2022/11/27 08:38

エルフィンクラフトの制作過程や想いを伝えたいと思います。

※文字ばかりのため、読みにくいと思います。また、他の作品名がでてきますが、エルフィンクラフトと比較対照する意図はありません。不適切なものがありましたら、すぐに削除させていただきます。


〇〇クラフトという名前のゲームはたくさんあり、Kickstarter発の可愛いドラゴンだらけのボードゲーム『フレイムクラフト』と似ていますが、名前の由来は全く別のところから来ています。まず、ファンタジーなボードゲームを作ろう、ファンタジーと言えばドラゴンだ!と言うことでドラゴンクラフトと名付けましたが、スマホのゲームで同じ名前があったため没となりました。次にファンタジーで思いついたのがエルフでした。エルフクラフト…何だか語呂が悪いなぁ、そう言えば古いボードゲームで『エルフィンランド』ってあったなぁと言う具合に決まりました。

クラフトについてはデジタルゲームで『リーグオブレジェンド』(未プレイ)と言う超人気ゲームがあるのですが、ゲーム内にアイテムクラフト、アイテムを作るシステムがあります。A素材とB素材を合わせたらC素材が出来上がり、そのC素材を使い最強のS素材が作れるみたいな感じのシステムなのですが、エルフィンクラフトのAのカードのシンボルとBのカードのシンボルを使いCのカードを並べ、そのCのカードを使い最強のSのカードが並べられるというメカニクス(ボードゲームの構造)がアイテムクラフトシステムを参考にしており、タイトルにクラフトを付けました。 

タイトルはかなり悩んで決めましたが、サブタイトルの〜失われた魔法の秘宝と暗黒の魔竜〜はデジタルゲームによくある感じ『ドラゴンクエスト3〜そして伝説へ〜』みたいなノリが欲しくて雰囲気で決めました。サブタイトルがあるとカッコ良いみたいなノリですね。

箱庭世界が描かれたカードを並べるゲームというザックリとした案からスタートしたのですが、丁度、ウクライナとロシアの戦争中に考えていたゲームなので、平和な世界で旅をする、現実に嫌なことがあっても呑気に遊べるイメージをぼんやりと抱いていました。ボードゲームは勝ち負けのゲームが多くギスギスすることもあると思いますが、協力ゲームではないけれど、お互いが得をするようなメカニクスを加えたらギスギスせずに遊べるのではと考えました。

カードゲームの名作『ボーナンザ』はお互いに点数を競うのですが、交渉によりカードのやり取りが出来ます。欲しいカードを横取りするのではなく、渡す側もそのカードが邪魔なので捨てたい。お互いの利害が一致する交渉なので平和に楽しく遊べます。エルフィンクラフトでは交渉という程ではなく、相手のカードにコマを置いた時にその相手がカード1枚引けるという単純なものです。自然と置いてお互いが得をする感じです。

ギスギスしない仕組みとして、最近のボードゲームの主流とも言えるマルチソリティアの構造を採用しています。一人遊びとも揶揄されて嫌いな人は嫌いだと思うのですが、自分の盤面を相手に荒らされる事がないので、箱庭的にチマチマカードを並べる楽しみの邪魔はされません。


■ワーカープレイスメント部分の考察

エルフコマをカードに置きシンボルを得るというワーカープレイスメント部分も『アグリコラ 』のようにアクションスペースの取り合いになるシビアさはなく、エルフィンクラフトではコマの置かれているカードにもコマを置くことが出来るのでゆる〜い感じです。カツカツのワーカープレイスメントではありません。ワーカー(エルフコマ)は増えることはなく3個をうまくやりくりする感じとしました。元々はカードだけでコマなしでテストプレイをしていたのですが、サクサク進みすぎて探索感ゼロだったので、カードにエルフコマを置くというワンアクションを追加する事でエルフが箱庭世界を探索するというテーマに近付けたと思います。ボードゲームならではの手触り感というかボードゲームを遊んでいるぞ!という感じにもなり良いメカニクスだと思います。

『カルカソンヌ』という名作ボードゲームでミープル(人型のコマ)を知ったのですが、想像力をかきたてるボードゲームらしいコンポーネントでじっと見るとエルフに見えてくる?!気がします。


