鎌倉教場の「今」をお伝えします。
今回は「流鏑馬式次第」についてです。
今回のクラウドファンディングも残り4日となりました。
令和3年も恒例行事に中止が相次ぎ、当初予定していた12回の行事のうち、実施できたのは5回のみでした。
令和4年も1月の川崎競馬場流鏑馬騎射式は中止となり、2月の小田原梅まつり流鏑馬神事は完全に廃止されることになっています。
4月以降の流鏑馬も予断を許さない状況であり、伝統文化の維持継承という点では危機的状況です。
もっとも、皆様の御支援のおかげで、大日本弓馬会は鎌倉教場で稽古を積むことができます。
本番さながらの稽古ができる最高の馬場のおかげで、行事の数は大幅に減ってはいるものの、何とか技量を維持できているのは、まさに鎌倉教場の賜物であると思っています。
鎌倉教場は、このコロナ禍における伝統文化の維持継承に極めて大きな役割を果たしているのです。
クラウドファンディングも残り4日となりました。
皆様のご期待にお応えできるよう、引き続き努力してまいりますので、皆様の温かい御支援・御協力の程よろしくお願いいたします。
ご友人へのお知らせやSNSでのシェアなどもよろしくお願いいたします。
さて、今回の活動報告は、「流鏑馬式次第」についてです。
大日本弓馬会のホームページに詳しく掲載していますが、ページ内の情報量が多いため、なかなかここまで辿り着けない方もいると聞きました。
そのため、この活動報告でも、改めてお伝えしておきたいと思った次第です。
【出陣】
寄せの太鼓(よせのたいこ)を合図に一同勢揃いし、隊列を組んで出陣します。
【鏑矢奉献・願文奏上】(かぶらやほうけん・がんもんそうじょう)
一同昇殿し、奉行は鏑矢を神前に奉献した後、玉串を奉奠(ほうてん)し、天下泰平、五穀豊穣、万民息災の願文を奏上します。
【鳴弦の儀】(めいげんのぎ)
弓の弦の音を鳴らすことで、邪気を祓うとされる儀式です。
11世紀後半、天皇が病に罹られたとき、弓の名手として名高い源八幡太郎義家が弓の弦を三度鳴らし、その病魔を退散させたことが起源といわれています。
大日本弓馬会の流鏑馬では、明治神宮でのみ行われています。
【天長地久の式】(てんちょうちきゅうのしき)
武田流の師範は馬を中央に進め「五行の乗法」を行います。
左に3回、右に2回、馬を乗り回し、中央で馬を止め神前に目礼します。
鏑矢を弓に番え、天と地に対し満月のように弓を引き絞り、「天下泰平、五穀豊穣、万民息災」を祈念します。
【行軍】
一同は隊列を組んで馬場を行軍します。
行軍中は序の太鼓(じょのたいこ)を打ちます。
【素馳】(すばせ)
奉行は記録所(きろくどころ)に昇り、諸役は配置につきます。
奉行は破の太鼓(はのたいこ)を打ち鳴らし、射手は弓を射ずに全速力で馬場を走り抜ける素馳を行います。
【奉射】(ほうしゃ)
射手は一の組と二の組などに分かれ奉射を行います。
射手は馬を全速力で走らせながら一の的から順に、弓に矢を番えては放ち馬場を駆け抜けます。
奉射は各組とも2回ずつ行われます。
【競射】(きょうしゃ)
奉射の成績上位者が競射を行います。
的は小さな土器的に替わり、的中すると中の小さな五色の紙が舞い上がります。
競射により最多的中者が決められます。
【凱陣の式】(がいじんのしき)
止の太鼓(とめのたいこ)により競射を終え、凱陣の式(がいじんのしき)へと移ります。
最多的中者は的を持って中央に進み出で跪座(きざ)します。
奉行または検分役は、扇を開き骨の間より的を検分します。
その後、太鼓方は陣太鼓を三打し、一同勝鬨(かちどき)を上げます。
【直会】(なおらい)
凱陣の式後に直会が行われ、御神酒を頂戴します。
直会後、陣払いし、一切の儀式を終えます。
このとおり流鏑馬は厳格な式次第に則って行われます。
流鏑馬は全体を通して、天下泰平・五穀豊穣・万民息災を祈念して行われる神事ですが、中でも特に強くこれらを祈念する象徴的な儀式が「天長地久の式」といえるでしょう。
「天長地久」とは天地が永久であるように、物事が終わることなくいつまでも続くこと表す言葉で、平和と幸せが永遠に続くようにという願いが込められています。
確かに、迫力ある騎射のシーンが流鏑馬の代表的なイメージではありますが、世の中の平和と人々の幸せを祈念して行われる「流鏑馬」の中でも、騎射が始まる前に特に強くこれらを祈念して行われる「天長地久の式」は、騎射に優るとも劣らない見所のひとつです。
これは日本人だけではなく外国でも同じようです。
例えば、トルコ共和国で流鏑馬を行った際は、時間と会場の都合により、式次第を全て網羅することはできなかったのですが、この「天長地久の式」だけは確実に実施するよう主催者側と交渉し、実現させました。
そして、会場がガヤガヤして隣の人の声すら聞こえにくいような状況の中、いざ「天長地久の式」を執り行ったところ、一瞬にして会場が静まり返りました。
驚く程の静寂です。
この瞬間程、流鏑馬の射手として誇らしくも清らかな気持ちになったことはないかもしれません。
皆様も是非「天長地久の式」に御注目ください。
2021年12月15日(水)まで
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