2022/07/04 17:00

2021年にスタートしたTIMESIBLEプロジェクト。今年も、個性あふれる5人の学生デザイナーがポップアップにて作品を発表します。Designer interviewの第4回は、高度専門士科2年の相澤宏昭さんにお話を伺っていきます。


「ものづくり」に向き合う


___まずは、服作りを学ぼうと思ったきっかけから聞かせてください。文化服装学院に入学したのはなぜですか?


相澤:母親が心からファッションを楽しめる服を作りたいと思ったのがきっかけです。

母は昔からファッションが好きだったようですが、段々とファッションに気を配る活力がなくなっていくのを感じていました。自分が生まれてすぐに父親が脳梗塞で倒れてしまい、ほぼ母子家庭のような環境で育ててもらったことが関係していると思います。そこで、母親のような女性にも気兼ねなくお洒落をしてもらえるような服を作りたいと考えるようになり、文化服装学院へ入学しました。


___では、小さい頃からデザイナーになろうと決めていた?


相澤:実はそんなこともなくて。高校は工業系で、溶接や建築などについて学んでいました。当時は自動車整備やプラモデルの会社に就職したいと思っていましたが、今では考えられないですよね。


ファッションを仕事にしたいと思うようになったのは、高校2年の冬ごろからです。好きな服を着て気分が上がったり、人から褒められて嬉しかったりというファッションの魅力を感じるようになってから、工業系の仕事とはまた少し異なる「生活を豊かにする」ファッションの仕事に興味が湧いてきました。


小さい頃からパソコンやプラモデルが身近にあったり、父親がDIYをしていたりと「ものづくり」をすることが身近な環境で育ちました。今までの人生において「ものづくり」とはずっと関わりを持ってきています。工業系の高校に進学したのもそれが理由ですし、現在も服を作る「ものづくり」を実際に続けていますね。


___高校で学んだことが服作りに活かされていることはあったりしますか?


相澤:直接的に工業からインスパイアされて服を作ることは無いのですが、服を作っていく過程で工業の知識が役に立っているなと感じることはあります。立体物を作るときの工夫に共通点があって、ヒントになったりなどですね。また、表現の幅を広げるのにも役立ちます。極端なことを言えば、服を光らせたり爆発させたりできますからね(笑)


___ポップアップでの爆発だけは勘弁してください(笑)

さて、相澤さんが今まで作ってきた作品について詳しく教えてください。


相澤:文化に入って初めて作ったのは、スカートでした。ミシンをほぼ触ったことのない状態から始めたので、知識もなく難しかったです。

サーキュラースカートを2枚重ねていて、オーバースカートにサスペンダーを2本付けています。サスペンダーが付いていることでオーバースカートを吊り上げることができ、形状を変えると下からラインストーンが見えるギミックになっています。



ブラウスについて


相澤:次に作ったのがブラウスになります。生地はブロードを使い、ミニマルなデザインを心がけています。フロントの部分とセーラーカラーにデザインを集中させています。



リングについて


相澤:学校の活動とは別に、シルバー925を使ってリングも作っています。作っているリングには、キュービックジルコニアのブラックキュービックという黒い宝石を埋め込んでおり、暗いところで輝きます。

星空の美しさをリングで表現したく、このようなデザインを取り入れました。リングだけでなく服のデザインを考えるときも、星空からインスピレーションを受けることがよくあります。



目標は「生きること」


___さて、作品をポップアップで販売するにあたって、どんな服を作りたいと考えていますか?


相澤:着る人にとって「都合のいい関係」となる服を作りたいと考えています。好きな時に着れて、服が着る人から離れていくことはなくて、逆に着る人もどこか手放せないような、そんな関係性です。なので、ポップアップで購入してくれた人には、都合のいい関係で僕の作品を使って欲しいですね。僕の作品は持ち主に従順です(笑)


もっと言えば、例えばケガをして出血した時、止血のために使おうと思ってくれるような服を作れたらいいな、と思っています。本当の意味で日常寄り添っている服って、そんな関係性だと思うんです。


___最後に、将来の目標を教えてください。


相澤:「生きること」です。生きることは作ることでもあって、作ることは生きることでもあるので。やっぱり自分の根底にはものづくりがあるんですよね。


生きることが目標である理由は、双極性障害という持病を抱えていることもあります。鬱状態になる病気で平均寿命も一般の人より短く、一生治りません。持病と付き合っていくしかないんですよね。


これからの人生、さまざまな困難が待ち受けていると思います。まずは、生きること。そして、作ること。この2つを止めることなく、ファッションの世界で走り続けたいですね。