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小説好きのあなたに近未来を届けます。

お届けする作品は『未来探検隊』の他三つです。四作品とも未発表。何れもワープロ原稿をワードの添付メールで送信。僕に送り先のメルアドが届き次第、直ちに送ります。スマホや他の携帯には送れても容量が大き過ぎて開けません。パソコンは大丈夫。ワードで圧縮せずに送るので今までの経験では問題なしでした。

現在の支援総額

18,000

1%

目標金額は1,000,000円

支援者数

4

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2021/04/05に募集を開始し、 4人の支援により 18,000円の資金を集め、 2021/06/04に募集を終了しました

エンタメ領域特化型クラファン

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現在の支援総額

18,000

1%達成

終了

目標金額1,000,000

支援者数4

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お届けする作品は『未来探検隊』の他三つです。四作品とも未発表。何れもワープロ原稿をワードの添付メールで送信。僕に送り先のメルアドが届き次第、直ちに送ります。スマホや他の携帯には送れても容量が大き過ぎて開けません。パソコンは大丈夫。ワードで圧縮せずに送るので今までの経験では問題なしでした。

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 美子は花南のスーパーに向かった。

 花南の早番を願って伏見行きのバスに載った。

 報告は早い方がイイに決まっている。矢野先生も早い方がイイに決まってい

る。変態の拘留は最短で三日。その間に弁護士の誰かに依頼して私との示談交

渉に臨むかも知れない。私単独で交渉しても構わないけれど弁護士には弁護士

が通り相場。一度も会ったことが無い矢野先生。花南を助けたのだから私も助

けてくれる。それに矢野先生からもストーカーと拉致監禁に釘を刺してもらい

たい。警察と検察官と弁護士に釘を刺されたら変態は身動きできないだろう。

示談交渉の時には必ず俎上に載せてもらおう。

 ラッキーだった。花南は早番。

 美子は近くのヴィクトリアで花南に報告を済ませ矢野先生の紹介を頼んだ。

「分かった。先生に頼んでみる」

 花南は矢野弁護士にショートメールを送った。

『わたしの親友の仲美子が困っています。先生。相談に乗って下さい。花南』

 花南らしい素早い展開。本当に頼りがいがある。

 五分もしないうちに花南のスマホに着信が届いた。

「美子。これから先生の事務所に行こう。二人で来てくれってさ」

「よし。行こう。ありがとう」

「なんも。なんも。あれ以来先生と逢っていないんだ。わたしも逢いたかった

から渡りに船さ。高認合格は報告すると約束していたけれど中認は報告してい

ないんだ。それと先生に個人的に聞きたいこともあるし…」

 美子がレジで花南分も支払って二人はバスに乗った。

 伏見からはバス。円山公園駅で地下鉄に乗り換える。

 

 美子を秘かに連写した男がバスに同乗していた。

 男はバスの中でも美子を隠したスマホで撮った。

                                

