1月31日発売の「サクッと起業してサクッと売却する」無料一部公開第二回です。 こちらの連載いかがでしょうか。 このプロジェクトを支援されてくださっている方、そしてご興味ある方の判断材料になれば幸いです。 PART1 考え方編第一章 連続的起業論〇29歳までに1億円のキャッシュを手に入れろ起業して間もないころ、僕は六本木のあるビルで、とある著名かつ高齢な投資家の方と雑談をしていた。その投資家は、ふと僕にこう言った。「若くして起業したのなら、20代のうちに1億は作らないと、起業に向いていないということだからなぁ」その投資家は何気なく言った一言だったが、その一言は当時18歳だった僕の心をおおきくざわつかせた。「そうか、20代のうちに1億作れなかったら、自分は起業に向いていないのか」と。それ以来、僕は自分の貯金を毎月月末に数えるようになった。あなたは、自分の貯金を正確に数えたことがあるだろうか?そう、1円単位で正確にだ。実は、お金を正確に数えるのって意外と難しい。クレジットカードの来月引き落とされる分は換算するのかどうか。小銭入れにはいくらの小銭が入っているのか保険などはどう考えればよいのかこの毎月のお金を数える作業は19歳の時に会社を売却して自分の貯金が1億円を超える時まで続いた。僕は、本書を通して、あなたに提案をしたい。「29歳までに1億円作ることを目標にしてみてはどうか?」と。一般的に、貯金が一番多くなる瞬間というのは、定年退職を迎えるときだ。「老後資金の教科書」(ウェブサイト)によると、夫婦世帯では1億円の生活費が必要と書いてある。実際に、ほとんどの人が、人生で最も貯金が多くなるのは、定年退職の際に退職金を受け取るタイミングだろう。その半分の期間、29歳までの間に資産1億円を作ってしまおうという提案だ。定年退職のタイミングで1億円を持っている人はほんのわずかだ。今の時代、定年退職の際の退職金の平均は約2000万円だ。もし、あなたが29歳で1億円を持っているとしたらそれは、どういうことかというと、人よりもお金と時間を多く持っているということだ。僕は、「29歳までに1億円のキャッシュを作ろう」とあなたに真剣に提案したい。お金と時間を人生の早いタイミングで手に入れることは、あなたが考えている以上にあなたを豊かにする。時間が大切だと強調されるようになってきた気はするが、みんな、お金と時間の大切さをまだまだ軽視している。〇会社を売ったら「海賊王」ワンピースという海賊の漫画がある。おそらく日本で知らない人はほとんどいないだろう。モンキーDルフィという青年が、海賊王を目指す漫画だ。全員が海賊王というものを目指していて、仲間になったり戦ったりしながらしのぎを削りあうというのがざっくりとしたストーリーなのだが、実は、その漫画内で、厳密には海賊王とは何なのかが定義されていない。 人によって定義は違うらしい(現時点僕はワンピースを追いかけてないので、もしかして物語内ですでに別の定義があれば恐縮だが)が、主人公のルフィは、「この海で一番自由な奴が海賊王」と言っていた。 現代社会で最も自由な定義は何かといえば、お金と時間がふんだんにあることだ。つまり、お金と時間を両方手に入れているものが「海賊王」というわけだ早いうちに資産を作る。そのためには、起業して会社を売却するのが最もシンプルで確実な方法だ。僕は、なるべく若い間に会社売却をすることを勧めている。当たり前だが、会社売却をすると、時間もお金も両方いっぺんに手に入る。お金も時間もあるなんて状態は、普通の人生を過ごしていたら、定年退職する瞬間くらいしかない。 僕自身、会社を何度も売却したことで、大きな恩恵を受けている。このメリットをあなたにも受け取ってもらいたいのだ。どうやって起業して会社を売却すればよいかとよく聞かれる。もちろん本書ではその話もする。しかし、慌てずに聞いてほしい。「どう」やって起業して会社を売却するかの前に、「なぜ」、あなたは起業して会社を売却する道を選ぶのかということを真剣に考えてみてほしい。正直、起業して成功する方法や体験談はいろんな情報がすでに数多く出回っている。言ってみれば飽和状態だ。そして、どのやり方も、これが絶対に正解だというやり方は存在しない。