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小説好きのあなたに近未来を届けます。

お届けする作品は『未来探検隊』の他三つです。四作品とも未発表。何れもワープロ原稿をワードの添付メールで送信。僕に送り先のメルアドが届き次第、直ちに送ります。スマホや他の携帯には送れても容量が大き過ぎて開けません。パソコンは大丈夫。ワードで圧縮せずに送るので今までの経験では問題なしでした。

現在の支援総額

18,000

1%

目標金額は1,000,000円

支援者数

4

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2021/04/05に募集を開始し、 4人の支援により 18,000円の資金を集め、 2021/06/04に募集を終了しました

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支援者数4

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お届けする作品は『未来探検隊』の他三つです。四作品とも未発表。何れもワープロ原稿をワードの添付メールで送信。僕に送り先のメルアドが届き次第、直ちに送ります。スマホや他の携帯には送れても容量が大き過ぎて開けません。パソコンは大丈夫。ワードで圧縮せずに送るので今までの経験では問題なしでした。

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 翌日、美子は授業を終えると市役所本庁に向かった。変態の名刺には左上に

札幌市のスマイルロゴが赤く入っていた。一Fの戸籍係を遠くから見渡した。 

結構な人が仕事に励んでいた。変態の姿を見つけられなかった。

 美子は見つけようと首を伸ばしてウロウロ。

 訝られたのか警備員に呼び止められた。

「君は何をしているのかな」

「えっ。私ですか。人を探しているんです」

 美子は変態の名刺を差し出した。

「この人に会いたくて探していました」

 警備員は名刺を受け取ると総合案内に向かった。美子はその後に付いた。

 総合案内の女性が受話器を取った。直ぐに受話器を置いた。

「この名刺の男性は市役所本庁の戸籍係には居りません」

 美子は耳を疑った。

「居ないって。だったらこの名刺はニセモノ」

「そう思います」と総合案内の女性。

 そうか。だからアッサリと名刺を差し出したんだ。その場を逃れるための有

効な手段として変態は名刺を使ったんだ。だったらナニモノ。

 美子は動揺。

 アカナラの樹立ちの陰の闇に光っていた三角の白い眼。三角の白い眼が私を

凝視していた。時折三角が動いた。不気味だった。恐かった。何か企んでいる。

コンビニで見た時はそんなに悪い奴とは思えなかった。ツーブロックと爽やか

系の顔立ちに惑わされたのだ。痴漢の時の髪形は覚えていない。あの時は顔と

耳朶のホクロが精一杯だった。名乗ったのは本当に拙かった。戸籍係で無くと

も我が家を調べられる。我が家は住宅地図に載っている。写真を撮らなかった

のは大失敗。素直な態度に騙されてしまった。これはかなりヤバイ。これから

は背後に注意しよう。変態がタクシーに笑顔で手を振ったのは警察を回避する

作戦成功の合図だったのだ。舐められてしまった。許せない。変態の企みとは

何だろう。時折女子高校生の拉致監禁が報道される。長い時には一年以上も監

禁。靴もスマホも取り上げられ縛られたまま。犯人は中年とは限らない。若者

も居た。監禁されている間は四六時中痴漢され続ける。

…イヤだ…                                 

 美子は警察に行くと決めた。

 もう独りでは手に負えない。花南や大輔の助けを借りる訳にはゆかない。二

人とも大切な毎日が在る。再度、変態を探し出しトッチメルには偶然が必要に

なる。偶然見つけるには膨大なエネルギーが要る。見つけられないかも知れな

い。見つけ出したとしても対峙した時のリスクが大きい。家を発見された時に

はストーカーに追われる日々が続く。独りでは解決できない。変態は嘘つきだ。

痴漢の常習犯かも知れない。そして何かを企んでいる悪い奴。

 

