こんにちは、クニシゲです。
本日更新を予定しておりました「横型使用レポート」の内容は、前回分の活動報告でお話しいたしましたので、今回は予定を変更して「開発中特に難航した工程」についてのお話をお届けいたします。
大人向け探検ボード「SONOVA(ソノバ)」は、鞄としての側面と文房具としての側面をあわせ持ったアイテムですので、製造にも鞄業界の知識と文房具業界の知識が必要でした。
しかし開発者はどちらの業界にもほぼ接点がない、
普段は絵や漫画を描く活動をしているアマチュア漫画家です(実は私の祖父が鞄職人だったので、鞄業界に全く接点がないわけではないのですが、祖父は既に亡くなってしまっているため、開発の相談などはできませんでした)。
今までにも、冊子やキーホルダーなどを制作して販売した経験はありますので、費用の計算方法や販売・発送に関する知識はありましたが、肝心の本品の開発に役立つ知識はゼロの状態だったため、本品の開発は私にとって非常に困難な作業でした。
プロジェクトの本文で少しお話をいたしましたが、開発の初期段階では、素材や製法の検討と製造工場探しを並行して進める必要がありました。
条件に合った素材を探すこと…
その素材に適した製法を考えること…
私の発注内容・数量で引き受けていただけるコスト感にあった工場を探すこと…
それらは行きつ戻りつして、全てのピースがはまる決着点を探る難しい作業で、開発の全工程の中でも最大の難関でした。
途中まで進んだと思っても、条件が合わなければふり出しに戻ってやりなおさなければならず、時には仕様のほうを変更することもありました。
製造を引き受けてくださる工場探し
工場探しは一般的に考えても「最小ロット」の存在が立ちはだかる難しい工程ですが、本品に関しては形状も特殊ですので、そもそもこの形状の製品の製造自体が不可能な工場が多く、開発中に特に難航した部分です。
今回本品を作ってくださるのは、普段レザーのバッグを製造なさっている、町工場の鞄職人さんです。
何軒もの工場にご相談したものの製造先が見つからず困り切っていた中、こちらの職人さんだけが「できます」と言ってくださいました。
サンプルの改良をお願いするたびに、私の細かい注文に応じてくださる熱心な職人さんですので、なるべく多い数量で製造をお願いしたいと考えています。
本品の製造については依頼できる工場が非常に少なかったため、具体的な素材の検討に着手できたのは工場が見つかったあとでした。
通常の鞄に使われない用箋クリップとボードについては、鞄職人さんがノウハウをお持ちでないため、自分で手配しなければいけません。
ボードに適した素材探し
ボードの素材選びでは、日常の使用で破損しない耐久性と、人に怪我をさせない安全性の両立を重視しつつ、製法上縫製できる素材でなければいけないという制約と、重量を考慮しました。
様々な素材を購入した中で比較的良かったのは、鞄用の底板・カルトナージュ用の厚紙・発泡PPシートの3点で、中でも発泡PPシートは、厚紙に比べると高価ですが、軽量で耐水性があり、破損時に尖ることがなく安全で良いことづくめでした。
発泡PPシートは、発泡剤をポリプロピレンに練り込んで圧力を加えて成形した素材で、店舗での陳列棚の施工や商品の緩衝材に使われることが多い素材です。
滑らかな表面の層と内部のスポンジ状の層を持ち、ミシンで縫える適度な柔軟性と、筆記の力を加えても折れない適度な剛性を併せ持つ一方で、表面は摩擦に弱い特徴があります。
摩擦に弱いボードの表面を保護するため、両面に施したのがフィルム貼りです。
安価なリメイクシートも購入し検討しましたが、印刷が荒かったり水に弱かったり強度が不足していたりと、私が求める品質に届く製品がなかったため、フィルムについては価格を抑えることは諦めることになりました。
最終的に採用したフィルムは、住宅やオフィスの施工に使用される壁面仕上げ材で、高精細な印刷とエンボス加工でリアルな質感を表現している上に、しっかりとした耐摩擦性を美装性を持つ製品です。
建築材料メーカーから見本帳を取り寄せ、様々な木目柄の中から家具として人気のチェリー材風の模様を選びました。
金メッキのクリップの輸入
本品は制作理由が「子供向け探検ボードのデザインに満足できなかった」というものですので、実用性と同時に見た目についても非常に重視して開発を進めました。
コンセプト上、金メッキの用箋クリップを使いたいという希望は絶対に変えられないものでしたが、国内で金メッキのクリップが見つからなかったため、このパーツは海外から取り寄せを行いました。
後から噂で聞いたことですが、国内では需要の関係でニッケルメッキのクリップしか製造されていないらしいのです。
既存の製品の再メッキも検討しましたが、金物メーカー問い合わせると、既存のメッキの上から金メッキをかける場合、費用がかさむだけでなく、バネが硬くなりクリップが開きにくくなる可能性があることがわかり、採用できませんでした。
国内でどれだけ探しても金メッキのクリップが見つからず、次第に入手手段が輸入に絞られてきますが、さらにここでも「最小ロット」の関門に衝突します。
海外の金物メーカーとしてはわざわざ国外に品物を送る手間を考えれば大ロットで販売したいと思うものかもしれませんが、私としては自宅に保管できる数量しか購入ができません。
そこで少なめの数量で販売していただけるよう、苦手な英語で交渉して、なんとか理想の形・サイズ・色のクリップを手配することができました。
開発の後半では、試作品を実際に使ってみて図面を修正し再度試作品を作るという作業を、納得がいくまで繰り返しました。
長くなってきましたので、そのお話は次回の活動報告「試作品の写真」の中でお伝えしたいと思います。
このように長い文章をここまでお読みくださった方はありがとうございました。
本品はたくさんの難所を乗り越えて開発をした製品です。
鞄職人さんになるべく多い数量で製造をお願いしたいという思いもあり、たくさんの受注をいただけるよう、プロジェクトページの文章の執筆や写真の撮影も全力でいたしました。
ご支援いただいたみなさま、本当にありがとうございます。
たくさんのご支援のおかげで、一般販売(受注生産ではなくある程度の数量を製造して自宅に在庫を保管し、恒常的に販売しご注文に応じて発送する方法)も実現できそうな見込みです。
大手メーカーの商品と異なり、費用や在庫面でのリスクを一人で負わなければならないこと、大ロットで製造する資金力がなく製造費が下がらないことなどが理由で、全ての方にご満足いただける価格ではないかもしれませんが、仕入れルートなどを工夫しなるべく価格を下げてご用意をいたしました。
一般販売時も変わらない価格でご提供できる予定です。
本プロジェクトの募集終了まで残り2週間ほどになりました。
引き続きご支援のご検討・SNSを通じた拡散のお力添え、何卒よろしくお願い申し上げます。