■エンジンビルド部分の考察

エンジンビルドは手番を進めるごとに自分の場のカードが増えていき、一回の手番でどんどん出来ることが増えるメカニクスです。最近では『ウイングスパン』が有名ですね。

エンジンビルドというと拡大再生産というメカニクスと混同しやすいのですが、拡大再生産はリソースやトークンが沢山貯まり、それを放出する事でどんどん出来る事が増える。エンジンビルドはカードなどを手番が進む度に自分の盤面に増えていき、まるでエンジンを組み合げるみたいに自分好みにカスタマイズした盤面を使い色々なことが出来る、という違いだと解釈しています。

エルフィンクラフトでは毎手番ごとに自分の盤面にカードが増えることで、使えるシンボルが増え、どんどん色々なカードが並べられるようになります。拡大再生産のようにリソースをこねこねしないのでエンジンビルドの方がサクサク遊べる感じとなります。またリソースの数を数えたり準備する手間がないのも良い点かなと思います。

アイテムビルドとかデッキビルドとかビルドという言葉が好きなのでエンジンビルドをキーワードにした理由の一つです。何かを組み上げるというのは、とてもワクワクするメカニクスだと思います。


■ハンドマネジメント部分の考察

ハンドマネジメントは手札をうまくやりくりしてゲームを進めるメカニクスです。TCGなどのプレイングも、カードの取り捨て選択やどのカード効果をうまいタイミングで使うというハンドマネジメントと同義だと思っています。

エルフィンクラフトは世界探索をテーマにしたカードゲームなので、ハンドマネジメントは核となるメカニクスです。まずカードゲームにおけるドロー(山札からカードを引き手札を増やす)は最強というのがあります。有名なところではカードゲームの遊戯王の『強欲の壺』というカードがドローが強すぎるというのがありますね。エルフィンクラフトではこのドローを軸にインスタントシンボルの9種類の効果を合わせてTCG的な動きが出来るような仕組みにしてみました。

ドローで手札を増やしてカードの選択肢を増やすのは、1つの山札(1つの100枚以上のデッキ)からカードを引いていくので、多くのカードを引かないと引き運だけで遊ぶゲームとなってしまうのを防ぐためです。ただカードを捲っていく(坊主めくりと揶揄される)だけでは、ボードゲームで遊ぶ必要はないと思います。100枚以上の山札からお目当てのカードを引き当てるためドローし、お目当てのカードが引き当てられない時は今ある手札で出来ることを考えるという感じです。

インスタントシンボルについては、『マジック ザ ギャザリング 』のインスタント効果から名称を拝借しています。魔法書や望遠鏡など特定の9つのシンボルそれぞれにゲームを有利に進めるための効果を付けて、ゲーム中にインスタントシンボルの効果を使う/使わないのプレイングやカードゲームらしく、捨て札を回収して使い回したり、余計なカードを捨て盤面を圧縮したりという動きが出来るようにしました。最初の頃はインスタントシンボルの効果がなかったので、考える要素が希薄で戦術性に欠けていたので取り入れて良かったなと思っています。カードゲームとしてはたくさんの効果を盛り込んだ方が楽しいのですが、あまり複雑にしすぎてマニアックにならないように注意しました。また、いちいちインスタントシンボルの効果を覚えなくても遊べるようにカード裏面のデザインをインスタントシンボルのサマリーを書いたものにし、ゲーム中いつでも効果を確認できるようにしています。


■その他のゲームデザインの考察

例えば自分の場にカードを12枚並べたらゲーム終了というのはテストプレイ後に変更したルールなのですが、ゲームの収束性(スパッと終わる)が向上し、いつ相手が12枚目を並べるかという駆け引きも生まれました。

手札も元々は5枚だったのを4枚と少なくしたのも、選択肢が多くなるとプレイヤーは選択をしなくなるという現象を考えてのことです。2〜3枚の手札から1枚を選ぶのは楽しく、どれにするか悩むのですが、枚数が増えると考える事も増えてしまい、キャパオーバーするとテキトーに選んでしまいゲームが作業的になってしまうのを軽減させるため手札を微調整しました。

捨て札が点数につながるシステムはRPGの経験値稼ぎ的なものをカードゲームで再現できないかを考えたものです。不要な手札ばっかり=道に迷う=迷ったおかげで経験値が貯まるみたいなフレーバーです。また、手札運が悪くても逆に点数が貯まりラッキーみたいな気持ちになれ、イライラ要因が軽減されるという狙いもあります。

