2022/02/17 03:27

皆さん今晩は。

今夜は、漢字が「表音文字」であるという証明です。

(六)転注

転注については、古来定説がありません。転とは車輪の回転することであり、注とは水が器から器に注がれる事です。そこで、例えば、「駿」は、もともと「馬の良材」つまり「優れた馬」のことで、優れた馬は足が速いので「はやし」と訓じ、また優れた馬は大きいので「おおきい」と訓ずるような、文字の意味が本義から転じて別な意味が生じる事、と言う説。

他にも、蓮荷(れんか、蓮も荷もはすの意)の荷を、負荷の荷(になう)に転用し、山がらすの意であった「雅」を、風雅の「雅」に転用する。これらは「音」の関係での転用を説明した物ですが、意味上の関係から解き明かす説もあります。

例えば、「樂(楽)」,は、上部の「白」は鼓の形に象り、その両側は騎兵が馬上でならす攻めつづみに象り、下の「木」は、鐘磬(しょうけい、中国古代の打楽器)をつるす台の柱を表した象形文字です。この字の本義は楽器で、音楽の意味を表すので音は「がく」。そこから転じて「たのしむ」意となる場合の音は「らく」。つまり、一文字で二つの語を表す同字異訓が転注である、という物です。

※小篆の「樂」

或いは、青木正兒氏は『支那文學概説』の中で、「水」から水に関する文字が派生するような、「木」から木に関する文字が派生するような、文字の派生の法則であると考える、と述べています。但し、『説文解字』の著者である許慎(きょしん)の説明がはっきりしないので、古来、定説がありません。

さて、清の学者 朱駿声の『説文通訓定声』中の「説文六書爻列」によれば、『説文解字』に収められた9,353文字中、文字の使用方法である「仮借」と「転注」を除いた、指事・象形・会意・形声の文字数は、それぞれ次の様になります、

指事文字は125文字
象形文字は364文字
会意文字は1,167文字
形声文字は7,697文字

漢字はよく表意文字であると言われますが、その根拠となる象形・指事・会意文字の、『説文』中の文字数は1,656文字。それ以外は全て形声文字です。9,353文字中、八割以上が形声文字であるからには、漢字は「表意文字」であり、また、「表音文字」であると言えます。

漢字の音は、丁寧に積み重ねられた研究によって定められています。更に、漢字が表音文字であるからには、キラキラネームのように、漢字に恣意的に音を決める事は不可能なのです。

〇おまけ

ところで、象形文字の「日」の文字の横棒が「烏」である事は既に述べましたが、では、「目」が象形文字であるのなら、「口」の中の「二」とは何なのでしょう。

※『説文解字』の小篆と古文の「目」の原文。

人眼也 象形 重童子也「人の眼なり、象形、重童子なり」

古文目「古文の目」
重童子(ちょうどうし)とは、童子(瞳子)の重なった様。口の中の二を、重なった瞳と解釈しているのですが、これではよく分かりません。古文の目玉親父ような文字は、『説文解字注』には、外側が顔の輪郭、内側は眉と目に象っている、と説明されています。或いは、ここから現在の形になったのかもしれません。

それにしても、現在使われている「目」という文字は、秦の時代にできた小篆から、形が変わっていないのです。

今夜はこの辺で。

あと一日、お付き合いいただければ幸いです。