 花南が円山公園駅に隣接したキャラクターグッズの店に立ち寄った。

 そこでキティの同じキーホルダーを三つ買った。

「わたし。先生に何もお礼していないんだ。だからさ。はい。これは美子分。

三人が同じキーホルダーはお守り。美子の生涯最大のピンチだから」

「気をつかわせるね。ありがとう」

 矢野修弁護士は花南から伝えられていたイメージ通りだった。

 花南を出迎えた時の嬉しそうで優しそうな笑顔。

 キティのキーホルダーを手に取った時には子どものようにハシャイだ。

 ひと度相手を凝視した時には威圧感の在るギョロ眼。

 美子も矢野弁護士の部屋に通されるとギョロ眼の一瞥を浴びた。

「そうか。花南は今年の十二月に高認に挑むのか。楽しみにしている。美子に

尋ねるが被害届は中央署の誰が持っているのか。それを知っていると私の動き

が早くなる。それと嘘つきの被疑者に厳罰を望んでいるのかな…」

 矢野弁護士は美子の依頼を受けるとはひと言も発しなかった。

 依頼を受けるのは当然との様子。

「厳罰を望んでいるのではありません。今回恐いと思ったのが巨樹の陰の暗闇

に潜んでいた妖怪のような三角の白い眼。三角の白い眼が私に向かって来る気

配。それとストーカーと拉致監禁。それへの不安を取り除きたいんです」

「そうか。相手の出方次第だな」

 矢野弁護士は事務員を部屋に呼んで二枚の書類を持って来させた。

「美子は未成年。私に依頼するには美子の委任状の他に両親の同意書が必要な

んだ。これが委任状と同意書。委任状は今書いて。同意書は三文判で構わない

から御両親に心配かけたくなかったら美子が字体を変えてこっそり書く。これ

を私から聞いたとは絶対の禁忌。口外してはならない」

「分かりました。委任状は今書きます。でもハンコを持ってきていません」

「サインでOK」

「同意書は明日届けます」

「了解」

「私。先生へのお礼をどうしたらイイのでしょうか」

「弁護士会の報酬基準では依頼時には着手金が一〇万円程度。報酬は着手金込

みで実額の二割程度。これを伝えたのは社会勉強。花南の紹介で親友の依頼だ

から着手金はいらない。それに被疑者が弁護士に依頼して示談しようとするの

かはまだ分からない。通常は示談に向かって相手が動き出した時に依頼する」

「変態嘘つきの鳥居一平は示談交渉に踏み切るのでしょうか」

「私の経験では強制ワイセツで身柄を拘束された被疑者は余程のことが無い限

り示談を追及する。示談が成立しないと拘束が解かれない」

「そうですか。今日先生にお願いして良かった。宜しくお願いします」

「任せて下さい。しかしだ。花南を初めて見た時に溌剌としていて驚いた。十

四歳で弁護士会に年齢を偽って相談に来るとは稀有だ。偽った年齢にも動じな

かった。腹が座り、何が何でも、疑問を晴らしたいとの念が伝わって来た。そ                                

の疑問も…中学生はナゼ働けないのか…だった。こんな相談は経験していなか

った。これからも無いだろう。美子にも驚かされた。美子はキラキラしている。

名前の通りの美人。そして可愛い。けれど美人で可愛いだけでは無い。表情に

知性が躍動している。それがキラキラと輝く。二人とも大人への階段を自分な

りに上っている。青春の真っ只中に居る。私の高一の時は暗かった。ドンヨリ

していた。青春していなかった。司法試験は頭に在った。合格するまでの道の

りの長さと困難に打ち負かされていた。司法試験に合格する二六歳まで私には

青春が無かった。二人を見ていると眩しい。ところで花南。彼氏ができたんだ

って。花南が見染めた男子に興味が湧く」

「はい。高認に合格した時に連れて来ます」

 チラッと花南が恥ずかしそうに美子を見た。

「先生。今どきの高校二年生のように見えて全く違う。良い男子です」

 美子は自分のことのように自慢した。

 花南の顔が朱色に染まった。それからは下を向いたまま顔を上げなかった。

 

