2022/03/15 18:00

こんにちは。
ゲームさんぽ制作チーム(白夜書房の佐藤)です。

発送作業を終え、なぜか背中が筋肉痛の中、編集者の仕事第3回をお届けします。
前回は(2)原稿が上がるまでをお話ししました。なんだか長くなってしまったので、今回はサクサクとコンパクトにいきましょう。

【本が誕生するまで】
(1)企画立案
(2)原稿の執筆や取材
(3)デザイン
(4)入稿
(5)校正
(6)校了
(7)印刷、製本 

(3)デザインでは、表紙や本文のレイアウトをデザイナーさんにお願いします。ここでもコミュニケーションは重要です。フワッとした発注をすると、フワッとした成果物が上がってしまうからです。これは十中八九、編集者の責任です。挙句のはてには、フワッと発注したせいでどこを修正依頼していいかわからず、「なんか違うんすよねー、違うパターン見れます?」と言ってしまう始末。

私はその昔、デザイナーさんにこれをやって叱られたことがあります。表紙案を見て「なんかちがうなー」と思った私は、「このモチーフ変えられます?」「このケイ線、もうちょっと動かせないすか?」「ここに色入れるといいと思うんすよ」と思いつくままに修正を依頼。そして何度目かの電話で、「デザインは全体のバランスを見て考えているんだから、こまかい部分だけいじってもよくならないんですよ」と言わせてしまったのでした(それも深夜にね)。本の方向性やターゲットなど、しっかり伝えることが大事。これはデザインに限りませんね。

ゲームさんぽ本はいかがでしょうか。ゲームさんぽらしさも多分にありながら、1冊の本としてとてもかっこいい仕上がりになっていると思います。書店でも存在感がすごそう!

さて、デザインが上がったら、(4)入稿です。入稿という言葉は今では幅広い意味で使われていますが、ここでは編集者がデザイナーさんから届いたアップデータを印刷所(製版所)に渡すという意味で使います。印刷所(製版所)はそのレイアウトデータをもとに試し刷りし、校正紙(ゲラ)を編集者に渡す(出稿)。編集者はそのゲラで(5)校正作業をします(※)。

※ゲームさんぽ本の校正は製版所とやりとりしました。印刷用のデータを作るのが製版所、それを印刷するのが印刷所です。製版、印刷をかねる会社もたくさんあります。

校正ではレイアウトのズレがないか、誤字脱字はないか、赤字は直っているかなどをチェックしたり、著者や専門家の皆様の赤字を転記したりします。校正は何度も何度もゲラを読む、非常に時間のかかる工程です。それこそ朝から晩までデスクで原稿とにらめっこする日々が続きます。普段はApple Watchの忠実なしもべである私も、校正期間中ばかりは「スタンドの時間です! 立ち上がって1分間ほど動きましょう」という指示を無視するほど。

※これはゲラ。ここに赤字を入れていきます

校正は一度のやりとりで終わることはありません。製版所から最初に出稿したものを初稿、編集者が赤字を入れて戻し、その赤字を修正して再度出稿したものを「再校」、それ以降、「三校」「四校」と続き、校了直前に念のために校正する「念校」というものもあります。こうして校了日に向けてゲラの出し入れをしていきます。

※修正は赤字、説明や指示は青や鉛筆で入れます。これは面付といって、正しいページ順になるようにページを折る、付け合わせたもの

そのため、校了日が迫るにつれて製版所の営業さんとのやりとりも増加します。製版所でデータを直すのは現場のオペレーターさん。営業さんは私とオペレーターさんの間に入る、連絡係のようなポジションです。

校了日も差し迫っていた2月22日、そんな製版所の営業さんとの通話履歴がこちら。

ひんぱんに通話をしている(着信がある) のがわかりますね。電話口では「佐藤さん……ハァ……この赤字読めない……」「この鉛筆書き何ですか?」「差し替え画像入ってないですよ!」「24日下版(≒校了)ですよね?」「(私が別件で外出すると聞いて)その用事、明日じゃダメなんですか?」「何時になるかわかりませんけど、今日中に出稿しますよ……」といった言葉のほか、あまりにも驚いた営業さんにタメ口で聞き返されることもありました。

普段は物腰がやわらかく、仕事もていねい、迅速に対応してくださる神のような方でも校了間際は追い込まれてしまう。同時期には、印刷所の営業さんの口からもポロッとタメ口がこぼれました。やはり切羽詰まった状況でさらに追い討ちをかけられると、人は素が出てしまうものなのかもしれません(他人事のように言っていますが、それを引き出したのは私なのでとても反省してます)。

ちなみに、「今日中」という言葉。これはとても幅のある言葉として知られています。一般的にはその日の営業時間内(たとえば17時とか)を指しますよね。ところが、出版業界では「翌日、相手が出社するまで、働き始めるまで(たとえば午前9時とか)」を言います。私も例にもれず、製版所の営業さんから「初稿はいつまでに戻ります?」と聞かれたときには、「今日中にはなんとか」と答えたものです。1日って長いですね。不思議!

そんな死力を尽くした校正期間を経て、ゲームさんぽ本は2月24日に無事に校了(校了という言葉は「直しがありませんので、このまま進めてください」という意味で、そのほか「数カ所の直しがあるけど、修正と確認はお任せします」という責了もあります)。校了後は編集者の手を離れて印刷に回り、3月14日に白夜書房に搬入され、その日のうちに発送。みなさまの元へ旅立ったのでした。

枝葉末節をバサバサ切ったつもりが、今回も長くなってしまいました。というのも、現在の時刻は17時55分。この原稿は5分後には配信しなければなりません。第三者の目を通しているヒマはないのです。「ちょっと長くない?」「ここ意味が通りづらい」「この段落は丸ごとカット」という指摘があってこそ、原稿のクオリティーは上がるもの。そんなこともなく、私が書いたままに、この原稿は配信されます。やはり読者視点を持った編集者って必要な存在ですね! そんなマッチポンプをかまして今回はここまで。次回こそ短く書きます。