「おいしいミニ炊き出しブック」出版プロジェクトにライターとして携わっている山本詩野です。私は、正田醤油さんの「みらいへのバトン」という、食がつなぐ未来をテーマにした連載をしており、益城町の満田結子さんと万江英彰さんが活動していたミニ炊き出しの取材をさせていただいたというご縁があります。その記事は、お時間があるときにご一読いただければ幸いです。https://www.bunyemongura.jp/oishii-baton/mirai/008
過去にいくつもの震災がありましたが、私は、体験された方々の声を自分事として考えることがなかなかできず、焦燥感ばかりが募っていました。
でも、満田さんたちのミニ炊き出しの発想を聞いたとき、小さなことからコツコツとじゃないですが、被災時に、日常生活のことがそのまま役立ったら無意味な心配がなくなるのではという考えがおきました。それが、いま私が活動している「減災ガールズ」の始まりです。
昨年、私が住む地元の3マンションで連携し、防災イベントが開催されたとき、「ご近所ママさんたちで、芋煮でもやってみない?」と頼まれましたが、「こちらが作って提供して終わり」ではなく、もっと参加者がその場で知恵を出し合い、共有できるものにしたいと思い、「ローリングストック料理ワークショップ」を試みました。
ローリングストックとは、普段よく使い、常備している缶詰や乾物を消費期限内に使い、補充して使い、また補充というように循環させることで防災食にも活用する、という考えです。
防災リュックにストックしていた乾パンや保存食が、いつの間にか消費期限がきて、使わずに捨ててしまった――そんな経験が、みなさんもありませんか?
ローリングストックはそのような無駄がなくなるので、エコにも繋がります。そして、何より、被災時には「食べなれた味が、緊張している体と心を休める」。これは、益城町の方を取材して、聞こえた言葉でした。
ローリングストック料理ワークショップでは、少ない水と火でできる水漬けパスタを紹介し、それに伴ってパスタソースを作ってもらいます。
だいたいの家庭にある缶詰(ツナ缶、豆類、.コンビーフ、イワシ缶など)や、乾物(お茶漬けのもと、お好み焼きをした後に残った桜エビや青のり、さきいかなど)をテーブルに置き、参加者がその場で材料を選び、あるものだけで作る即席パスタ。
自分の家は子どもが多い、お年寄りが多いなどそれぞれの家庭環境、シチュエーションを想像しながら調理してもらいます。あるものだけで作りますが、意外なおいしさを発見したり、共有できる情報はいつも新鮮、アイデアが増えていくのが嬉しい。 そして、一般的に売られている防災グッズセットを焦って買うのではなく、「これからはコレを常備しよう」と自分の家に必要なものが明確になります。
こうした「自分事にする訓練」は、被災時の耐久力を養います。
「おいしいミニ炊き出しブック」では、ローリングストック料理ワークショップで出てきた、すぐに役だつ情報も掲載いたします。けっこう、日常のお料理にも大活躍なアイデアがいっぱいですよ。