当たり前のことかもしれませんが、
保存や改修にかかる多額のコストは、それに見合う収益性や話題性のある建築物にしか支払われません。
全国には、そうじゃない建築物も多くあります。
そこで、デジタル化による保存についても調べるようになりました。
3DデータやVR作品として保存すれば、誰でも、いつでも鑑賞できると考えたのです。
ですが、これもいくつか問題がございました。
まず、費用がすごく高いこと。
旧加古川図書館ほどの規模をVR化して見ごたえある作品にするには、
安く見積もっても100万円以上は軽くかかります。
作品をアップロードするウェブサイトの構築費も必要です。
定点計測や測量による3Dデータの収集は、もっとかかります。
また、建築物の保存を望んでいる方々は、
そもそも、「VRとして残したい…!」とか、「詳細な3D測定データが欲しい…!」とかは、
まるっきり望んでおられません。
建築"物(モノ)"を残したいのです。
そして、"モノ"の保存に関する実際的な援助を求めています。
そして、社会一般の大多数の方は、
VRにしても、3Dデータにしても、
すごく興味があるわけじゃないのです。(もちろん、こういった技術はとても素晴らしいものです)
どちらかといえば、
「モノとして残せるのなら(健全な財政支出で、将来的に回収を見込めるなら)
残したほうがいいんじゃないかな…」
という方のほうが多いと思います。
以上から、最先端技術による3Dデータ化や、VR化だけでは、
市民に有益なサービスとして成り立たないと考えるようになりました。
では、なぜ、
多くの方は、「データ」より、「モノ」を残したいのでしょうか。