皆様からご支援いただき実現した「FOOD CAMPUS TANGO」。その第1期プログラムが終了しましたのでこちらでその様子をご報告させていただきます。改めて、多くのご支援ありがとうございました。
コロナ禍のため、当初予定しておりました日程・内容から一部変更しましたが、目標としていた缶詰の完成も無事実現しました。
【実際に実施したカリキュラム】
<2021年12月>
(1)イントロダクション・開校式(オンライン)
(2)缶詰開発講座①(オンライン)
<2022年1月>
(3)生産現場フィールドワーク(現地)
(4)缶詰開発講座②(オンライン)
<2月>
(5)考案商品検討会(オンライン)
(6)缶詰試作 ※コロナ禍のため受講生の参加はなし
<3月>
(7)試食会(オンライン)
<4月>
(8)商品発表会@シェア食 (オンライン)
1.イントロダクション・開校式(オンライン)
まずはイントロダクションということで、お互いの自己紹介や受講生の方のヒアリングを行いました。なぜこのプログラムに参加したのか、作りたい商品のイメージなどを聞いていきます。
記念すべき第1期の受講生になっていただいたのは藤本さん。tangobarのメンバーもよく知っており、クラウドファンディングにてプログラムの参加権購入という形でご支援いただきました。
藤本さんは京都、丹後、福岡、そして地元の広島など多くの地域を活動拠点としながら、移住支援など地域と人を結びつけるお仕事をされています。活動拠点としている各地域を、食という面でもつなぎ、より活動の幅を広げていきたいという思いで今回参加していただきました。
当初、藤本さんが作ろうとしていた缶詰のイメージがこちらです。
・食材のコラボを通して、地域間を結びつけたい
・地元広島の保命酒の使いたい
・ちゃんと美味しい缶詰を作りたい
・食べた人が地域に興味を持つような缶詰を作りたい
この後、プログラムを通してこのイメージがどう具現化されていったのでしょうか。プログラムを追っていきながら見ていきたいと思います。
2.生産現場フィールドワーク
生産現場を訪ね生産者の方と直接お話しすることで、生産現場での課題、加工食材の見つけ方などを学びます。また異なる業種の生産現場を訪ねることで、地域の生産現場の多様性を感じてもらうことも意図しています。
今回は2日間かけてこちらの4人の生産者の方を訪ねました。
・久美浜カキ漁師 豊島さん(漁業)
・ミルク工房そら 平林さん(酪農)
・てんとうむしばたけ 梅本さん(農業)
・日本海牧場 前田さん(畜産)
①久美浜カキ漁師 豊島さん(漁業)
最初に訪ねたのは久美浜湾で牡蠣やトリガイを養殖している豊島敦史さん。「久美浜湾の牡蠣養殖を後世まで残したい」という想いのもと、新しい手法の養殖に挑戦したり、海外の企業との連携も模索するチャレンジングな漁師さんです。
豊島さんの所では実際に海に出て、牡蠣を養殖するイカダを見学したり、久美浜の環境の現状を知るため浅瀬の見学などをさせていただきました。
久美浜湾は塩分濃度が低いので、塩味が抑えられ本来の旨みが感じられやすい牡蠣に育つそう。その味を求めて毎年注文をいただくお客さんもいらっしゃいます。一方で、温暖化による牡蠣の生育時期のズレや後継者不足などといった今抱えている課題のお話もしていただきました。
②ミルク工房そら 平林さん(酪農)
次に訪ねたのは、同じ久美浜にあるミルク工房そらの平林学さん。ここでは牧場と同じ敷地にレストランやショップがあり、こちらの牛乳で作ったジェラートや、チーズをのせたピザを楽しむことができます。またこちらで育てている牛も、一般的なホルスタインではなくジャージーという珍しい種類の牛。ジャージー牛から搾られた牛乳はとても濃厚な味わいが特徴です。
ミルク工房そらさんではジャージー牛の牛舎を案内していただき、搾乳の説明などをしていただきました。
その後は、モッツァレラチーズ作りの体験。固まった牛乳を練っていきながら作っていきます。できたモッツァレラチーズはフレッシュながらも、濃厚なミルクを感じる味わいで非常に美味しかったです。平林さんによると、こういったチーズ作りなどの体験も今後増やしていき、牛乳の楽しみ方や酪農のかっこよさを伝えていきたいとのことでした。
③てんとうむしばたけ 梅本さん(農業)
2日目は朝からオーガニック野菜をつくる梅本さんの畑へ。
こちらのてんとうむしばたけでは、年間約150種類の野菜をすべて有機栽培されています。多くの人が健康でいられるように「オーガニックスタンダード」を掲げる梅本さんのもとには、有機農業を志す若手の研修生が全国から集まっています。
てんとうむしばたけさんではまず収穫のお手伝いをさせていただきました。研修生の方と野菜の旬や美味しい食べ方などお聞きしながら、野菜を一つ一つ手作業で収穫していきます。
