小話第23話「アボンとボウリー」
ある日アボンは森の中のブランコで得意な歌を口ずさみながら揺れていた。
風がふっと吹いた。
どこから鳴っているのか、プツンッという小さな音を丸いセンサーに感じたアボン。ふりむくがなにもいない。またブランコを揺らしていると、目の前に虹がかかっていた。
森に霧はよくかかるが虹は珍しい。
さっきの小さな音はこの虹のせいかなと、森に久しぶりにかかる虹をじっと眺めていると、またプツンッと音がする。今度はベロに、プツンッ。
胸がとてもドキドキする。
森の近くには大きな湖がある。センサーの反応、虹、ドンドンと速くなる鼓動。
湖に白鳥がきてる?まだ4月なのに?と湖の方へ歩きだすアボン。
かかった虹はすぐには消えない。
湖に行くには彼の家から続いている8本ある道の3番目の道をくだる。湖面を見渡せる場所にはすぐに着く。いつもは透明な湖が虹色になっていた。
また風がふっと吹いた。
アボンがきた道をふり返ると、そこにボウリ ―が立っていた。
「やあ!ボウリー!僕だよ!またここで君に会えて嬉しいよ!!」
アボンは満面の笑みで晴れ晴れとボウリ ―に挨拶をする。ボウリ ―は少し照れくさそうに目を閉じながら手を差し出した。
森の妖精と湖の妖精が出会う時、森には虹がかかり、かかった虹は湖に映り、それらは反射され、閉塞されていた世界が再びクルクルと動き出す。
※5年ほど前に、書いたものです。この小さなストーリーを曲をつけて歌にするのも私の夢です。