こと起業においては(何の道でもそうなのかもしれないが)絶対にこれをやればよいみたいなものは存在しない。これをやってはいけないものはあるかもしれないが。 それよりも、「なぜ」そうするのかのほうが大事だ。Howではなく、Whyなのだ。そこがぶれてしまっていては「どう」やったってできるわけがない。少し話がそれてしまうかもしれないが、僕は7年ほど前まで超ヘビースモーカーだった。セブンスター14ミリを1日4箱吸っていた。ある事業が失敗したときに、タバコを止めようと思い、禁煙した。「どう」禁煙しようか悩み、いろんな手法を使ってみた。ニコチンガム、電子たばこ、禁煙外来……。禁煙外来は効果てきめんで、かなり良い線をいったのだが、飲み薬を持ち歩き忘れた瞬間に失敗した。結局自分が禁煙に成功したのはアラン・カーの「禁煙セラピー」という本だった。 その本の大半は、どうやって禁煙するかという話ではなく、なぜそもそもタバコを吸う必要があるのか(否、吸う必要などない)という話だった。 僕はこの本を読んで煙草を一発でやめることが出来た。自分にはタバコが必要ないということが、腹の底から納得できたからだ。「なぜか」を一度しっかり理解すれば、人間忘れることは無い。意味のない数字の羅列や脈絡のない話は次の日にはほとんど忘れてしまっているのが人間の脳みそだが、理屈をしっかりと刻み込んだものは忘れたくても忘れられない。人間の動機付けには、「HOW」より「WHY」が大事だ。「どう」やって起業に成功するかは、一番重要な話ではない。「どう」やるかは100人いれば100通りの方法がある。時代によっても違う。業種によっても異なる。当人の性格や能力によっても、できること、できないこと、やりやすいこと、やりにくいことがある。「どう」よりも、「なぜ」が一番重要だ。 「なぜ」がしっかりしていないと、軸がぶれてしまう。楽して金儲けをしようとしか考えていない起業家は、1度や2度行き止まりにぶつかるとほっぽり出して、自分の人生の中から起業という選択肢を消滅させてしまい、売却までたどり着けない。自分が行うことに対する強い理由を持っていれば、「どう」は後からついてくる。そのため、なぜあなたがなるべく早くお金と時間を手に入れ、そのために「サクッと起業してサクッと売却する」という方法を選ぶのかをしっかりと理解してほしい。 ●最強の就活は、就職先に会社を売却すること!僕がもし、母校で15分間だけ学生たちに何かスピーチをしてくれと頼まれたら、「学生はバイトをするな」というテーマで話をする。バイトではなくインターンがおすすめだとか、そういう話ではない。インターンもするな。バイトやインターンをする時間なんて無駄だ。企業の手と足となりながら、自分の貴重な青春時代を、1時間800円とかで安売りしている。いい社会経験だなんて言いながら、学生たちは皆バイトやインターンをしているが、嫌でも数年後には社会には出るのだ。登山やダイビングでもあるまいし、社会に出るための社会経験など、本来必要がないものだ。バイトやインターンをして何が一番もったいないかというと、「雇われ癖」がつくことだ。学生時代にバイトをすると、一番最初の「働く」という体験が、人に雇われることになってしまう。そこで「雇われ癖」がつくのだ。「自分の知恵と度胸で金を稼ぐ」という本能的なモノが、一度バイトをすることで大きく削がれることになる。「時給800円や1000円のバイトをするくらいなら、親から金を借りて起業しろ」と言いたい。人生の戦略は、お金と時間のリソースをどう分配するかで決まる。例えば、730円払えばタクシーで5分で到達できるが、歩いてそこまで行こうとすれば、無料だけど30分かかる。これは、730円と25分の価値はどちらが高いかという話だ。人によって答えは変わってくると思う。どちらが大事かは人それぞれの答えがあってよい。大事なのは、お金と時間に対する自分の戦略をきちんと持っているかということだ。最初にバイトやインターンをやってしまうと、自分の時間をお金に換えるという間違った概念が刷り込まれてしまい、その考え方が頭に一度こびりついてしまうと、なかなか脱却することができなくなる。