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小説好きのあなたに近未来を届けます。

お届けする作品は『未来探検隊』の他三つです。四作品とも未発表。何れもワープロ原稿をワードの添付メールで送信。僕に送り先のメルアドが届き次第、直ちに送ります。スマホや他の携帯には送れても容量が大き過ぎて開けません。パソコンは大丈夫。ワードで圧縮せずに送るので今までの経験では問題なしでした。

現在の支援総額

18,000

1%

目標金額は1,000,000円

支援者数

4

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2021/04/05に募集を開始し、 4人の支援により 18,000円の資金を集め、 2021/06/04に募集を終了しました

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現在の支援総額

18,000

1%達成

終了

目標金額1,000,000

支援者数4

このプロジェクトは、2021/04/05に募集を開始し、 4人の支援により 18,000円の資金を集め、 2021/06/04に募集を終了しました

お届けする作品は『未来探検隊』の他三つです。四作品とも未発表。何れもワープロ原稿をワードの添付メールで送信。僕に送り先のメルアドが届き次第、直ちに送ります。スマホや他の携帯には送れても容量が大き過ぎて開けません。パソコンは大丈夫。ワードで圧縮せずに送るので今までの経験では問題なしでした。

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『母さん。美子が十六時から就職祝いしてくれるって。それでカレーを作った。

美味しくできた。サラダは冷蔵庫。ご飯は十七時にタイマーをセット。健太と

食べて下さい。健太用に四人分を作ったよ』とメール。『美子は良い友達だね。

母さんも花南の就職祝いを買った。楽しんでらっしゃい』。返信が届いた。

 働くまでの残り少なくなった図書館での時間を何に使うか決めかねていた。

『中認』の試験は三年分がパソコンに取り込まれていた。三年目の問題では五

教科で満点を取った。その時に…これで中学の勉強は終わった…と意識した。

 何時かパソコンを買った時には自分で設定する。それで設定費用が浮く。そ

の為に作ったパソコン用語事典もほぼ完成。基本知識に不安はない。

 高校の勉強を始めようかと考えた。けれど高校の教科書は図書館に置かれて

いない。参考書なら在った。参考書は教科書が在って活きるもの。教科書を買

うにはお金が足りない。働くまで待つしかない。とりあえず『高認』の試験問

題を開いた。『高認』は九教科もある。マークシートは『中認』と同じ。美子

が言っていた通りに五〇点が合格ラインだった。半分で良いのなら今でも何と

かなりそう。来年に受験しようか…。でもそれで合格したとしても高校の勉強

を終えたとは云えない。来年の受験はどうしよう…か。     

「お待たせ」

 榊陽大の声が背中から聞こえた。

「なんか。背中が深刻だった」

「ちょっと考えごと。高校の教科書を持っていないのに来年『高認』試験を受

けようか、どうしようと考えてしまっていた」

「そうなんだ。十六歳で受験できるんだ。合格したら翌年に大学受験も可能。

俺が高三になる直前に花南が大学に合格したらスゴすぎる」

「そんな風にはならない。やっぱ。高校の勉強を完了したと思えないと」

「俺が使っていた高一の教科書はもう使わない。よかったら一式プレゼントす

る。花南。メモ書きが在るけれど使ってくれる…」

「えっ。いいの。本当に~。ありがとう。使わせて下さい。助かります」

「何をハシャいでいるの。可愛い笑顔を振りまいて。妬けるではないか」 

 美子が両腕を腰に当てて仁王立ち。

 気づかなかった。

 花南は『中認』の試験結果を美子に伝えた。伝え方がしどろもどろだった。

 美子に見抜かれた。

「あんた。思っていたことと違うことを喋ったな」

 花南は無視して榊陽大に仲美子を紹介した。

「誤魔化したな。まぁいいか。紹介してもらったし…」

 美子はお洒落して来た。気合いが入っている。ダッフルコートは中学生の定

番。濃紺は初めて見た。バーバリのマフラー。ダッフルコートの裾からバーバ

リのフレアスカートが覗いていた。そして焦げ茶の編み上げのハーフブーツ。

似合っていた。おまけに艶リップまで。女子高校生のよう。

「これからマックに行かないかい。マックならおごれる」                                                           

 榊陽大がとりなした。

 マックでは三人とも『ビックマック』のセット。ポテトとコーラLを注文。 

「花南。就職おめでとう」 

 三人はコーラで乾杯。

「榊さん。初めて会ったばかりで失礼かも知れない。でも言わずにいられない

から花南に頼み込んで会わせてもらった。榊陽大さん。あなた。花南を応援で

きる。守ってやれる。それができないなら認められない。花南は将来必ず凄い

オンナになる。小っちゃい頃からトモダチしていた私はそう確信している。そ

れまでのミチのりは遠い。試練も訪れる。だから私は応援しているんだ」

 美子の言い方は焔だった。逃げを許さない美子の気迫の焔。

「俺は応援する。守る。初めて花南を図書館で見たのは半年くらい前。何時も

楽しそうに勉強していた。その姿を見て俺も奮い立った。中学に行っていない

のは直ぐに分かった。その辺の事情が分からなくとも俺と似ていると想った。

共通する何かを感じたんだ。それで我慢できなくなって声をかけた」

「共通する何かってナニさ」と美子。

「俺は養護施設で育てられた。両親は分からない。誰に聞いても分からない。

恐らく捨て子。小三の時に今の父さんと母さんに引き取られた。それから七年。

両親はとても俺を大切にしてくれる。何時か恩返しする」

 時雨の匂いの源を知った。息が詰まった。見開いたままなのに、花南の眸か

ら涙が溢れ、ひと筋ずつ、両頬を伝った。

 陽大はあっち側の人と思っていた。でもこっち側だとは…。美子も大輔もあ

っち側。それでも小っちゃい頃からこっち側を気にかけてくれるトモダチ。矢

野先生もそうだ。でも陽大はこっち側だった。こっち側の人間と巡り合ったの

は初めて。それもタイプの相葉君似。花南には驚きよりも喜びが広がった。

…こっち側の人間には何でも話せる。何でも分かち合える…

「こんな話しを聞いてしまったら花南の他にもう一人応援しなければならない。

言いたくないことを言わせてしまった。陽大さん。ゴメン。よ~く分かった」

 美子が涙目で言った。 

 三人は無言で『ビックマック』をパクついた。


■『どうせ死ぬなら恋してから(上)』の抜粋はその12で終了です。

■明日からは『(下)の犯罪者』をアップします。10回を予定しています。

■4/12にリターンを見直しました。活動報告の4/12をクリックして下さい。

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