ちゃんとした品質の生豆をハンドピックもして焙煎する限り、正直いって、かなり適当な焙煎でも普通に飲むなら結構美味しいコーヒーになります。少なくとも僕の場合は、ロガーなしで焙煎したとしても職人的勘が働いてしまい一定のルールに従った焙煎をしているのだとは思いますが、どうしようもない味のコーヒーが逆になかなか作れなくなっています。
大昔に遡ると、例えばマラウィの生豆を仕入れて初めて焼いたとき、酸っぱ過ぎて飲めないコーヒーを作って、結局そのときに「巻き直し」と僕が呼んでいる再焙煎を編み出して、これにより、なんとか飲める状態にした、という記憶はあります。今も巻き直し焙煎することはありますが、飲めないからではなく別の味を作るために、特別丁寧な巻き直し焙煎をするくらいです。
さて、今回お伝えしたかったことは、そう、一定の技術を身に付けてしまうと、完全に外した焙煎が出来なくなってしまうこと、そして焙煎度合いが同じであれば、プロファイルが多少違っても味の差は微妙で、優劣の判定にはかなり厳密に比べる必要があること、ということです。
プロであれば通常、優劣の判定にはカッピングという手法を使うわけですが、これが曲者で、まず、浅煎り~中煎りまでのスコアシステムであること、そして実際にペーパーなどで普通に抽出したときとかなり印象が異なることがある、という問題があります。 これでは、おうち焙煎&自宅飲みのための最適な手法とは言えません。 やはり普通に抽出して比較、いわゆるABテストで判断する方が現実的だと思う次第です。 僕はコーヒースケールを4台ほど持っていますが、やはり同じ機種の方がABテストが行いやすいと思い、最近タイムモアのスケールの2台目を買い足しました。
例えばロガーを使って下記のようなプロファイルで焙煎したものから、1分毎の温度を切り出してチャートを作り、デジタル温度計で同じようなプロファイルを辿ってみます。
うまくやると、ちゃんと焙煎指数を一致させることまでは出来ます。
そしてこれをABテストで比較してみます。今回もやってみたところ、一見同じようにに見える2つの豆ですが、これがちゃんと差があるのですね。デジタル温度計で焼いた方は酸味が尖っており、明らかに少しキツイ味わいになっているのに対して、ロガーでRoRを一定の範囲に保ちながら綺麗に温度上昇させた豆の方は優しい酸味で冷めてからもとても美味しい、という結果です。
しかしデジタル温度計で焼いた方のコーヒーも、一般的に言えばかなり美味しい部類に入ると思うので、普通の人はこのレベルでも満足されるのではないかと思います。最後の10%、20%といったポテンシャルの引き出しにどこまで拘るか、ということにもなります。
焙煎は自宅でやっても奥が深いです。いや、むしろ自宅焙煎の方が奥が深いかも、です。
なんとすれば大半の焙煎豆屋さんは、効率優先でハンドピックもしないし、焙煎のプロファイルも同じものをどの豆にでも使ってしまったりしていると思うからです。