そして、僕が提案する「サクッと起業してサクッと売却する」連続起業家脳から大きく遠ざかってしまう。順序がそもそも逆なのだ。社会に出たら、右も左もわからないまま、とにかく狩りにでも出たつもりで自由に走り回ってみればよい。そこで、必要だと思ったことを順番に、自分のやり方で学んでいけばよい。就職経験がいけないという話ではない。人生で一番最初の「働く」という経験が「雇われる」経験だと、「雇われ癖」がついてもったいないという話だ。学生こそ、起業して会社を売却すればよい。その後、就職をするにしても、会社を売却した株式譲渡契約書が最強のエントリーシートになる。二十歳そこそこで起業し、学生のうちに1億円(例えばだが)でその会社を売るのだ。同年代の子たちはリクルートスーツを着て就職活動に勤しんでいるかもしれないが、会社を売って1億円を手に入れたあなたは、視野が広がっているだろう。自分でビジネスをしていたのだから、会社のことが全くわかっていない就活生とは違う。すぐに次のビジネスを立ち上げてもいいし、就職してもいい。卒業後、物価の高いニューヨークに留学してMBAを取得したっていい。学費と生活費で2000万〜3000万円はかかると思われるが、1億円あったら余裕で自費で留学できる。売却した先の会社に幹部として就職するなんて最高だ。会社を売却したなんて実績はエントリーシートに書く格好の材料だ。むしろ僕は言いたい。最強の就活は起業して会社を売却することだと。 「そんなヤツいるわけないじゃないか」と思った人はいないだろうか。何事も「そんな事できっこない」という人は一定数いる。僕が15歳で起業したときもそうだ。「そんな年齢で起業した人なんてみたことないよ」という大人は多かった。でも、たいていの場合、存在するのだ。僕が起業した当時、僕より若くして起業している人は多数存在した。みんな、自分ができそうにないことをみつけると、そんな人いるわけないとか、できっこないと勝手に決めつけて諦めてしまう。でも、世の中に知られていないだけで、実は存在するものは多い。とりあえず、その証明に、僕の知り合いを1人紹介する。留田紫雲さんだ。 留田紫雲さんは「VSbias」という会社を経営している。ただでさえ名前も読みにくいが、会社名も読みづらい。本名はとめだしゅんと読み、会社名はブイエスバイアスと読む。ブイエスバイアスは2015年11月、当時、関西学院大学4年生だった留田紫雲氏が創業した学生ベンチャーである。「テクノロジーを用いた〝空間価値の最大化〟」をビジョンに、複数の民泊予約仲介サイトの物件管理業務を一元化するウェブサービスなどを展開している。 2016年7月、株式会社メタップスに事業を売却、創業からわずか7カ月でのM&Aエグジットは、知る人ぞ知る、大きな話題となった。メタップス側からは、民泊事業における実績、「市場・環境を高精度で分析し、最善の選択ができる」留田氏自身が評価され、現在も社長としてブイエスバイアスの経営に従事している。 留田氏は起業した後も、他の学生と同じように就職活動も体験してみるなど好奇心旺盛な人物だ。そうした経験も踏まえた上で、あえて起業を選択している。 メタップス側からの評価理由からもわかるように、この事例は成長性のある事業の買収のみならず、留田氏を採用する意味合いが強い。M&Aの目的は、事業を買収して競合優位性を獲得するだけではない。優れた人材の採用にも一役買っているのだ。 新卒一人の採用コストは約百万円だ。はっきりいって法外に高い。そのため、うちでは絶対に新卒採用はしない(今のところ)。ポテンシャルが未知数で、レベルにばらつきもある新卒を百人採用しても、かかるコストは1億円、若く優れた起業家一人を見込みのある事業ごと買収しても1億円だとしたら、後者を採りたくなる。少なくとも僕だったら、コストばっかりかかる新卒100人よりも絶対にそっちのほうがよい。
