久しぶりに、有城佳音のデビュー作『雨のように、きこえる』収録作品をすべて読んだ。
27歳、作家になる決意をしてからの数年間に執筆した作品ばかりだけれど、どの作品も今と同じテーマで驚いた。
主人公は、ほんの些細なことから心の闇にアクセスしてしまう。
その対象として、必ず女性が存在する。
女性の奥深く、頑丈に鍵をかけて閉じ込めている「禁忌」を引き出し、犯させ、犯す。
それはいつも共犯という形で、闇の先に進んでいく。
女性の「禁忌」に押し込められている「感性」を取り込み、主人公は人生の糧にする。
もちろん、それで平気なわけではない。深く傷つくし、衝撃を受けて人生を顧みたりする。
殺すわけではない。でも禁忌を犯すことは、心を殺す。それは主人公も女性も同じように、今までいた平和な領域を超え、 殺し、殺される「共犯」なのだ。
当時はストーリー自身に広がりのある『雨のように、きこえる』を表題作に選んだけれど、今なら『無意識の森』を選ぶだろう。
今、YouTubeに連載配信している『Synchronicityシリーズ』の、主人公の生き方や運命の道筋が、すでにここにあった。
そして当時語られなかった、「殺し、殺され」た後の運命についても、これからの物語の中で、語られるのではないかと思う。
CAMPFIREと提携したBASEで、『B-Books』という本のお店を開く予定だ。
今、このプロジェクトのリターン限定本以外に、有城佳音のデビュー作、『雨のように、きこえる』のB-Books版を作っている。(有城見萌)