これから制作する映画の脚本原案である『狂気山脈 ~邪神の山嶺~』というTRPGシナリオは、元々「登山家たちのクトゥルフ神話TRPG」という動画を撮るために作ったものでした。登山家たちのクトゥルフ神話TRPGニコニコ動画にこのリプレイ動画シリーズを投稿しはじめたのが2017年3月24日。もう5年近く前のことになります。「山地直送卓」なんてタグで呼んでいたこの動画シリーズの投稿が、僕の今の活動の起点でもありました。リプレイセッションのプレイヤーのひとりでもあった本多たかしくんがイラストを担当してくれて、二人三脚で作ったこの動画シリーズが、今回のプロジェクトの大本の起源です。今ではめちゃめちゃ愛されるキャラクターになったNPCたち……K2、穂高梓、そしてコージーのキャラクターデザインも、大本の原案は本多たかしくんです。今でこそ色んな方に、TRPG用イラストとして、あるいはファンアートとして沢山のイラストが描かれ、更に今度は海島千本先生の手でアニメ用のキャラデザが起こされることになる彼らですが、ここまで愛されるキャラになった一因に、本多たかしくんの素晴らしいデザインと魅力的な動画イラストの数々があったことは疑いようがありません。登山家たちのクトゥルフ神話TRPG 8合目彼と作った、そんな想い入れが深いこの動画シリーズは、全10話構成のうち第8話にて「狂気山脈人類初登頂」のシーンを迎えます。その投稿日が、2017年12月1日。元々、このセッションのたった1回のために作ったシナリオ。テストプレイすらしていません。世界で初めてこのTRPGシナリオを遊んだのは、山地直送卓のメンバーです。TRPGは同じシナリオをたくさんの方が遊びます。そして、それぞれのセッションにおいて、そのセッションの中での事実だけが参加者たちにとっての「正史」になります。だから。多くの皆さんにとって、狂気山脈世界初登頂の日は12月1日などではないでしょう。それが正解。今日という日は、TRPGシナリオ「狂気山脈 ~邪神の山嶺~」という作品にとってはなんの記念日でもない日なのです。だから。12月1日は僕にとって、あるいは数少ない当事者たちにとってだけ、特別な日なのです。皆さんにはあまり関係のないお話です。僕にとって、どうしたって「狂気山脈人類初登頂」の日は12月1日になってしまうという、ただそれだけのお話です。僕にとって、この12月1日という日がとても大事な記念日であるのと同じように、みなさんも、みなさんの登頂記念日(あるいは敗退記念日かもしれませんが)を大事にしてください。原作者の僕がどう思おうと、それぞれの体験が一番大事です。* * *そして、これから作る映画『狂気山脈』はTRPGシナリオですら無いわけですから、これまでのどのTRPGセッションとも異なる物語、異なる歴史が描かれていくでしょう。原作ありきとはいえ、映画を作るのです。映画ならでは、映画でしかできない表現や物語であるべきですから。新世界最高峰初登頂(できるのかな?)の記念日も、12月1日じゃないでしょう、きっと。とはいえ……「僕」が幹事となって作る作品です。やっぱり若干のエゴが入ってしまうことは、ええ、お許しください。いいえ、若干じゃないでしょう。作品ってどうしてもエゴの塊になっちゃいます。「山地直送卓」の焼き直しをするつもりは全くありませんが、とはいえあの原体験を白紙に戻してモノづくりをできるはずもない。絶対に、面影がチラつく作品になってしまうと思います。(主人公の造形や、名前が漢字2文字姓+ひらがな3文字名なところとか……ねぇ。勘のいい人ならとっくに気づいていた事でしょう)そして、その後に僕自身が体験した配信セッション、視聴者として視聴した動画や配信、派生した舞台、ファンアート、二次創作……エトセトラ、エトセトラ。絶対に、なにかしらの影響を受けております。完全に0から作品を作ることなんて、できやしないのです。たぶん。皆さんの応援を、ご支援を……もちろん皆さんのご期待に応えるための力に変えさせていただきます。と同時に、どうしても。僕の理想を、イメージを、メッセージを……そんなエゴまみれの私小説みたいな作品に使わせていただくことを、どうかお許し下さい。僕の見る夢が、ちゃんと皆さんの見る夢にもなれるよう、死力を尽くすつもりです。そんなエゴの話がしたくて、今日はこんなコラムを投稿しました。映画版『狂気山脈』のタイトル、発表します(ロゴデザイン:木緒なち様)ネイキッド(Naked)=むき出しの、裸の、の意。守られたり、担保になるものが何もない様。極高所環境の、草木も生えず強風吹きさらしの、人間が自然の脅威に晒される環境。狂気山脈の、高所で雪がないという特異な地形の様子。極限の登山中にむき出しになる人間性のドラマ。何にも守られていない、誰も成功を保証してくれない中での挑戦。映画『狂気山脈 ネイキッド・ピーク』で描くのは、そんな物語です。