今回、こちらのページにて発売前に、本プロジェクト主催の正田圭著、1月31日発売の「サクッと起業しサクッと売却する」のはじめに、並びに1章を公開することになりました。 パトロンの方々は読んで楽しみにしていただくだけでなく、ご興味ある方はこちらを読んで、本プロジェクトに参加していただけましたら幸いです。 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- はじめに 会社を売るのはトマトを売るのと同じ 僕はいわゆるシリアルアントレプレナー(連続起業家)だ。連続的に起業するとはどういうことかというと、会社を立ち上げて、売却して、また会社をつくって売却するということを飽きもせず延々と繰り返す人のことである。15歳の頃から、僕はこの連続的に起業することを生業にしている。 「会社を売った」というと「会社を売るなんてとんでもない」とか「会社なんて簡単に売れもんなのですか?」と言う人が多い。今でこそ、「起業して会社を売却した」といえば、「おぉ、すげーな」と言われたり、「おめでとうございます」と言われたりすることも増えてきた気がするが、そうはいっても、まだ「何かいかがわしいことでもしたのではないか」とか「金に目がくらんだ」と思われることも多いのかもしれない。 僕が本書を書いた目的は、この「会社を売る」という行動のメリットを皆さんに理解してもらうことにある。さらにいえば、「起業して会社をエグジット(売却)する」という「文化」を日本でもっともっと普及させていきたいという強い思いがある。 もしかしたら、本書を開いた皆さんには、 「こいつは突然何を言い出しているんだ?起業なんてタダでさえハードルが高いことを進めるに付け加えて、売却するだと?そんなことが出来るのは、限られた人で、運の良い一握りの人だけが成し遂げることだ。自分には全然関係のない行為だよ。」 なんて思われているかもしれない。 ただ、僕は敢えて言う。「会社を売ることなんて簡単だ。」「売れる会社を作る方法は誰にでも実現可能である。」 僕に言わせれば、会社を売るのはトマトを売るのと同じだ。何の違いもない。ただの、「ものを売る」という行為だ。 会社を5億で売るのも、5億のダイヤモンドを売るのも、5億の不動産を売るのも、何ら変わりはない。 ハリーウィンストンで5億円の宝石を売っているお姉さんは普通に実在する。不動産屋で5億の売買を成立させるお兄ちゃんも存在する。数億円の保険契約を成立させるおっちゃんだってたくさんいる。 ただし、高価なものにはそれにふさわしい売り方がある。 5億の宝石を売ろうと思ったら、それなりの知識や売り方がある。 ダイヤモンドの産地がどこなのか、どんな特徴があるのか、研磨やカットの技術・種類、重量や色、グレード、ブランドの歴史など、そのダイヤモンドの特長を伝えるさまざまな説明や証明書、高度な接客サービスが必要とされる。 会社も同じだ。 やり方さえわかれば売れるし、その価値に相当する会社だって作り方さえわかれば作れる。 そして、その「会社を売る」という行為が、あなたの人生を想像以上に豊かにすることにつながっていく。 僕が伝えたいのはそんな話だ。 軽い気持ちで起業する 今回、執筆するにあたって、何人かの人たちと「壁打ち」をした。「壁打ち」とは僕の造語だ。これは、僕が昔からやっている何かを進めるときの儀式のようなものであり、 その業界ないし、その分野での最先端を走ってる人たちを無理やりお茶やランチに誘い(本人たちは良い迷惑かもしれないが)、「こんなことやろうとしてるんだけどどう思う?」なんて一方的に僕から延々と質問をする失礼な行為のことだ。 で、今回もその「壁打ち」をいわゆるスーパー編集長たちとやったわけだが、みんなが口を揃えて「内容としては面白いし、確かにと思うけど、起業ってただでさえハードルが高いわけじゃん?」という。 実は、これを聞いて僕は飛び上がるほど驚いた。「まだ起業がハードル高いって思う人たちがこの世に存在したなんて!」 でも、僕が話をしているのは今の時代の最先端を走っている編集長たちだ。名前出したら怒られるかもしれないが、僕が無理やり話を聞いてもらっているのは、柿内さんや箕輪さんだ。柿内さんは「さおだけ屋はなぜつぶれないのか」「嫌われる勇気」「君たちはどう生きるか」(漫画)などを、箕輪さんは「多動力」などの編集をやっており、間違いなく時代の先端をものすごい勢いで走っている。 つまり、時代がわかっていないのは僕の方だということだ。 