「さらに断られる」で判明した課題「組み立ての更なる簡易化」を行うにしても、もはや画期的な進捗は望めない。
あくまで息子の場合だが、当初は1つ組み立てるために2時間以上かかっていたところを、30分まで縮めた設計なのだ。
差し込みの形状や長さ、組み立てる時に指を入れる場所など、とにかく少しでも「難」を感じるポイントを洗い出しては微妙な修正を繰り返す、まるでスプーンで雪原をラッセルするような作業を続けていた。
同時に、相変わらず「店頭」へのアクセス手段はまるで持ち合わせていなかった。
そろそろ一人では手詰まり感もあり、「進め方」について友人に相談したところ、会話の最中に、マスコミに相談してみれば、何かうまい手を持っているかもしれないという言葉が出た
うん。
私はマスコミ業界のことは紙や布より知らないど素人だが、そのせいだろう、確かに何かうまい手をご存知そうな感じがする。
人を探す先と言えば相変わらずバーしか知らぬ私は、いつもとは別の店に行った。
前に、そこで飲んでいた人の中に、マスコミの人らしき人がおられたような気がする。
マスターに事情を話すと、自分のバンド仲間がそうだと言い、いきなり、その翌日にご紹介いただけることになった。バーのマスターとは誠に異能だ。
テレビ番組の企画・制作をなさっているその方は、確かにうまい手を持っていた。
このプロジェクトの問題の一つは、私が卸業者でも雑貨の営業でもなく、特に何かの実績を持つわけでもない、どこの馬の骨とも知れぬただのおっさんであることだ。つまり信用がない。
何の実績も肩書も経験も持たぬおっさんが、いきなり紙細工を手に店先に表れて、これを置いてほしいのですが…と言ったとして、そんな怪しい話をどれだけ聞いてもらえることか。それが理由で、私は、ただ店先に行くだけのことができないのだ。
その打開策がクラウド・ファンディングだと言う。
いや、しかし、私は店頭で売りたい。
モニター上で売れても、息子たちにはわからないと言うと、考え方が違うと言う。
クラウド・ファンディングを、知名度と実績を得るために使うのだと言う。
ここで言う実績とは、「売れたこと」と「量産できること」だ。
店舗にとって量産できることは重要なポイントで、ただの個人のおっさんがそこで信頼を得たいなら、実際にやってみせれば良い。とは言え、個人でやっているのだから量産は資金面が大問題だ。そこでクラウド・ファンディングだ。
(彼が言うに)この夢は風変りだ。だからちゃんと伝われば支援が見込める。
そして支援された=それらがちゃんと売れたのなら、それは店舗にとって仕入れるかどうかの判断材料になるだろう。
私は、このアイデアに飛びついた。