その後は堆肥場で梅本さんの土づくりの話をお聞きしました。ここでは近隣の山や川から落ち葉や枯草などを集めて腐らせ、一から土を作っています。市販の肥料などを使わないのは、野菜を自然に近い状態で育てるため。肥料などを使うと本来の自然より過剰な栄養となってしまい、野菜がたくましく育たないとのことでした。また一から作った土には微生物が多く含まれていて、その微生物たちが野菜と共存しながら生育を助けてくれたりするそうです。自然の摂理に沿って行う農業の面白さを感じました。
④日本海牧場 前田さん(畜産)
最後に訪れたのは日本海牧場さん。ここでは赤身肉の旨味が濃い、京都生まれ京都育ちの「京たんくろ和牛」を飼育されています。自然の中で循環した安全で安心できる「食」を届けたいという思いから、母牛を放牧し、飼料の5割以上を地元の飼料米や醤油粕を使うなど牛が健康で安心して無理なく育っていけるような飼育方法を実践されています。
まずは「うちの肉を食べてみて」ということで、日本海牧場さんの運営するレストラン「山と海」にて牛肉のフルコースを味わわせていただきました。
その後は牛を飼育している牛舎に向かい、担当の前田さんから牛の流通や自家配合の飼料についてお話をお聞きしました。特に飼料については、使用している牧草などが急に値上がりし、牛が売れても利益を出すのが難しくなっているとのこと。そのため、牧草の自給や新たな加工品の開発など、より自社の牛肉の価値を高めていく取り組みをしていかなければならないとおっしゃっていました。
<フィールドワークを通じての藤本さんの感想>
「実際に生産者の方の日常に触れたり、食材を作って届けるというストーリーに触れられたのがすごく良かったです。今までも収穫体験などはあったんですが、あくまで食べる側としての意識だったので、今回はそこを自分で商品を作るという意識で生産者の方にお会いできたのが大きかったと思います。」
3.缶詰開発講座・考案商品検討会
フィールドワークの前後で、缶詰の商品特性、加工法、地域での販売方法などを学ぶ講座をオンラインで実施しました。今回は受講生が藤本さん1名だったため、上記のことを学びながら藤本さんの作りたい商品のイメージを具体化していくような内容となりました。
丹後でのフィールドワークを経て、藤本さんが作りたいと思ったのは「くわい」を使った缶詰。くわいとは、ほんのりとした甘味とホクホクとした食感が特徴のイモのような食材。藤本さんの地元である広島県福山市が生産量日本一を誇っています。おせち料理の食材としては知られているのですが、正月以外ではあまり食べられていないことから、もっとくわいの美味しさを知ってほしいと缶詰の食材にすることを決めました。
そしてくわいがでんぷん質が多く、うま味も強いことから、ジビエを合わせることに。ジビエは上世屋(京都府宮津市)という地域で「上世屋獣肉店」を営まれている小山さんの鹿肉を使わせていただきました。こうして商品の原型ができていきます。
4. 缶詰の試作、完成へ
当初は缶詰の試作を現地にて一緒に取り組む予定をしておりましたが、新型コロナの感染が再び増え始めていた時期であったため断念。出来上がった試作品を藤本さんの元へ送り、味見などをしながら缶詰のレシピや仕様を決めていきました。
そして出来上がった商品がこちら「くわいと鹿肉のレモンアヒージョ(旅するごちそう缶)」。ホクホクのくわいと旨味のある鹿肉が楽しめるアヒージョ。レモンが効いているので、アヒージョながらさっぱりと食べられます。
4月には商品のお披露目も兼ねて、tangobarのオンラインイベント「シェア食」に出演いただきました。
▼シェア食当日の様子はこちら▼
https://www.facebook.com/tangobar.kyoto/videos/754767165906158
今回食材を使わせてもらった、くわい農家の喜多村さん(広島 福山市)、猟師の小山さん(京都 宮津市)にもご出演いただき、当初描いていた「各地域の生産者さんを繋げる」というのも一つ形になったのではないでしょうか。
ちなみに7月22日(金)には、藤本さんが京丹後市(京都)で今回開発した缶詰を含め、自分と関係の深い地域の商品やスポットを紹介するイベントを開催されます。気になる方はぜひ。
▼ひと旅酒場 in 丹後▼
5. 今後へ向けて
皆さんからご支援いただき実現できたFOOD CAMPUS TANGO。コロナ禍での実施だったこともあり、自分達が思い描いたようにはできませんでしたが、なんとか目標としていた「受講生の考えた商品の完成」までたどり着くことができました。改めて御礼申し上げます。今回はtangobarとしても初めての長期プログラムであったため、一つ一つ手探りでプログラムを組み立てていきました。収支面や多人数の場合の対応など、今回実施したことで見えてきた課題もあり、今後に向けて非常に得るものが大きかった企画となりました。
丹後という地域の、食の学び場としての可能性を広げていくため、私達は今後も様々な取り組みを行っていきたいと考えております。ぜひご支援いただいた皆様とも、丹後の食を通して繋がっていけたらと思っておりますので、今後もどうぞよろしくお願い致します!