 美子は中央警察署の入口に続く半円形の階段を上がった。

 市役所本庁から西に六〇〇メートル。

 受付の窓口で来署の理由を告げた。

 受付は女性だった。それが心の負担を軽くした。

 痴漢されたを男性に言うのは躊躇う。男性の好奇の視線を浴びてしまう。好

奇とはスケベ心だ。痴漢と共通するスケベ心に向き合うのはイヤだ。

 廊下に置かれた長椅子に座っていると制服の女性が現れた。促され後につい

て行くと『取調室』と表記された部屋に通された。

 美子は制服の女性から名前と住所と年齢と高校名を尋ねられた。

 美子は痴漢された日時と詳細を言った。最後に変態の名刺を机に置き「嘘っ

ぱちの名刺だった」と伝えた。

 制服の女性は美子の早口を素早くメモしていた。書き終えると「少し此処で

お待ち下さい」と言い部屋から出て行った。

 美子は今喋ったことに付け加える何かが無いかを反芻していた。

 ふたつ在った。

 ストーカーに付け狙われる。それと拉致監禁。 

 一〇分ほど待っただろうか。

 スーツ姿の男性二人が部屋に入って来た。続いて制服の女性も。

 年配の男性が机の上に写真を三枚置いた。

「この中に君を襲った痴漢は居るかな」  

 居た。置かれた三枚の写真の真ん中にツーブロックの変態が居た。

 美子は変態が写っている写真を指差した。

「コイツです」

「こいつは鳥居一平と云って痴漢の前がある。一年前の時は初犯でもあり本人

の反省の下で起訴猶予で済んだ。性懲りもない奴だ。検察官の前での反省は見

せかけだった。痴漢する奴は捕まったら反省して痴漢を繰り返すんだ」

「ひとつ聞いてもイイですか」

「どうぞ」

「こいつはナニモノなんですか」

「市役所の職員でないことは確か。前回の時にはスマホのアプリ製作の会社に

勤めているとのことだった。今も同じ会社に勤務しているかは不明。IT関連

の者たちは会社の移動が頻繁だ。独立する者も多い。しかし同じ業界で生計を

立てる。見つけ出すのは難しくない」

「捕まえて下さい。お願いします」

「分かった。しかし君がこの鳥居一平から被害を受けてから一ケ月以上も経っ

ている。どうして被害を受けたその時に警察に来なかったんだ」

「自分で見つけて、捕まえて、謝って欲しかったから」

「そうか。随分と勇気があるんだ」

「友人と捕まえる約束しました」

「その友人って女の娘」

「はい。小っちゃい頃からの親友です」

「ひとつ忠告しておく。犯罪者を自力で捕まえるは無茶に繋がるからね」

「はい。分かりました。警察に来て良かったです」

「この偽物の名刺は預かるからね」

「はい。宜しくお願いします」

 美子が名刺に同意すると刑事と思しき二人は部屋から出て行った。

「仲美子さん。これから被害届を作成します。宜しいですか。痴漢退治は親告

罪なので被害届が出されないと警察は捜査も逮捕も任意での取り調べもできな

いのです」と制服の女性が被害届と記入された用紙を机に置いた。

「あの~。書き方が分かりません」

「大丈夫。私の問いに答えて下されば被害届が完成します」

 美子は中央警察署から出た。制服の女性が見送ってくれた。

「三日もあれば警察に連行されます。その知らせを欲しいですか」

「はい。お願いします」

「では私が責任をもって連絡します。スマホの番号を教えて下さい」

 制服の女性は警察手帳を開いた。開くと写真。『細川恵花警部補』。


 三日後に細川警部補から美子にショートメールが送られてきた。

『鳥居一平被疑者が任意で本日の十五時に出頭します。それから取り調べ。貴

女も別室で取り調べを見られます。来られますか…』

『必ず行きます。十四時二〇分で授業が終わります。それからタクシーで』

『ではお待ちしています。受付で私の名前を告げて下さい』

 美子は指示通り受付で「細川警部補に呼ばれて来ました」。

 直ぐに細川警部補が現れ二階の部屋に通された。

 部屋は狭かった。四人も入ると窮屈。マジックミラーが少し低い隣の部屋を

映し出していた。映画やテレビの刑事物と同じシーン。

 変態が首部を垂れて座っていた。

 落ち着きが無い。

 そこへ前回と同じ二人の刑事が入って来た。

 年配が椅子に座り若い方が変態の後ろに立っていた。

「鳥居一平さんだね」

「はい」  

 取調室の声がスピーカーから流れ良く聞こえる。

「貴方に痴漢されたと云う被害届が出されています。逮捕することも出来まし

たが逃亡の恐れが無いとの判断で任意での取り調べになります。言いたくない

ことや自分に不利益になると思ったことには黙秘できます。君はこれで二回目

の痴漢の取り調べだから知っていると思いますが警察は被疑者に黙秘権を伝え

る義務があります。要するに喋りたくないことは喋らなくてもいい」

 後ろに立っていた若い刑事が前方に回り込み被害届を読み上げた。

 座っている年配の刑事は変態の表情を鋭い眼で見つめている。

 美子も変態の表情と動作に集中した。

「今読み上げた内容に間違いは無いですか」

「…。間違いありません」

 座っていた刑事が嘘の名刺を机に置いた。

「何故嘘の名刺を被害者に手渡したのですか」

「公務員の名刺は彼女に安心してもらう為でした」

「彼女は不信に思い翌日に市役所本庁の戸籍係に行って確かめた」

「そうですか」