 美子と花南は矢野法律事務所のビルから外に出た。

 その時に二人は隠し撮り男からフォーカスされていた。


「花南。先生に聞きたいことを聞かなかったね。それでイイの…」

「聞きたかったけれど又の機会にした。今日は美子が主役だから」

「そうか。又の機会は近々にありそうだね。差し支えなかった教えて」

「うん。ちょっと言い難いなぁ」

「無理しなくてイイよ」

「うん。でも言っちゃう。職場の事実上の上司との不倫」

「えっ。不倫」

「わたしは知っていますと伝えたかった。わたし。二人を認めているんだ」

「先生もやるね。花南は先生と近い処に居る。これも縁だね」

「うん。そう思う」

「花南から聞かされていた先生はイメージ通りだった。とても頼りがいのある

お茶目な弁護士さん。先生には青春が無かったから今青春しているんだ」

「でもそれが不倫だとちょっと物悲しい」

「そうだね」

 二人は西十一丁目から内回りの市電に乗った。

「花南。矢野先生の不倫相手はきっと特別な人なんだと思う。違う…?…」

「特別がふさわしいのか分からない。でもね。わたしはあんなに素敵な大人の

女性に出逢ったことがない。わたしは可愛がられているんだ」

「そうなんだ。花南が可愛がられているのは私にも分かる。素敵な大人の女性

は優秀なんだ。仕事ができるんだ。一生懸命に仕事する花南を認めている」

「美子。機会を作るから三人で食事しない」

「あんた。大人になったみたい。一緒に食事しないを子どもは言えない」                                

「そうだね。思わず言ってしまった。でもわたしはまだまだ子どもだよ」

「私と同じだ。機会を作ってね」

「分かった。美子に紹介したかったんだ」


 二日後の昼休み。

 美子に高島と名乗る弁護士からスマホに連絡がきた。

「鳥居一平氏の依頼で代理人に就きました。宜しくお願いします。早速ですが

被疑者が示談交渉を望んでおり受けて頂きたいのですが」

「分かりました。私は既に矢野修弁護士に委任しております」

「そうですか。用意周到なんですね。では私から矢野先生に連絡します」

 やはり変態は示談交渉に踏み切った。

 あとは矢野先生に任せる他ない。

 任せられる弁護士が居るとこんなにも心が軽く落ち着くんだ。

 授業が終わるとそれを見計らったかのように矢野先生からショートメール。

『これから事務所に来てもらえるかな。君の意見と同意が必要なんだ』

 美子は余りにも早い展開に戸惑った。

 あの日、花南と一緒に矢野先生を訪ねて良かったのだ。グズグズしていたら

高島弁護士からの電話に動揺。それからの動きでは遅い。単独での示談交渉に

は無理がある。流れが分かっていない。それに示談金の相場も一度聞いただけ。

実感が湧かない。要するに私の実力以上。花南はグズグズしない。それは今回

だけに限らない。何時もそうだ。それに救われた。

 美子は市電の外回りに飛び乗った。ゆっくりと進む市電から返信した。

『市電の中です。あと十五分で着きます』

 先生が事務所の入っているビルの外に出迎えてくれた。

「示談がまとまりそうな局面なんだ。それで来てもらった。示談金は五〇万円。

被疑者は今後一切仲美子に近づかない。これで良ければ被害届を取り下げる」

「五〇万円とは大金ですね。私が最も重要視しているのが…今後一切近づかな

い…なんです。もし変態が近づいた時にはどうなるんです」

「それは示談書の合意違反。被害届の取り下げを撤回できるのと合意違反を根

拠にした民事訴訟が待ち受けている。その時は私が訴訟を担う」

「法律上の書面での合意とは重くて力が在るんですね」

「その通りだよ。口頭でも合意違反に対して念押しするかい」

「お願いします」

「ではこれで進めるね」

「お金は何時支払われるのですか」

「早ければ今日中。でも今日はもう銀行業務が終わっている。今日払い込んで

も着金は明日の朝イチになる。私の口座への着金を確認してから被害届の取り

下げ。これは私がやる。それを待ってから被疑者の保釈」

「流れが素早いんですね。先生のお礼はどうしよう」

「花南のマブダチだから一割で充分だよ」                                

「わぁ。値引きだ。本当にありがとうございます。これでやっと変態から逃れ

られる。イヤな気分から解放される。先生。弁護士って素敵な職業ですね」

 矢野弁護士は、はにかみ、照れていた。                                

 美子は何度も振り返り、見送ってくれた、矢野先生に手を振り続けた。

 先生は右手を胸の前に置き小刻みに振って応えてくれた。


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