ジビエ工房茂原からの現場レポート第3回です。
前回、厳しい衛生管理についてお話をしました。
今回、ライオンやハイエナたちに食べてもらう為にどのような対策が必要か千葉市動物公園と行った検討についてお話しします。
人間用の食肉加工の管理と一番異なるのは、生食だということです。
我々人間はイノシシを焼いたり煮たりと必ず熱を通して食べます。
よく「豚肉はよく火を通して食べて」といいますが、寄生虫や細菌、ウィルスなどが付着している可能性があり、生焼けで食べると食中毒の危険があります。イノシシも一緒だそうです。
この中でも特にE型肝炎ウィルスが動物たちに感染するリスクがあるということがわかりました。
焼くなり煮るなりと熱を通せば良いのですが、それでは今回の「骨や皮もついた生肉を」といった屠体給餌という目的は果たせません。
そこで「低温殺菌」という手法を行います。
63℃という極めて低い温度で長時間をかけて殺菌をする手法で、タンパク質の熱での変性を極力抑えて生感を残すことができます。
因みに「低温殺菌牛乳」というのも同じ手法で、高温殺菌にくらべ保存日数は短くなりますが、タンパク質の変性が少ないので牛乳本来の風味が楽しめるといわれています。
イノシシ肉を真空パックして湯煎にかけて、中心温度が63℃に達してから30分間加熱を続けます。これによりE型肝炎ウィルスは死滅します。
前回、人用の加工の衛生管理として、E型肝炎ウィルスのPCR検査を実施しているといいましたが、この屠体給餌プロジェクトの過程からリスク対策として人用にも検査実施を行うこととしました。一方で生食としてのライオンたちに屠体給餌用に提供するためには、さらなる未知のウィルスのリスクも想定されることからE型肝炎ウィルスのPCR検査だけに頼らず、低温殺菌を実施することとしたのです。
ですので、人用のイノシシ肉よりもさらなる衛生管理が施された肉がライオン、ハイエナに提供されることとなっています
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3回にわたり、ジビエ工房茂原の活動についてとっても簡単なご説明をさせていただきました。
本当は人とイノシシの平和な共存ができれば一番良いのですが、現在はそれがかなわない現状があります。やむなく「駆除」ということになってしまったイノシシたちが「廃棄」されるしかない現状を変化させたいと思っています。
今回、このクラウドファンディングの呼びかけを通し、初めて野生のイノシシがおかれた現状に触れられた方も多いと思います。
このクラウドファンディング後に予定されている千葉市動物公園でのイベントなどでまた詳しくお話をさせていただく機会もあると思いますので、またその時にお会いしましょう。
ありがとうございました。