はじめまして、デザインリサーチャーの浅野翔です。
私はセブンストーリーズのサービス開発に向けたリサーチと、お部屋のデザインを検討するための課題文づくりに協力してきました。
私からの活動報告では、どのようにセブンストーリーズのデザインが生まれたのか、その背景を2回に分けてお伝えしようと思います。
セブンストーリーズの魅力は「7組の建築家・デザイナーが各部屋をデザインする」ことにあります。
ただしそれでは一般的なデザイナーズホテルと大差なく、デザイナーが有名であるかどうかが商売上の差別化ポイントになってしまい、藏満(くらみつ)さんが依頼する愛知県に縁のある若手建築家・デザイナーには分の悪い戦いになってしまいます。
そこでプロジェクトマネジメントも担当する建築家の松田孝平さんから、「どのような宿泊施設をデザインするとよいか、コンセプトを一緒に考えたい」と依頼を受けることになりました。
70件を超える既存のホテルなどの宿泊施設を調査し、サービスを時間軸〈宿泊以前・最中・以後〉で分類し、お客さまがそれぞれどのような体験をおこない、どのような価値を受け取っているのか見える化していきました。
これだけでは既存のサービスを理解するだけに留まってしまいます。これからセブンストーリーズに宿泊するお客さまへ、受け入れ先となる地域へどのようなメッセージを伝えるのかを考える必要があります。そこで大切なのは、愛知県を訪れた方が何を手がかりにどこへ出向き、どのような体験をし、価値観を共有するのかです。
そこで、異なる3組のお客さまがセブンストーリーズを体験する3つのシナリオを描き、それをもとに宿泊施設のあり方を問う文章をミライブさんへお渡ししました。地域性を生かしたサービス設計と空間をいかにデザインできるのかを、以下の「セブンストーリーズへの問い」としてまとめました。
セブンストーリーズへの問い
ユーザーに対して
東海エリアを訪れ、セブンストーリーズに宿泊するユーザーは、どのような体験価値を持ち帰ることができるのでしょうか?自分の中でどのような変化に気がつくことができますか?
e.g.)ものづくりや工芸で培われてきた感性/ものを触り自らつくることの楽しさ
マテリアルに対して
セブンストーリーズの滞在価値を高める空間、素材はどこから集められますか?それらが滞在価値を高めると理由はどこにありますか?
e.g.)時間の積み重ねや東海エリアを思い起こす材料、旅の思い出を五感に記憶させるから
ストーリーに対して
また訪れたくなる、あるいは誰かに教えたくなる、セブンストーリーズの魅力はどこに生まれると思いますか?
e.g.)ショップにある東海のセレクトグッズ/近隣にあるおいしいレストラン/おしゃれな空間から感じる贅沢さ
ローカリティに対して
セブンストーリーズが名古屋を代表する施設となったとき、ユーザーは名古屋らしさをどこに感じると思いますか?
e.g.)飾り気のない無骨な感じ/ものづくり産業の素材がつかわれている/ラウンジに名古屋めし
──
この問いをお渡しした時点で、「素材」というキーワードが出てきました。この問いをもとに藏満さんや松田さんとディスカッションを重ね、セブンストーリーズを通じてものづくりに培われた文化に触れるきっかけとして、各地に当たり前のように使われている「素材」の重要さが見えてきたのです。
次回の活動報告では、この「素材」をキーワードに、建築家・デザイナーへ提出した設計要領についてお伝えいたします。
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