少しのルール変更でゲームバランスが変わるのはボードゲーム制作の面白いところかもしれません。ゲーム完成までに細部を煮詰めてより楽しく遊べるように改善していきます。


エルフィンクラフトは対象年齢を8歳と小さな子供にも遊んでもらえるようにと遊びやすさに気を遣いました。私自身が子供とボードゲームを遊ぶことがほとんどなので、子供でもストレスなく遊べる工夫は大切な要素となっています。

⚫︎数字や文字のないカード

カードゲームのカードはコストやカードパワー、また小さな文字で書かれたビッシリのテキスト効果にワクワクする方も多いと思いますが、小さなお子様でも遊べるようにイラストやアイコンだけのカードデザインです。ゲーム終了時の点数計算以外は計算もなくしています。

特に見たままのシンボルを集めて、そのカードを並べる点は意味のない数字だけのコストに比べて子供には遊びやすいのではないかと思います。

⚫︎手札を手で持たない

エルフィンクラフトのカードは59×86mmと小さめなサイズですが、それでも小さなお子様にはたくさん持つのはしんどいと思います。手札を場に置くことで手札自体が公開情報となりますが、ソリティア色の強いゲーム内容なので問題はありません。大人でも別途カードスタンドなども必要ないので遊びやすさにつながっていると思います。カードを隠さないのもプレイ中の雰囲気を良くする要因になればと思っています。

⚫︎準備、片付けが簡単

さあ、ボードゲームをはじめよう!となって小さなトークンを並べたり、カードを種類別に並べたりと準備に20分!とかになると小さなお子様は飽きてしまいます。

エルフィンクラフトでは1つの山札をシャッフルするだけなので、準備も楽々です。特に片付ける時もカードを種類別に分ける必要がないのでサクッと片付けられます。


エルフィンクラフトのアートワークはデジタルゲームのRPGのような世界がモチーフです。『ドラゴンクエスト』のようなデフォルメされた世界をイメージしてデザインをしています。絵本的なニュアンスでどこか懐かしい感じになればと色々な工夫をしています。

■主線なしイラスト

これは以前のプロジェクトであるドラゴンガンフォースのイラストなのですが、黒い線で縁取ることでクッキリとしたイラストとなっています。

一方、エルフィンクラフトでは主線がないため、独特の空気感や優しい雰囲気になっていると思います。線がクッキリしないので影の入れ方で箱庭感を演出したりしています。エルフィンクラフトという名前のイメージにも合っているのではないかと思っています。

■ずんぐりむっくりなエルフ

エルフィンクラフトの世界ではフードを被った魔法使いみたいな姿なのがエルフです。設定上では肌が白く日差しに弱いため、フードを被っているという理由です。デザイン的にはフードを被ったシルエットが良い感じなので個人的に気に入って描いています。また、後ろ向きに描かれたエルフが多いのはエルフの顔は想像力でカバーして欲しいという想いからです。同じカードでも1人1人が違うことを想像できるようにしてカードのイメージが押しつけにならないような工夫でもあります。

■森のアートワーク

エルフィンクラフトの世界は森が多い設定なので木が描かれたカードがたくさんあります。木は1枚1枚の葉っぱを描く感じではなく縞々模様を基本デザインにしています。これはデジタルゲームの『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』に影響を受けています。リアルではない感じが空想世界の箱庭感につながっているかな?と思っています。

■水のアートワーク

水のデザインもリアル路線ではなく、絵本的な感じのアプローチです。具体的には水の流れを白い線で表現してファンタジー感溢れる水に仕上げたつもりです。

■ドラゴンのアートワーク

ファンタジーと言えばドラゴン!ということでエルフィンクラフトにも多数のドラゴンが登場します。どれもデフォルメされたデザインです。カッコいいよりもカッコかわいいみたいな感じになるように羽のサイズを小さく短くしたり、シンプルな瞳にして小さな子供が見ても威圧感のないデザインを意識しました。

■シンボルのアートワーク

カード中に描かれたアイテムはシンボルと言いますが、シンボルのデザインはスマホのソシャゲゲームのアイコンやデジタルゲームを意識して描きました。ひとつひとつのデザインはシンプルですが、ギュッとしたコンパクト感というかアイコン化された感じが出てれば良いなぁと思っています。


ゲームデザインを中心に色々書いてみました。根底にあるのが、

「気持ちよく遊べるゲームにしたい。」

準備や片付けが面倒、プレイミスに文句を言われた、点差が開いてつまらない等、イライラする要素をなくす。

暴力描写や見た目に不愉快な絵柄を無くして誰もが空想の箱庭世界を楽しめるものにできれば良いなぁと制作しています。