こんにちは!実行委員の鈴木です。私は、東日本大震災以前から防災・減災に関するワークショップや研究などを行っています。現在は、一般社団法人減災ラボを立ち上げ、その仲間である山本さんから益城町の広安西小学校の方々とご縁をいただきました。熊本にいく度に、満田さんの中華料理屋さん「藍・天 ran・ten」にごはんを食べにいったりし、なにげない会話から被災するということ、生活を復興していくとはどういうことかを教えてもらいました。
今日は、満田さんと広安西小学校の井手校長先生と出会った時のことをご紹介させてください。
私が震災後初めて熊本に行ったのが震災から約1ヶ月後の5月末の頃でした。震災前に仕事でよくいく機会があり、熊本城も登っていたいだけに、その変わり様はショックでした・・・。その時に山本さんのご紹介でお会いしたのが、満田結子さんでした。自然派中華料理屋さんをしていらっしゃるのですが、なんともともとは建築のご出身と聞いて驚きました。勝手ながら、初めてあった時から、気があう、という感じで、震災の時のあんなことやそんなことをお話してくださり、お忙しいのに車で益城町を案内してくださいました。生活している方のお話を聞きながら見る町の様子は、想像を超えていました。
私が日頃から小中学校での防災教育活動をしているという話から、満田さんがぜひ校長先生にあってほしい、と言ってくださり広安西小学校の井手校長先生をお尋ねしました。
こういってはなんですが、広安西小学校は、他の避難所と比べてなんというか、あったかい雰囲気でした。子供の遊び声が聞こえたせいでしょうか・・・しかし、それは後で納得のいくことでした。
井手校長先生から被災直後のお話をお聞きしてびっくりしたのは、危機管理対応力がとても柔軟であり、避難所運営の訓練を積んでこられたのですか?というほどの活動でした。そのエッセンスが「内閣府制度」だと感じました。
広安西小には当時800名の避難者と車避難が200台来たそうです。14日(木)の前震の夜に職員8名ほどが避難者誘導をし、15日(金)の本震から本格的な避難所運営を担い、体育館の他に1年、2年生教室棟、校長室、特別教室を解放したそうです。
井手校長先生の「内閣府制度」とは、避難所でおきる様々な出来事に対応する役割を「大臣・長官」などにあてはめ、できるだけ先生方が活動しやすいよう、適材適所に見極めつつ、誰に何を頼んだかを明確にし、進行管理と適正評価を行う仕組みでした。さらに、名称を大臣や長官とすることで、ユニークさも添えることで先生方の負担感軽減も兼ねていました。
この写真にあるのが、内閣府制度を示したものです。いろいろな役割が付箋に書き出されています。この大判は5、6枚あり、これらの付箋を読み上げるだけでも、避難所で起きた様々な出来事の想像がつきます。ただ、時にはこれは何をする役割なのだろう?という付箋もありました。思わず目にとまったのが「メリー・ポピンズ大臣」と「やきとり大臣」でした。
みなさん、なんの役割をされたと思いますか?その話を聞いてなるほどと納得です。
「メリー・ポピンズ大臣」は、これから梅雨に向かっていく季節、避難者の方々が鬱々とするだろうから、図書室担当の先生に図書室を使って少しでもみんなの気持ちが軽くなるような工夫をしてくれ、ということでした。そこで、先生はお話会やDVD視聴会を企画したそうです。また、「やきとり大臣」は、他の避難所で数が不足するからと断られて大量のやきとりを広安西小で受け入れることになり、その采配を任されたそうです。
これらのことは、実はどこの避難所でも起きうることです。井手校長先生が、先生方と協力して、予想できることから、予想できないことまで臨機応援に対応されている姿が目にうかび、これが本当の避難所運営の現実だと実感しました。
井手先生はおっしゃいました。
「まさか自分の学校が避難所になり、自分が避難所の運営をするなんて思ってもいなかった。」と。それでも、これだけの切り盛りをされたわけです。教育の早期再開と合わせて、少しでも避難してきた人にとってよい環境を提供されようとした姿に頭がさがる思いです。そしてさらに、こうもおっしゃいました。
「避難者と接することが、子供の教育、地元愛にも必要だと考えている。」と。
この言葉を聞いて、この広安西小学校がなぜか他の避難所とは違う感じがしたのかが少しわかったような気がしました。
避難所運営は、被害や地域、状況によって「これが正しい」というものはありませんが、井手校長先生を中心とした広安西小学校からは「誰のための避難所なのか。どんな時であっても子供たちの将来を思い、避難者を思う懐の深さ」を感じました。他にもお伝えしたいお話はたくさんあるのですが、それは本の中で直接井手校長先生に語ってもらいたいと思います。
ぜひ、井手校長先生や広安西小のみなさんたちの活動を、書籍化し未来につないでいきたいと思います。どうぞご支援のほどよろしくお願いいたします。