本当はボクシングなんて
やりたくなかった。
ボクシングは別世界の人間が
やるものだと思ってた。
だけど兄がしつこく
「やるぞ!」
言うから嫌々やった。
ボクシングと言っても
ただのボクシングごっこ。
グローブはレジ袋に
新聞紙を詰め込んだのもの。
袋がズレて拳が顔面に直撃!
なんてこともしばしばあった。
痛いし恐いし、
よけ方も打ち方も知らない。
「ボクシングの何が面白いんだ…」
と、不貞腐れながらやった。
ボクサーになる人の気持ち、
理解できなかった。
それが中学一年の頃、
まだ『はじめの一歩』に出会う前だった。
その二、三年後に『一歩』と出会い、
ボクサーを志すことになるとは、
あのとき夢にも思わなかった。
その二、三年で
ボクシングが変わったわけではない。
ルールも何も変わってない。
要するに『一歩』を読み、
ボクシングに対する見方や考え方、
捉え方が変わったということ。
すなわち、ボクシング観が変わり、
〝ボクシングは楽しいもの〟
になった。
『一歩』を読んでなかったら
ボクシングはやってない。
他にもそういうボクサーは沢山いる。
森川先生がボクシング界に与えた影響は
計り知れない。
ただ教えるだけではなく、
ボクシングの魅力や
ボクシング観を変えるような
指導や取り組み、考えていきたい。