『どうせ死ぬなら恋してから(上)(下)』の粗筋。
(上)侵入者の主人公は遠野花南。五歳の時に父が失踪。いきなり貧困が襲う。サッポロの12月に水道電気ガスが止められる。保育園からの友人仲美子と富樫大輔の応援と協力で何とか窮状を脱する。花南は母と弟の健太と三人で生き抜く決意を固める。働き詰めの母を少しでも楽にするには働く。しかし子供は働けない。それでも働こうとする花南を大人たちは悪意で振り回す。
小六の修学旅行でクラスメイトに生活保護を知られる。花南が直感したのは『特別な眼』。この眼はイジメに発展する。学校は安心して過ごせる場所では無くなった。登校拒否。中学も拒否。図書館に居所を見つけた花南は勉強に励む。目指すは中学卒業認定試験合格。次は高認。
少年が花南に声をかけた。ひとつ年上の榊陽大。高一。彼は捨て子だった。小三まで養護施設で育てられた。美子も陽大の過去を同時に知る。「陽大はコッチ側だった。大輔も美子も周りの人はみんなアッチ側。アッチ側でも応援してくれる。でもコッチ側の陽大には何でも話せる。何でも分かち合える」。花南は運命の出逢いを実感。
十五歳になった花南はスーパーの正社員として働き始める。そこには事実上の上司である早川瑞希が居た。「こんな素敵な女の人を見たことがない」。高二になった陽大は陸上部に入り400Mを懸命に走っていた。一ケ月に一秒縮めるとの目標を建てて走っていた。花南が逢える日は一週間に一度から一〇日に。そしてニ週間に一度に減った。
美子は陽大と同じ高校に入学。陽大の生い立ちを知った美子は陽大に恋してしまう。陽大にコクれない美子。思い余り爆発寸前の美子は花南と大輔に想いの丈を告げる。
(下)犯罪者の主人公は仲美子。美子は陽大に想いを募らせ高二になると陸上部のマネージャー兼トレーナーとして入部。美子は陽大を応援しようとFXでボルダーの旅費と滞在費100万円を稼ぎ出しメールでマイケルジョンソンと友だちに。他にも整体教室に通いトレーナーとしてのイロハを習得。しかし美子の部活動は「陽大のトレーナー兼マネージャー」に徹底していた。それをキャプテンと顧問に咎められる。「私は陽大だけを応援するために入部した。それがダメなら退部する」と言い放つ。これで美子の陽大と共にボルダーに行く目標が遠退いた。
美子の半年余りのつっかえ棒が外れてしった。浮遊する美子。病が近づいて来た。そんな折にかつて美子に痴漢を働いた変態と仲間の二人が美子に罠を仕掛ける。恋患い激化の美子は難なく邪な三人の罠に堕ちる。病膏肓の美子は解離性障害と診断され即時入院。花南と弟の健太と大輔は美子の回復に向けて結束する。そこに早川瑞希も参入。
美子は変態から移された三角の白い眼が恐かった。眠ろうとすると現れる。眠れないと症状が悪化する。美子は終日入院した病棟の壁を灯りを付けたまま見つめていた。これが三角の眼から逃れる最善だった。回復の兆しは早川瑞希の示唆。彼女の造語である「虚体」概念の注入と白い三角の眼は妖怪。現れたら捕まえて食べてしまう。
花南と美子の視点で描く貧困と恋と友情をどうぞ。
この後は『アンダルシアの木洩れ日』。次は処女作の『スパニッシュダンス』の粗筋を届けます。重複しますが『未来探検隊』の抜粋の途中から『どうせ死ぬなら恋してから(上)(下)』の抜粋をアップします。