喜、安堵、様々な反応を示しています。
「こんな趣味全開なチャレンジを応援していただけるのか」と懐疑的な思いを抱いておりましたが、支援いただいた皆様からの叱咤激励のお言葉すべて読ませていただいております。本当にありがとうございます。
さて、プロジェクトの進行状況について、数パートに分けてお伝えしていこうと思います。お付き合いいただけると励みになります。
まずは、昨年まで遡り…2020年10月の初飛行に至るまでのお話を書いてゆきます。
ソーラー飛行機の24時間フライトを達成するには、つまるところバッテリーのエネルギーが夜を超えた時点で0になっていなければ良いわけです。
下のグラフは午前8時スタートで、24時間での電力状況を示しています(あくまで開発時の試算の段階です)。赤い線Eがバッテリーの持つエネルギーを示しており、これが夜を超えた時点でオレンジのE_bat_criticalを下回っていなければ、24時間飛行達成めでたしと相成ります。
ただし、この計算には様々な仮定を含みます。
例えば、青い線のPsolarは、ソーラーパネルの発電効率と機体に搭載する枚数、天候や季節、緯度などで決まります。
次に緑のPoutは、機体の空力性能(空気抵抗)、プロペラとモータで決まる推進効率、その他機体に搭載しているアビオニクスの電力消費などすべてが加味され決定されます。
机上検討では物理的に24時間飛行を達成する解を出すことはできますが、問題はもっと根本的な「ちゃんとした性能の飛行機を自分たちで作り上げなければならない」という点にあります。
したがって、必要な初期データ取りを行うために「まずは飛ばす」というフェーズをクリアすることを、試作初号機に取り組む目的としました。空力デザインや構造は類似の他機を参考に決定し、とにかく製作スピードと自身らのスキル向上に努めました。
機体のメイン構造はCFRPの1本桁に、翼のリブやスキンを張り巡らせていく構造です。桁の強度試験を実施し、6G(機体重量の6倍の重さ)にも耐えることを確認しました。
主翼の形を作るリブはレーザーカットにより自作しました。仕事を終えた後コツコツと機体をくみ上げていきました。
仕事で帰りが遅くなるメンバーもいます。それでも色々な人たちが協力しなければ、期限までに物を作り終えることはできません。構造案など頭の中にあることは、他の人にも伝わる形で残してLINEやらのツールを用いてコミュニケーションをとります。「決めた日程までに作業を終えられるよう工夫していきましょう~」と、時に厳しい言葉をかけ合いつつ今日もまた尾翼が完成してゆきます。
最近はホビー向けの安価なプロペラやバッテリー、計測機器類が手に入るため、使えるものはどんどん使って推力計測など、性能同定も行います。
そんなこんなで製作を進めてゆき、ついに試作機“S-X”が完成しました!
機体完成間近となれば大詰めできつい生活が続きましたが、それでも機体が飛ぶ姿は見たい。準備を進めて飛行試験までこぎつけました。お世話になっているラジコンクラブの飛行場を使わせていただきました。いつもありがとうございます。
S-Xを使って、機体の安定した飛行、操縦性を確認することができました。また、チャレンジ当日、夜通し人間が操縦するのも難しいため、自動飛行(オートパイロット)に向けた制御ゲインのチューニングやミッションの確認を行うこともできました。
しかし、S-Xは24時間飛行を達成するために設計されたものではないため、空力性能やプロペラ、モータの選定に課題があります。
したがって、S-Xの飛行試験を通じて、バッテリーやモータの性能値の同定を進めつつ、次の機体設計にてやるべきことを確定させていきます。