「起業はハードルが高い」 この議論は、もう10年以上前に終わった話だと思っていた。先日キングコングの西野さんが「まだ銀行に就職したいなんて言い出す大学生がいたなんて」と言っていたが、僕はこのニュースを、「そりゃまだいるでしょ」と思いながら見ていた。でも、「起業のハードルが高い」なんてまだ思われている時代だなんて思わなかった。 僕は、この「壁打ち」をした日に、会社を売ろうなんて言っている場合じゃないなと痛感した。「会社を作る」ことに対してハードルを高く感じる中で、「会社を売る」なんて文化が根付くわけがない。 サクッと起業して、サクッと売却するというライフスタイルが世の中に認知されるのは、まだまだ時間がかかりそうだ。なぜ、このように起業のハードルが高い社会になってしまったのだろうか?そして、同じく、なぜみんな会社を売るという発想にならないのだろうか。 無駄にハードルが上がってしまった理由としては、今のベンチャー企業の存在が大きいと思う。 一昔前と異なり、確かに起業のインフラは整った。僕が起業した15年以上前は、ベンチャーキャピタルと知り合えるようなモーニングピッチは誰もやってなかったし、株式会社を作ろうとするだけで資本金1000万円以上を求められる時代だった。 それが、今は、いたるところでピッチは行われているし、エンジェルなんていう個人投資家も増えた。証券会社や監査法人も、売り上げが年商数千万円も無いような会社であろうと、数人体制でまともに話を聞いてくれる。Tシャツにパーカーみたいないでたちの若い兄ちゃんの話を、ピシッとスーツ着たエリートサラリーマンたちがメモを取りながら聞く情景は、昔からすれば滑稽だが、今は当たり前の風景だ。 「ほら、こんなに起業のハードルは下がってますよ!」という人は多いと思うし、僕もそう思っている一人だったわけだが、これは、実はすごく狭いコミュニティ内での話だ。 狭いコミュニティにも関わらず、起業する人よりもお金を出したい人の方が多い状態になってしまっているから、より大きなことを言って、より多くのお金を引き出そうとするプレゼン上手の起業家が増えてきていて、大きなビジョンを壮大に語る起業家が増えた。 誤解の無いように言っておくが、起業家が大きなビジョンを語ることを批判しているわけではない。 僕が伝えたいのは、ベンチャー界隈で暮らしている人たちは、閉鎖的なコミュニティを作り上げてしまったがために、大きなビジョンを描く起業家が増えてしまったということである。 その結果、起業を億劫に感じる人は、より億劫に感じるようになってしまったという事実である。 起業に崇高な理念など必要ない いざ、起業しようと思うと、世の中をテクノロジーで変革させなきゃいけなかったり、コンピューターに強くなきゃいけなかったり、人工知能で何か高度な分析が出来なきゃいけない…みたいな雰囲気が醸成されて、チャレンジングな人はどんどんトライしていくのだろうが、起業は何か崇高なものであるような風潮になりつつある。まるで、起業ではなく、革命でも起こすようなマインドが求められているのが、今の起業マーケットだ。僕は、「トマトを作って売るような感じで会社を作って売ればよいのに」と思う。トマトを作るのに、崇高な理想など必要ない。トマトで世界を変革させる必要は無いのだ。決してトマトを馬鹿にしているのではない。起業するのに崇高な理念や、世界を変革するような志は、とりあえず必要ないと言いたいのだ。 いつか本気で世界を豊かにするようなサービスを思いついて、それが心の底から一生をかけてやり遂げたいミッションだという確信があるのであれば、そんな素晴らしい起業はない。 でも、初めて起業する「起業ビギナー」にとって、そんなレベルの高い起業を求めるのは間違っているし、そもそもそんなことが初めて起業するビギナー起業家に出来るわけがないと思っているのが僕の正直な気持ちだ。 「トマトを売るように会社を作って売る」のはどういうことかというと、生活する手段として、起業して、作った会社を売却するということだ。