2021/08/14 11:38

宇野です。『モノノメ』創刊号の編集作業も大詰めです。このクラファンも、残り1週間を切って、ネクストゴールも設定して走り切ろうと思います。進捗としてはいま、ひらすら上がってくる原稿とデザイン(特に後者)をチェックして、デザイナーや印刷会社の担当さんと話し合いながら具体的に「紙に印刷するもの」のクオリティを追求している段階です。

そして今日は、その中でも一押しというか、今回の誌面でいちばん気に入っているデザインをちょこっとだけ紹介します。それは、この進捗報告の初回で紹介した高山都さんのランニングフォトエッセイです。

僕はランニングの魅力のひとつに、普段住んでいる街の風景を普段とは違う角度から見ることができるところにあると思っています。人に会いに行くとか、買い物に行くとか、「目的」があると人間はそこに関心が向いてしまって、実は風景というものをあまり高い解像度で捉えなくなる。でも、ランニングでは「走る」ことのものが目的になっている。その結果として、普段よりもかなり高い解像度で街を捉えることになる。僕は散歩も好きなのだけど、歩いているときは風景が変化する速度が遅すぎて、逆にあまり意識が向かない(そのぶん、目の前にあるもののディティールに注意が向く)。自分の足で走ることが速すぎず、遅すぎず風景に向き合うのに最適なアプローチだと僕は思っています。

この企画はそんなランナーの視線で街を捉え直すということをやってみたい、と考えてはじめました。『PLANETS vol.10』からコラボレーションしているランニング誌『走るひと』の上田唯人さんに加わってもらい、ミーティングを重ねて、高山都さんを誘い、そしてカメラマンの久富健太郎さんにお願いすることにして、梅雨の終わりころのに何度も、何度も空模様を理由にリスケジュールして、そして逆にちょっと暑すぎるんじゃないかという晴れた日に撮影したのがこの写真です。

執筆と撮影のコンセプトをしっかり共有しないといけないと思って、撮影の前後、高山さんと久富さんには、ここに書いたようなことを僕はひらすら話しました。たぶん、ちょっとめんどくさい感じが出ていたと思うのだけれど、ふたりともとても熱心に聴いてくれました。上田さんが時々、いいトスを上げてくれて、とても助かりました。そして、強い日差しの中走りに出た高山さんを、僕と上田さん、そして久富さんの3人が追いかけながら撮影しました。

気がついたら全員汗だくで、半分溶けたようになっていたけれど、いい撮影でした。チームで仕事をするというのはこういうことなんだな、という充実感があった、そんな時間でした。久富さんの写真を、上田さんがディレクションし、アートディレクターの館森則之さんが試行錯誤して作り上げているのがこのページで、高山さんの息遣と視線を共有してもらえるものに仕上がっていっている、という手応えを感じています。これまで、僕が作ってきたものとは少し違った世界を見せられたら、このページで「走る」ことで得られる視点のことを意識してもらえらたら……なんてことを思っています。 

『モノノメ』創刊に向けたクラファンは8月20日までです。支援はこちらから。