私は8年程前までビジネス講座の講師をしていた。経営戦略、マーケティング、会計、ファイナンス、リーダーシップ、アナリティカル・シンキングの5科目の講師をほぼ一人でこなしていた。これは、アメリカのビジネススクールで経験したことを、日本において社会人を対象に再現して、ビジネスの効果・効率を高めるために役立てて頂ければと考え、構成してきたプログラムであった。
このアナリティカル・シンキングは、「分析的思考」を扱ったものであり、全経営プログラムの中で導入的な基礎講座に位置付けられていた。
【クリティカル・シンキング】
【ロジカル・シンキング】
【アナリティカル・シンキング】
当時配布していた資料では、上記のように、クリティカル・シンキング(批判的思考)、ロジカル・シンキング(論理的思考)、アナリティカル・シンキング(分析的思考)を分類して解説していた。
日常的なコミュニケーションにおいて、これらの思考は、基礎、基本として大切だろう。これらを応用して、日常のコミュニケ-ションが行われていると言えるだろう。
日常のコミュニケーションを阻害する要因として、相手の注意、相手の聴力(視力)、相手の理解、相手の認知、また、騒音や視覚作用などの環境の問題が挙げられるだろう。
介護・福祉の仕事をしていて、これらのコミュニケーションの阻害要因は、顕著に利用者、特に認知症の利用者とのコミュニケーションにおいて、また、職員間のコミュニケーションにおいて問題になると実感している。
端的に言えば、どれほど批判的思考、論理的思考に優れていても、相手がメッセージの送り手側に対して十分な注意を払っていなければコミュニケーションは成り立たない。これは、メッセージの送り手側の問いかけ方や姿勢の問題であると同時に、相手の注意の問題でもある。
また、送り手のメッセージが、相手に聞こえていなければ、あるいは、相手にメッセージが見えていなければ、コミュニケーションにはならない。これは、相手の聴力や視力の問題である。
さらには、メッセージの送り手が相手が受け止められない程に大量のメッセージを送ったり、相手が理解できないような難しい言葉や専門用語を使うとコミュニケーションは困難になる。
そして、先入観や固定概念、無意識に行われる習慣的な思考(スキーマ)などによって相手が正しくメッセージを認識しなければ、良好なコミュニケーションにはならないだろう。それは、相手に知的障害がある場合、相手が高齢であるなどして認知症を患っている場合などにおいても同様である。短期的な記憶力に障害があり、相手が受け取ったメッセージを一定の時間以上覚えていられない場合などでもコミュニケーションは成り立たない。このような場合、相手は同じ質問を繰り返して、メッセージの送り手が何度同じメッセージを送っても、それを相手が正しく受け止め、覚えていられないのであれば、そこから先のコミュニケーションは成り立たなくなってしまう。
このような問題意識を踏まえて書かれているのがチャレンジ介護士篇の『認知症対応』である。これは、介護職員としての仕事に関する話題の中で最も多くの読者の関心を集めている話題となる。
このような認知症対応は、介護職員として、私が行っている認知症の利用者への対応であり、そうしたら良いのではないかと考えている対応である。それらは必ずしも正しい対応ではないかも知れないが、より良い対応を考え、実践する上で、良い話題になるのではないかと思い、取り上げている。
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