世の中に革命を起こそうとか、世界を変えるまでいかなくても、起業してサービスの利用者をきちんと満足して適切な対価を受け取り、たまには気温や台風の影響で作ったものがダメになってしまうかもしれないが、そんな中でもめげずに育て、大手のスーパーや飲食店に買い取ってもらう。そこで得たお金で、自分や家族が幸せになる。 こんな「当たり前の起業」「当たり前の売却」が、今の世の中では受け入れられていない。起業インフラが整いすぎてしまったがために、一周回ってなんかおかしい方向に行ってしまっている。ちなみに、トマトの世界では当たり前にトマトを育て、当たり前に売却することが受け入れられている。生活のためにトマトを作っているという農家が批判されるなんて話は聞いたことが無い。大事に育てたトマトをある日突然出荷しても「金に目がくらんだ」などと後ろ指をさされることもない。トマトだと何も言われないことが、なぜ会社だとやんやかんや言われるのかがすごく不思議である。起業とは、まず、自分が幸せになるためにするものだ。自分が幸せになり、サービスを受けた人が幸せになり、従業員が幸せになり、ステークホルダーたちが幸せになり、このように自分の周りが徐々に徐々に同心円状に幸せになっていき、世界が変わるのはその結果論だ。いきなり世界だけが変わるなんて話は無い。 こんな当たり前の起業の話が、今、世の中から見失われている。 世界で最もシンプルな儲け方 今、皆さんは、会社を作って売ることが簡単に実現できるという僕の持論に対して半信半疑だと思う。でも、よく考えてみてほしい。会社を作って売却するという儲け話は、世の中にある儲け話の中で、一番確実で、一番地に足の着いた、最もシンプルな方法ではないだろうか。儲け話と言えば、今は、仮想通貨に投資することが流行っている。不動産投資で資産10億なんて本はゴロゴロある。フランチャイズチェーンと契約し、店を出す支援を受けるための説明会は毎週山ほどやっている。ネットワークビジネスやら情報商材やら胡散臭いものを挙げればきりがない。 これらの方法にはすべて、共通する問題点がある。それは「他人のつくったシステム」に依存しているということだ。 人のつくったシステムは、そのシステムを構築した側の人間が大抵の場合儲かるようになっている。そこにに乗っかってしまうと、運が良ければおこぼれが手に入るかもしれないが、たいていの場合システムを作った側に搾取されて終わる。ビットコインで一番儲かっているのはビットコインを作ったサトシナカモトだ。不動産取引で最も儲かっているのはゼネコンだ。フランチャイザーより儲かるフランチャイジーなんて聞いたことない。何かに依存している限り、最後なにかあったときにババを引かされてしまうのが世の常だ。それに比べて、「起業して会社を売る」ことはどうだろうか。 自分で起業すれば、自分のわからない要素を取り入れる必要がない。自分がわかっていることを商売にすればいい。 そして会社を軌道に乗せ、うまくいったら適切なタイミングで売却する。そう、M&Aするのだ。そろそろ、仕掛けられるお金儲けから脱却しよう。自分が仕掛け側になったほうが確実に決まってる。 本書では、この「仕掛け方」を伝える。もちろん、僕は教師ではないし、学者でもないから体験談でしか語れない。でも、僕は15年以上の時間をかけて、どうしたら企業に成功し、売却まで持っていけるのかをずっと実践してきた。むしろ、そこだけを意識して進めてきた。起業するときにまず真っ先に頭を悩ませる資金調達のやり方、どのように仲間を増やしていくのか、どうやって会社を売ればよいのか、など、縦横無尽に起業の方向性や再現可能性の高い方法について述べていく。 正田圭という連続起業家(シリアルアントレプレナー)が15年かけて経験してきたものや考え方を一つの解釈として楽しんでいただき、今後自分の進むべき道を考えなおす際の一つのきっかけにしてもらえればと思う。 本書の結論は、先に言ってしまうと、連続起業家という生き方が、今後、時代の主流になっていくということである。連続的に起業する方法論を習得すれば、混とんとした時代でも自由に生きることが出来、没頭して生きることが出来るようになるという話だ。そして、そんな話の中でも皆さんが最も疑問に思うであろう、以下の疑問に答える。 ・どうやって起業のアイデアをひねり出せばよいのか?