2022/02/14 07:00

毎週金曜、緊急避妊薬を飲んだ経験がある方のお話を共有する“#わたしたちの緊急避妊薬”のシリーズをnoteで公開しています。緊急避妊薬を飲むに至るまでの体験談を通し、身近にある現状の課題を「自分ごと」として考えていけるといいと考えています。そして、大切な経験を語ってくださったみなさまへ、心から感謝を申し上げます。

※クラウドファンディング《“緊急避妊薬と性知識”で、若者に人生の選択肢を届けたい!#わたしたちの緊急避妊薬》のページもあわせてご覧ください。



友美さん(仮名)は、現在、養護教諭をされている20代の女性です。家庭内の雰囲気に影響を受け、「性は恥ずかしいもの、気軽ではないもの」と感じられていたそう。今回は、初めてお付き合いをしたパートナーとの関係から、緊急避妊薬を服用された経験をお伺いしました。


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目次

  1. 恋愛や性の話は「恥ずかしい」ことなんだ。
  2. お互い大切にしあえる人との性行為を大事にしてほしい。


恋愛や性の話は「恥ずかしい」ことなんだ。

――生い立ちのなかで、性に関する話をできる環境にありましたか?

友美さん:家庭内では恋愛の話すらも出来ませんでした。祖母が清廉潔白を重んじる人だったのでドラマのキスシーンが流れると嫌悪感を示す表情をしたり、歌番組で腰を回すダンスが披露されると「こういうのはいやらしい」といった発言をしていたので、“この家では性にまつわることは恥ずかしいことなんだな”と強く印象に残りました。

中高生の時には経験もなく、イメージだけだったので性行為は友人とふざけて話すネタでした。高校生になると「初体験したよ」と周りから聞く機会が増えて、盛り上がることはあっても悩みを相談することはなかったです。

ただ、中学生の時に受けた保健体育の授業で、女性の先生が「生理についてなにか不安なことはありますか?」とアンケート形式で聞いてくれたことがあったんです。その時は「生理不順な気がする」と素直に書けたことを覚えています。

――緊急避妊薬を飲んだきっかけを教えていただけますか?

友美さん:当時、お付き合いをしていたパートナーと、初めて性行為をする時に「コンドームをしなくてもいい?」と聞かれました。

元々、緊急避妊薬の存在は知っていたんです。高校生の時に保健の教科書で見たり、養護教育の性に関する勉強会で手にした「日本家族計画(※1)」の冊子に載っていて、「こんな薬があるんだ、すごいな」と印象に残っていました。

だけど、いざとなると断れなくて。“1回ぐらいなら大丈夫でしょ”と思って承諾しました。翌朝、目が覚めると頭の中に、日本家族計画の冊子で見た文字がリアルに浮かび我に返って、すぐに日本家族計画の相談窓口(※2)に電話をかけました。

事情を説明すると「産婦人科に行ってね」と言われたので近くの病院を探して処方してもらいました。

※1:日本家族計画…一般社団法人 日本家族計画協会(JFPA)は、家族計画・母子保健の普及啓発のための事業を推進している公益民間団体

※2:日本家族計画の相談窓口…https://www.jfpa.or.jp/puberty/telephone/


お互い大切にしあえる人との性行為を大事にしてほしい。

ーー処方時のお気持ちはいかがでしたか?

友美さん:とにかく、不安でいっぱいでした。今後の人生についてたくさん考えました。

お付き合いを始めた時には、“これで処女が喪失できるぞ”と喜んでいたところもあって。それまでは、“もう二十歳だし、早く処女喪失しないとやばいんじゃないか”と焦っていました。そんな理由でお付き合いを始めた相手だから、結婚する気もないのにどうしよう、と考えるほどに不安が募りました。

診察時にはお医者さんに「ちゃんと避妊したんですか?そんなんじゃダメですよ」と、厳しいことを言われて、“ダメなことをしたんだな”とまた落ち込みました。

幸い、服用後の体調に大きな変化はなかったです。ただ、妊娠検査の結果が出るまでは精神的にかなりまいってました。何をしていても“もしも、陽性だったら……”という考えが頭に浮かび落ち着かず、食事・入浴・排泄以外は心配で力が入らず布団に横たわって過ごしました。

ーー検査結果を聞いた時のお気持ちを教えてください。

友美さん:妊娠検査の結果は陰性で、ほっとしました。その時はお医者さんも優しく、「陰性が分かってよかったね。低用量ピルもあるから、これからは避妊をしてね」と言われました。

ただもうひとつ、最後に「もっと自分を大切にするんだよ」とも言われて困惑しました。「自分を大切にする」ってよく聞くけど、具体的にどういうこと?みんなどうやって自分を大切にしてるんだろう?と疑問が浮かびました。

ーーその後、行動の変化はありましたか?

友美さん:当時のパートナーに緊急避妊薬を飲んだことを伝えて、「次からちゃんとコンドームを使って」と伝えました。避妊はするようになったけど、すぐにお別れすることになりました。

その後、お付き合いする人には必ず過去に緊急避妊薬を飲んだ経験と怖かった気持ち、不安な気持ちを伝えるようになりました。その時の反応を見て、この男性は安心できるかできないか、判断する基準が変わりました。

ーーどのような思いでこの取材を受けてくださいましたか?メッセージがあれば、お願いします。

友美さん:周りから「彼氏が避妊しないんだよね」「俺も周りもみんなコンドーム使わないから」などの話を良く聞く機会があって、自分の経験を活かして、避妊をしないとリスクがあるんだと伝えたいです。女性はもちろんですが、男性にも。

また、処女喪失や童貞卒業にこだわらないでほしいな、と思っています。周りと同じじゃない自分に自信がないことは、私が緊急避妊薬を飲むに至った原因の一つでもあります。みんなと一緒じゃなくていいから、お互い大切にしあえる人との性行為を大事にしてほしい。年齢なんて関係ないから、周りと同じことよりも自分の安心安全を優先してほしいな、と思っています。

――ありがとうございました。

インタビュー/小谷 真以花
文/高山 秋帆