2021/09/23 09:00

現役時代、練習でも試合でも、
「楽しい!」と思ってやったことは一度もない。

応援してくれる人のためにも
「負ける訳にはいかない」
「諦める訳にはいかない」
と、遮二無二やってただけ。
楽しむ余裕なんてなかった。

ただ、練習後や試合後の
「充足感」は半端なかった。

最後の試合(ランディ・スイコ戦)が
終わった後は、
「やれるだけのことはやってきた。
 もういつ死んでも後悔ない…」
と、本気で思った。
だから『遺言書の書き方』という本まで買った。

……早とちりだった(笑)

……遺産もないのに(笑)


その後教える側にまわり、
選手には練習の時から
「楽しんでもらいたい」
と、思っていた。

でも先日ある人にこう言われた。

「終わった後の達成感や充足感、
 それが楽しんでたってことではありませんか?」

ハッと気付かされた。
確かにそうかもしれない。
ただ辛いだけだったら、
最後までやり切ることは出来なかった。

楽しむことは
出来なかったかもしれないけど、
あの時、あの瞬間、
真剣に生きていたことには違いない。

今、ここを真剣に生きるって、
ひた向きに生きるとか、
健気に生きることだと思う。

自分にとって、
それを可能にしてくれるのがボクシング。

「正しさ」より「楽しさ」
「楽しさ」より「ひた向きさ」

今後うちの選手とは、
それをモットーにやっていきたいと思う。

人は時に、
健気に生きているだけで、
誰かを救っていることがある。
 『容疑者Xの献身』東野圭吾


仮に今、遺言を書くとすれば、
この記事を遺言としたい(笑)


…あと半世紀は生きるつもりだけど(笑)