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小説好きのあなたに近未来を届けます。

お届けする作品は『未来探検隊』の他三つです。四作品とも未発表。何れもワープロ原稿をワードの添付メールで送信。僕に送り先のメルアドが届き次第、直ちに送ります。スマホや他の携帯には送れても容量が大き過ぎて開けません。パソコンは大丈夫。ワードで圧縮せずに送るので今までの経験では問題なしでした。

現在の支援総額

18,000

1%

目標金額は1,000,000円

支援者数

4

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2021/04/05に募集を開始し、 4人の支援により 18,000円の資金を集め、 2021/06/04に募集を終了しました

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 思いつくままに書いた。ずいぶんと長くなった。数えると四百字詰めで九枚

半。こうなったのは『西南戦争』を読んだからだ。あんな評伝を読んだ後に、

軽く、あっさり、と問題点を指摘する訳にはゆかなかった。魂を込めて書かな

ければ書いたとは云えない。そうで無ければ読んでもらえない。

 美子は書くとは念の爆発なんだと知った。

 でもこの長さを花南の世界史の余白に断りもなく書き綴るのは失礼だ。

 そうだ。パソコンに打ち込んでプリントする。

『今、香港が騒がしい』の処に「花南。私も考えてみた」とだけ書き込む。そ                                

れを邪魔にならぬように小さい文字で書き込む。そしてプリントを折り畳んで

封筒に入れて貼り付ける。これでカンベンしてもらう。

 封筒には「陽大にも読んで欲しい」とさりげなく書く。何時か花南も陽大も

読む。その時が待ち遠しい。

 美子は一刻も早く読んで欲しかったのだ。

 我慢できなくなった。

 だったら今から中央図書館に行く。花南は今日はお休み。必ず図書館で勉強

している。花南の勉強を少しぐらい邪魔しても許してもらう。

 何せ力一杯に書いたのはこれが初めて。

 図書館に陽大は居ない。今日は水曜日。私も学校に居る。自主下校して図書

館に行く。それがイイ。『地球温暖化』は花南の感想を聞いてから考える。


 美子が図書館に着くと花南は一Fロビーの椅子に座ってサンドウィッチ。

 横にはお茶が入ったステンレスボトル。

…そうか。もうお昼なんだ…

 美子が見慣れた光景。

「あら。美子。学校は…。サンド食べる…」

 花南の反応も何時もと同じ。

「ありがとう。いただく。学校はサボッた」

「何か在ったんだ」

「ジィとして居られなくなって。これを読んで欲しくってチャリを飛ばした」

 美子は借りていた日本史と世界史をリュックから取り出し、『今、香港が騒

がしい』の書き込みの処に貼り付けた封筒を花南に差し出した。

「ここに『花南。私も考えてみた』と書いてしまった。修正テープで消すね」

「陽大にも読んで欲しいんだ。だったら直接渡せばイイのに」

「そう思ったりもしたんだけれど、やっぱ、花南からが筋と思ってさ」

「ふ~ん。そう。『今、香港が騒がしい』はわたしも気になっていたんだ」

「あんた。書き込みに眼を通していたんだ」

「まだ読んでいないのが三つ四つ在る。西南戦争は長くて力が要りそうだった

から後回し。やっぱ。気になるもの。美子が気になったのと同じ。考えるのは

教科書をやっつけてからと思っても陽大の書き込みは教科書の一部だって気づ

いたんだ。それも教科書には書かれていない、今の、現実の課題、が組み込ま

れている。だったら教科書よりも大切って。それでさ。教科書の進み具合が一

気に遅くなった。でも。まあ。イイかって…」

 花南が封筒からプリントを取り出し読み始めた。

 途中でお茶をグィと飲んだ。

 美子は固唾を呑んで見守った。時間が停まっていた。

 花南がプリントを膝の上に置き、何を発するか考えているようだった。

「良い。『香港の今に私たちが私たちのままで…』の設定が良い。わたしもボ

ンヤリと考えていたんだ。考えると教科書が進まないから美子のように集中で

きなかった。中国は恐いが伝わってきた。私たちはどうするのかが美子のテー

マ。これは美子の全力投球。ジィとして居られなくなったのは、よ~く、分か                                

る。あんた。本当にオックスフォードに行こうと考えているんじゃない…」

「うん。私。東大には行かない。みんなと離れるのはイヤだから。行くならオ

ックスフォードに決めた。大輔や健太と遊びに来て。陽大にも伝えて」

 美子は花南から心を覗かれた。

 瞳を花南にジィ~と見つめられた。

「美子。頭を使い過ぎている。ほどほどにしないと壊れてしまう。このレポー

トは旗丸。でもオックスフォードは駄目。あんた。香港に住んでいる訳では無

いでしょう。自分の頭を大切にしないと支離滅裂が住み着いてしまうぞ」

 美子の異常に気付いたのは花南だった。

 花南にそう言われても美子からオックスフォードが消えなかった。 

 中一の時に誓った…花南に恥じない女になる…が顔をのぞかせた。

 中学も登校拒否した花南に恥じないのはオックスフォードだった。

 花南の「旗丸」は「ヤッタ」と叫び出したくなるほど嬉しかった。

 美子は花南の評価に勢いづいた。

…私でも書けるんだ…

『西南戦争』を読み、香港を書き上げた、美子に自信と余裕が生まれた。

 興奮し、夢中になった、心が静かになった。

…早く陽大にも読んでもらいたいな。『西南戦争』の感想を伝えたいし…



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