・どうやって資金を調達すればよいのか?・どうやって事業を軌道に乗せればよいのか?・どうやって会社を売却すればよいのか?・どうやってはじめの一歩を踏み出せばよいのか? 本書は、まだ誰も書いたことのない、「起業して会社を売却する」というところに焦点を当て踏み込んでみた。会社を売却したという話しを聞くことは少なからず増えてはきたものの、会社を売却しようとか、会社を売却する前提で起業しようという話はあまり聞かない。 「起業して会社を売却する」という手段を理解し、扱えるようになることで、自分から世の中に対して働きかけることが出来るようになる。先が読めないと言われている時代に、「サクッと起業してサクッと売却する技術」は大きな武器になることだろう。 本書では、起業という概念を再定義するところから始めていく。そして、起業して会社を売却するという行為が、再現可能性があり、かつ、誰でも実現可能であるということを証明していくつもりだ。では、さっそく始めていきたい。
おはようございます、pediaスタッフです。 みなさまのおかげで200%達成、そして各メディアから取材いただいております。 2月頭からCAMPFIRE内でpediaサロンページオープンしていきますので、引き続きみなさまよろしくお願いいたします。 また、今回アスタミューゼ様から取材いただき、その一部を転載しておきますので、ぜひみなさまご覧くださいませ。 ↓ Interview 2018.01.18 THU 東大受験やプロ野球選手のように、中学生が本気で起業を目指す未来 ――「Pedia Venture Program」正田圭 text by : 編集部 photo : 編集部,TIGALA株式会社 近年、学生起業家・若い起業家が増えてきた。 日本では15歳になれば法人設立に必要な手続きが可能となるが、若い起業家の大半は大学在学中など18~25歳が中心となっている。そんな中2017年12月に「小学校高学年~中学生」を対象とした起業支援プログラム「Pedia Venture Program」が発表された。 プログラムの中心人物は、自身も15歳で起業し現在はTIGALAの代表を務める正田さん。 なぜ、15歳以下の子供たちに起業支援プログラムが必要なのか?自身の経験や周囲の10代起業家の話も含めてお聞きした。 正田 圭 (まさだ・けい) 15歳で起業。インターネット事業を売却後、M&Aサービスを展開。事業再生の計画策定や企業価値評価業務に従事。2011年にTIGALA株式会社を設立し代表取締役に就任。テクノロジーを用いてストラクチャードファイナンスや企業グループ内再編等の投資銀行サービスを提供することを目的とする。 ■最初に仕事をする時、会社経営からスタートしたほうが仕事の本質がわかる ――中学生の起業を支援する「pedia venture program」は、正田さん自身が15歳で起業した経験も背景にあると思うのですが。 そうですね、僕が起業した頃の15年以上前と比べて「早くやることのアドバンテージが出てきたな」と感じます。 いまはベンチャーキャピタルの中にも、優秀でリスクを取れる若い人を探している方が多いですし、「大学中退して起業します」という若者をむしろ評価する風潮がある。むしろ若い方が資金調達しやすいとすら思います。 僕が起業した約15年前はむしろ逆で、若い起業家といってもせいぜい20代後半。 資金調達環境も現在と異なり、金融機関から借り入れるケースも多かったです。僕も起業時に「せめて年齢が25歳くらいで、妻や子供がいたら融資を受けやすいのにな」と言われたことがあります。 ――若いことがネックだった当時と、若いことが強みのある現在という差ですね。 はい、今は急成長している企業でインターンを経験する、新卒でベンチャーキャピタルに入社するなどして、その後起業するケースもありますよね。 一昔前だと、20代で独立するにしても3~5年くらい修行してから独立するということが多かったと思いますが、今時の若手起業家は1年もたたないうちに独立します。 1年もしないうちに投げ出したやつ、続かなかったやつと評価する人もいるかもしれませんが、実際こういう起業家がしっかりと結果を出しているのが今の時代です。 ――そういう状況で、今回のプログラムを立ち上げる意味というのは? 人生で、一番最初に働く経験は、「起業」であったほうがよいのではないかと思ったことです。 普通は、みんな人生で一番最初に働く経験って雇用だと思うんですよね。しかしそれが良くない。「雇われ癖」がついてしまうのです。 就職に限らず学生アルバイトもですが、原則的に自分の時間を「1時間1,000円」とかで売る、これは時間を渡すからお金が手に入るという経験です。 対して会社経営はいわば真逆です。「いかに時間もお金も手に入れるか」の闘い。 仕事の原体験が「時間を売らないとお金は手に入らない」だと弊害もあります。 もちろん、全ての人が一生起業家として生きるわけではありませんし、就職を否定するわけでもありません。ただ、最初に仕事をする時に会社経営からスタートしたほうが、就職するにしても仕事というものの本質をよくわかるのではと考えています。 だから学生のうちに一度起業したほうがいい。 ここ数年間で、一層この考えを確信するようになりました。 pedia venture programは4月からスタート予定で現在参加者を募っている段階。 中学生は無料だが、高校生大学生が参加できるプランもある。 ■いまの親世代は子供に「自分で稼げるようになってほしい」と願っている ――正田さんは2016年3月「15歳で起業した僕が社長になって学んだこと」を出版されましたが、その本への反響も、今回のプログラムに関係していますか? はい。あの本への反響は当時若い方からも多かったですが、実は、親世代の方からも多く反響や感想を頂きました。 そこで見えてきたのは「いまの10代の子の親世代が子供の人生に望むもの」の変化です。 僕の本に寄せられた親世代からの声で感じたのは 「子供にはお金を稼げるようになってほしい」という願望です。 近年の、子供にプログラミングを習わせようとか、STEM教育、モンテッソーリ教育といったものが話題になる背景にも、親世代の同じような願望を感じます。 ――なぜ「稼げるようになってほしい」と願うようになったのでしょう。 僕は「相続0円時代だから」だと思います。 親世代に貯金がなく、以前のように祖父母が貯金や土地も持っているわけでもない、長生きの時代になり自分の老後資金も必要。 子供に相続させられるものがほぼないのです。だからこそ「自分で稼げるような人になって欲しい」という願望になる。 ただ、大半の人は「どうすれば稼げるか」を実体験を元に教えることができない。漠然と「エリート・高学歴」とは何か違うものだということもわかっている。 ――その考えがある親世代に、お子さんに「起業」という選択肢も提示しようと。 そうです。子供が起業するというチャンス・選択肢を親御さんに容認してもらう。 それと同時に親世代に対しても「あなたたち自身まだ若い。あなたもチャンスです」という意味も込めています。 親子共同で起業しよう、とまでは言わないですが、一緒に起業のことを考えたり、親が「俺は退職金で起業する、お前も最初の面倒は見るから何かサービスでも立ち上げてみろ」と、そういう親子関係があってもいいなと。 ――確かに子供が東大目指すなら両親一丸となるのは自然なので、起業において同様のことがあっても良さそうです。 はい、子供を東大に活かせるためにスパルタ教育をした、小さい頃から父親が野球を教え込み二人三脚で一流のプロ選手になったという話はごく自然ですよね。 ただ、会社経営や起業において同様のものがない。 父親が子供の事業プランやプレゼンを見て「お前のプレゼンは全然だめだ!」と言った話を聞いたことがない。 今回のプログラムが、子供に勉強させるかスポーツチームに入れるか?と同様に当たり前の選択肢として、親世代に認識されてほしいなと考えています。 ※自身の体験を元に出版された「15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと」は 現在よりもベンチャー支援環境が恵まれていなかった時代のハードな体験、そこからの学びが得られる。 続きはこちらから