かみとは何だ。人の生み出すものだ。
地に生え水と日の光を吸い風にゆれる草木、
人の手と意思から生み出されたものだ。
今大量に作られ、使われ、消えていくかみ。
加速し続ける循環の中で、見失うものはないだろうか。
少し速度を落とし、じっくりかみと向き合いたい。
土と水と火と風が描く円環の中に在る、かみと人を感じたい。
「天然紙」を、作りたい。
▼ご挨拶
はじめまして。私は長田和也と申します。
福井県越前和紙の里、大滝町で手漉き和紙工場を経営しております。
弊社は福井県越前市「越前和紙の里」にて襖紙や装飾和紙を製造している手漉き和紙工場です。屋号は八太夫(はちだゆう)。奉書紙の問屋下請工場から襖紙専業工場となり、昭和初めに先々代が確立した手漉き模様の技法を現在まで受け継いでいます。和紙の素材である楮・三椏・雁皮・麻のそれぞれが持つ特徴を生かし、伝統を守りながら、
「時代とともに進化し続ける 和紙の暮らし」
を追求しています。
▼“天然紙”を漉くことについて
越前和紙の伝統は、使い手の要望に応えることで技術を確立し、継承と革新を繰り返しながら育まれてきました。その一方で「作り手にとっての紙」というものを置き去りにしてきたような気がします。
どう使うかではなく、どう作るかを突き詰めた紙。
用途が紙を作るのではなく、紙が用途を作り出す。
そんな紙を漉きたいのです。
日本で育てられ加工された原料を使い、薬剤無添加の「天然紙」を作る。この製法は、現在、非常に困難になっています。理由は国産原料の不足と、手間暇がかかりすぎること。一度に生産できる量が限られているので、到底利益は出ません。私も手漉き職人として勉強するつもりで、数年前より天然紙製造に取り組んでまいりました。
防腐剤を使わないため、作業は真冬限定です。厳しい寒さの中白い息を吐きかじかむ手を擦りながら、紙をつくることのみに集中する。年に一度、私自身の「ものづくり」の精神と正面から向き合う時間でもあります。天候や気温、湿度、また私の心持ちに応じてその姿を微妙に変化させる紙と相対することで、ただ心の奥からの衝動に突き動かされ、無心に絵を描いていた幼い頃の自分が呼び覚まされます。
天然紙をつくること、そこにはただ、「つくる」という意思があります。
ものづくりの原点ともいうべきその意思を、少しだけ応援していただければ幸いです。
▼天然紙制作過程
冬、山の麓の工場は雪で覆われます。
和紙を漉くのに必要不可欠なネリは、トロロアオイから抽出する粘液を使っています。防腐剤のない時代の紙漉きは冬の仕事。気温が低ければ煮た原料も傷まず、ネリの粘りを保つこともできるからです。
▲(ネリの粘液を濾している様子)
貴重な国産の楮。
薪ストーブのオーナーから頂いた広葉樹の灰。
楮の声に耳を傾けながら、灰を使ってじっくり煮る。約二日の工程です。
楮の皮や節の部分(ちり)をとった後、柔らかくなるまで叩く。
楮とトロロアオイを混ぜ、心を込めて紙を漉く。
銀杏板に紙を貼り、乾燥。
自然に合わせ、寄り添うことで生まれる天然紙。
ほのかな土の匂いがします。
▼資金の使い道
原材料費、製作費、活動資料作成費、広報費、送料他、天然紙製作に関わる活動に使わせていただきます。
▼これまでの活動
2010年~2017年、毎年天然紙を漉き続けてきました。
詳しくは、以下リンクのわし太夫ブログにてご覧下さい。
http://osakazu.asablo.jp/blog/cat/lifework/
▼最後に
このクラウドファンディングを通して、「ものづくりに対する思い」をご理解頂ける方とつながることができればと思っています。
また、こういった自由な活動は、普段から支えて下さる方々のおかげです。少しでも恩返しができるよう、努力していきたいと思っております。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
最新の活動報告
もっと見る天然紙 障子
2017/10/10 09:56天然紙 障子:わし太夫より転載 http://osakazu.asablo.jp/blog/2017/10/10/8700240 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー とことん日本古来の建築にこだわった大学の後輩の家 天然紙を障子に使っていただきました 使い道を決めることなく紙として素材そのもののであることを目指した天然紙 化学薬品を一切使わないことが住宅に向いていることは想像できたものの、なかなか使ってもらえるまでには至らなかった 本音を言えば襖に使ってもらえるとよかったのだがこの家には障子だけ まったく薬品を使わないということで当然サイズ無し(にじみ止めが入っていない)、襖に貼るには糊が効きにくく施工が難しいらしい。 ただし障子紙としてはにじみ止めのない紙が貼りやすいということでこの場所にはかえって良かった できるだけ楮そのまま、塵取りも最小限、紙出しという原料の洗い作業も最低限に抑えているので決してきれいな地合いの紙ではない それだけに自然そのままの楮を感じられる紙となった 湿気は盛大に吸う、そして乾けばピンっと張る 仕上げの水打ちも最低限にしないと引っ張りが強くて建具を傷めてしまう表具師泣かせの紙 20年来のおつきあい腕は確かなベテラン表具師、いろいろ言われそうだが楽しみでもある 思えば2010年、ストレスからの突発性難聴治療のための入院中に決意、その年の暮れから始めた天然紙も7年目 歩き出した天然紙、向かう道はそこにある もっと見る
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