タチキカラ 杉野賢治です。一昨日から始まったクラウドファンディング、早速ご支援いただきまして、ありがとうございます。
初めての経験、クラウドファンディングが始まり、一晩で目標額の15%まで集まりました。この調子なら、1週間で目標達成!とはいかないでしょうけれど、本当に集まるかな?と心配していたので、正直嬉しいです。
と同時に、責任も感じます。みなさんの大切なお金を使わせていただくということ、肝に銘じて進めます。個人事業主として、細々と事業をやっています。10万円稼ぐことがどれくらい大変なことか、わかっているつもりです。僕の仕事は、山に身を置き、山の恵みである木を伐採(伐り旬・新月期伐採・葉枯らし乾燥)し、それをシングルフック仕様にした自分のユニック車を集材機として使い、搬出。そのまま載せて工場へ運び、去年設置した製材機(40年前の機械ですが、8mまでの木が挽けますし、6mの薄さ1ミリの均一な製品が採れるくらいの精度です)で挽き、天然乾燥して、仕上げしてくれる業者さんへ運び、そこから引き上げて自分で配達するまでです。
その工場(豊田市加塩町。猿投グリーンロード枝下(しだれ)インターから30分程の、矢作川上流域、岐阜に近い穏やかで静かで、豊かな山村にあります)に炭窯を作ります。
僕はそもそも、炭やき職人になるために脱サラし、師匠について修業しました。それ以来、ずっと炭やきを本業としてやってきました。この度、つまらない事情でしたが、去年まで使っていた窯が契約できなくなりました。しかし、それは僕にとってようやくその団体と縁が切れ、不本意なシガラミから離れて、自分の裁量で仕事ができるようになったことも意味しました。最初、クラウドファンディングを始めることは、正直乗り気ではありませんでした。古いタイプの頭脳構造なので「人様からめぐんでもらった金を、自分の事業に使うとは情けない」と考えていたのです。今回、製材機移転の費用を捻出するため、コミュニティバンク・モモから融資を受けました。他の金融機関で借りるよりも、僕がモモで借りることが僕自身のプラス実績になると考えたし、僕に融資することがモモのプラス実績になると考えたからです。モモに関わる出資者の中に、かれこれ10年以上の付き合いの牧田さんという方がいて、彼に融資のこと、お金のことを相談していた時に、クラウドファンディングをしてみたら?と勧められて、いろいろ考えた結果、やることにしました。いざ、やると決めたら最も大切な役割である事務局をしてくれるスーパーレディの古井さん(彼女もモモのメンバーです)を紹介され、現理事たちも応援してくれることになりました。
炭は、山の恵みと人の知恵が一緒になった素晴らしいものです。「灰にする炭」、「灰にしない炭」と、どちらも使えます。今度の窯でやく(平仮名表記が正式です)炭は、「灰にする炭」です。里山の恵みの中で、象徴的である実生で育った(人が植えたのではなく、自然に芽吹いた)広葉樹を昔ながらの方法で炭にします。一旦炭になれば1000年以上、そのままです。炭は元素である「C」の塊(96%以上が「C」)なので、それ以上分解されないのです。炭素の塊を作る訳ですから、それは「炭素固定」そのもの。人が一年で排出するCO2は炭にして数百kgの量だそうです。炭を燃やせば、CO2が出ますが、それは地球上のCO2を増やすことにはならず、元々空気中にあったCO2が戻っただけ(カーボンニュートラル)です。
僕は炭という、「火の文化」を絶やしたくないのです。そのために職人となりました。炭をやくために木を伐りますが、里山の広葉樹は、萌芽更新するので命が繋がります。本物の炭は、煙や炎を出しません。ただただ、真っ赤になり、遠赤外線を出しながら、静かに白い灰になります。一かけらの炭が完全に灰になる時間は、その灰の中に入れて空気量を調整することで格段に長くなります。火鉢の炭を、夜寝る前に静かに灰をかけておくと、朝起きても小さな火の塊が残ります。それを丁寧に取り出して、周りにまた炭を並べます。すると、一度熾した炭火がずっと使えるということになります。東北のある地方では、この方法で何十年も前の火種を守り続けていると聞きます。
里山の恵みを、丁寧に、優しく継いでゆくことが「火の文化」を守ることなのです。炭火で炙った食べ物は何でも美味い。スーパーで買った安い干物が、料理店で出される魚に変わる。それは、本物の炭だけが成せる技です。何故、そこまで美味しくなるのかは、遠赤外線効果もありますが、他にも理由があります。興味のある方は、直接聞いて下さいね。一回炭窯を焚き、炭を作る時には約2,5立米の原木が必要になります。大きめの広葉樹1本以上です。伐った広葉樹は、長さ3尺に切りそろえ、末口側で2寸四方くらいの大きさまで割り、それよりも細い枝はそのまま窯の中に元を上にキッチリと立て込みます。更に細い枝も、上木(あげき)と言って、窯のドーム部分に短くして詰め込みます。
一本の広葉樹(樫かナラ)を伐って、捨てるところ無く使います。残った葉っぱも集めて乾かして焚き付けになります。これは師匠から受け継いだ志なのです。一本の木を大切に、伐った以上、無駄なく使い切る。半端な長さの木っ端は焚き物にします。手を抜かず、山の恵みに感謝を忘れず、それを仕事にさせてもらっていることを忘れるなと。その木が、親から落ちたドングリから芽吹いて、その場所で何十年も生きてきたこと、特に広葉樹は水源地において、流域に流れる水の品質向上にはなくてはならない存在なのだと。クラウドファンディングで応援してくれる人に、僕が内緒で実行していることを一つ話します。
それは、窯を焚いて、出た炭の一番品質のいいところ一かけらを、その木を伐った山にこっそりと返しに行くことです。炭を山に置くことで、僕が関わってしまったことで伐られた木が巡る訳です。これは人間側の勝手な自己満足なんですが、僕はそれを山の恵みに感謝するという気持ちで行います。
山に炭を置くということを書き始めると終わらなくなってしまうので、その話もまた、直接お会いした時に聞いて下さい。引き続き、ご支援よろしくお願いします。
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→多様性のある森を目指して。伝統文化としての炭やきを残したい!(https://camp-fire.jp/projects/view/390072)