 変態は更に落ち着きを無くした。

 美子は変態の心の動きを掴んだ。

―まさか。確かめるなんて。渡さなければこんなことにはならなかった―

…やっぱり小娘と舐められていたんだ…

「私文書偽造は作るだけでは罪にならないが使った瞬間に犯罪になる。三ケ月

以上五年未満の懲役刑が科せられる。痴漢は強制ワイセツ罪。六ケ月以上一〇

年以下の懲役。これは知ってるよね。君の今回は併合罪だ」

「併合罪ってナニ」

 美子は細川警部補に尋ねた。

「後で伝えます。これからをよ~く見ておきましょう」

 変態も私と同じく併合罪が分からなかったみたいだ。訝しげに顔を上げた。

口をモグモグ。何かを聞きたがっている。併合罪ってナニと読み取れた。

 二人の刑事は応えなかった。

 もう一人の若い刑事が入って来た。

 座っていた年配の刑事が頷いた。

 それを合図に入って来たばかりの若い刑事が退室。

「若い刑事さんはこれから裁判所にひとっ走り。逮捕状の請求よ」

「えっ。変態は逮捕されるんですか」

「二回目の強制ワイセツ罪と私文書寄偽造行使の併合罪ですから。併合罪とは

犯罪を犯した時にふたつ以上の罪を重ねる時に適用される。重い方の法定刑の

一.五倍の量刑になる。今回は九ケ月以上十五年以下の懲役刑」

…な~るほど…

「逮捕されるとどのくらい出て来られないのですか」

「最短で三泊四日。最長で二十三日。その間に検察官が起訴するか否かを決め

る。逃亡と証拠隠滅の恐れが無いと裁判所が判断した時には保釈される。今回

の場合は既にふたつの罪を認めているから三泊かな。長くて一〇日」

「もうひとつ君に尋ねたい」

 年配の刑事が言った。

「何故被害者を狙ったんだ」

「それは言いたくありません」

「そうか。言いたくないのなら無理強いできないな。しかしだ。具体的な動機

を明らかにすると情状酌量の対象になるやも知れないぞ」

…これって誘導尋問だ。オジさん。なかなかやる…

「可愛かったから…。彼女と付き合ってみたかった」

「オマエ。馬鹿だな。痴漢しておいて付き合ってみたい…なんて通用しない」

「はい。馬鹿です。偶然出会ったこの時を逃してはならないと手が勝手に…」

「お前。普通では無いな。偶然出会ったこの時を逃がしてはならないと思った

のなら被害者が地下鉄から降りた時を見計らって声を掛けるのが普通だ。いわ

ゆるナンパ。ナンパなら罪にはならない。警察の世話にもならない」

「勇気がなかった。断られるのが恐かった」

「勇気が無くて、恐くてナンパできないから痴漢したのか」

「結果だけを捉えたならそうなりますが…。手を制御できなかった」

「確かに被害者は可愛い。そして美人だ。俺の娘と比べたら月とスッポン。ど

んな大人になるのか楽しみになる。だからと言ってだ。被害者のような美人で

可愛い娘が街を闊歩したり満員の地下鉄に乗るのを差し止める法律は存在しな

い。それは自由の範疇。しかし闊歩や満員の地下鉄は罪作りと思ったりする。

それでも大多数の男は罪を犯さない。極少数の君のような者の衝動が犯罪に走

る。君は抑制力が欠落している。それを自覚しろ」

…オジさんと変態に褒められても嬉しくない…

 変態は更に首をガックリと垂れていた。

「もうそろそろ逮捕されます。その瞬間を見ますか」

「いいえ。もう充分です。男の人の心理の不思議を発見できたから」

「大事なことを伝えます。被疑者が弁護士を付けた時には必ず示談金の話にな

ります。だいたい三〇万円から一〇〇万円の範囲になるかと思いますが貴女も

弁護士の準備をしておいた方が慌てなくても済みます」

「私。示談してお金をもらおうと考えていません」

「貴女がそう言うのは分かります。しかし被疑者にとって大切なのが示談金。

合意した時には被害届を取り下げることになります。取り下げた時には強制ワ

イセツ罪が適用できなくなり私文書偽造行使だけになり罪が軽くなります」

「示談金ってそう言う意味なんだ。だったら考えます。大人の解決方法なんで

すね。大人の解決方法のひとつがお金。勉強になりました」

 美子は細川警部補に付き添われて中央署の玄関に立った。

「今日は色々と教えて頂きありがとうございました。変態との終わりは裁判所

からの判決。その前に示談金も在る。今日で終わりにしたかったけれどもう少                                 

し時間がかかると分かりました。私の終わりとはストーカーからの付け狙いと

拉致監禁の恐怖からの解放です」

「それは私も刑事さんたちも分かっています。検察官にも伝えます」

 美子は細川警部補に深々とお辞儀して中央警察署の階段を降りた。

…いや~。緊張した。肩がこった。弁護士さんは花南に相談する。矢野先生を

紹介してもらおう。これで今日がやっと終わった。ストーカーと拉致監禁への

恐れは警察がカヴァーしてくれるはず。とりあえず今日は終わったのだ…

 美子は両手を組み頭の上まで伸ばした。肩と首がボキボキ鳴った。

 その時にすれ違った男が居た。男は胸ポケットに忍ばせたスマホのフォトス

イッチを入れた。男はスマホをコードで遠隔操作していた。連写。

 美子は気づかなかった。


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