2013/02/04 20:10
『カラー化で広がるモノクロ漫画の作品世界』

取材:コルク編集部

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前回、第2回ではカラー化における時間や温度の演出を、バッファロー5人娘の実際のシーンを例にお伝えした。
第3回では、安野先生のファッション性や、『塗り』の特徴に焦点をあててゆく。
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【第3回】−背景もすべてキャラクターと捉える−

ー第2回でお話いただいた時間や温度の演出は、まさにカラーならではですね。

 時間や温度は、カラーにおいて、重要な細かい情報となります。それらをしっかりと原稿に盛り込んでいき、具体化していくことは、おろそかにできません。それはこの仕事の難しさでもありますし、大きなやりがいでもあります。

ー「バッファロー5人娘」のカラー化についてはいかがですか?

 「バッファロー5人娘」のお話をいただいた際、はじめに意識したのは、安野先生のファッションセンス性です。安野先生のファッションセンス性は、どの作品にも色濃く反映されていて、バッファロー5人娘でも各キャラクターの服装の特長ファッション性をしっかり拾い、生地の質感、カウガール的な要素まで幅広くキャッチする必要がありました。これは、通常のカラーのタッチや色彩とは異なるものなので、しっかりと理解し、捉えきれるか最も不安な部分でしたね。

ー安野先生のファッションセンス性を好きなファンも多いですからね。

 そうですね。熱心な読者の方ほど、敏感に気付きます。最も参考にしたのは、バッファロー5人娘が連載されていたのと同時期のカラー資料です。もちろん安野先生の全作品、入手可能なカラーページはすべて参考にしましたが、作家さんでも時期によりタッチに特徴が出ます。先生と打ち合わせを頻繁にできるわけではなく、ある程度こっちであたりをつけていかなければいけない中、何度も何度も見返しながら作業を進めました。非常に参考にさせていただきました。
 背景のカラー化も難しいのですが、もっと難しいのは、一見簡単なように思える背景がベタや真っ白のコマです。作業時間自体は大してかからないのですが…。
 ベタが多かったり、逆にホワイトが多い漫画が難しい一方、背景がないコマには、理由があります。安野先生のように原作の中で描き込みの多い漫画は、やりやすい側面もありました。その中でも、心理描写のためであったり、ベタもあれば場面転換のためであったり。そのコマが主張しすぎない、と同時に安野先生のセンスを残している色塗りをするために、すごく時間をかけて悩みました(笑)


ーバッファロー5人娘の『塗り』の特徴はどのような部分でしょうか?

 例えば肌ですね。一般的なカラーの塗り方は、まず薄い肌を入れて、次に濃い肌を入れる。そこに影を重ねて陰影をつけていくんですね。それに対して、バッファロー5人娘では白い部分を肌として扱い、思い切って残してしまいます。さらに、何度も書き込むわけでなく、迷いなく色を引いていくタッチが特徴的でした。おそらく、先生の頭の中では完全に絵が出来上がっていて、それを紙の上に写していくイメージなのだと思います。
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最終回となる次回では、これまでの話をふまえ、カラー化の意義、カラー化という仕事へのアツい想いに迫る。
【第4回】−カラーが届けるもの−