当乗馬クラブ会員のTが、全5回にわたってヴィバーチェの馬たちをご紹介する活動報告シリーズ。
ラストとなる第5回目にご紹介するのは、ヴィバーチェで働き天寿を全うしていった、思い出の中の馬です。
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剣(つるぎ)
ヴィバーチェの創設メンバーの1頭です。当時間借りしていた乗用馬牧場から譲り受けた馬で、
かつて競走馬として笠松で走っていた引退競走馬です。
元いた乗馬クラブでは障害飛越競技を担当しており、よくトレーニングされた優秀な乗用馬でした。
しかし、気持ちのあり方が変わってきてしまったのか、
しだいに「本当にうまいライダーしか乗せない」「ライダーが少しでも未熟な面を見せるということを聞かなくなる」というような気難しさを見せるようになります。
手を焼いたその乗馬クラブから話を受けた、当時間借りしていた乗用馬牧場がそれを受け取りました。
その馬の話を聞きつけた、当時の現場長ご夫妻を取り巻く人々が力を合わせてその馬を助ける形で、剣はヴィバーチェに移籍することになったのでした。
ちなみに、これがヴィバーチェ誕生のきっかけでもあります。
ヴィバーチェに来て、剣のために考え抜かれたトレーニングをこなし、少しずつ気性が治ってきた矢先。彼の前に、一人のレッスン生が現れます。
そのライダーさんは、体に障がいを持っていました。
そして、そのライダーさんが目を止めたのは、こともあろうに剣だったのです。
今はだいぶ良くなったけど、少し前までは、ちょっとでもうまく乗れなければライダーを拒否していた剣が、障がい者ライダーさんを乗せられるか…?
でも、本当にだいぶ良くなったし…。
ということで、いざとなった時の覚悟を胸に、場長先生たちはその障がい者ライダーさんを剣に乗せました。
やはり、自然で自由な動きをするのは難しいライダーさん。これまでの剣であれば、ごねていたかもしれません。
しかし、剣はそのライダーさんの事情を察したかのようにぐっと我慢する様子を見せたのです。
ライダーさんからの扶助がうまく届かなくても、ごねずにじっと待つ。
馬上でライダーさんのバランスが崩れても耐える。
ライダーさんの「それでも馬に乗りたい!」という気持ちを汲み取るかのように、わがままを耐えて最後までレッスンをやりとげたのでした。
これ以降、乗る人と心を通わせることを知った剣。
その背中でたくさんのお客さんを楽しませ、最期の時までヴィバーチェで穏やかに暮らしました。
先生いわく、ヴィバーチェで天寿を全うした馬はどの馬も忘れ難いけれど、真っ先に思い出されるのはこの剣だそうです。
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ここまでお読みいただきありがとうございました!
さて、プロジェクト終了まであと少しとなりました。
すでにリターンをご購入くださいました方、深く感謝申し上げます。
あなたのお心のおかげで、馬たちは今日も健やかに眠り、食べ、くつろぎ、そして働いております! ぜひその姿をご覧にクラブまでお越しくだされば幸いです。
また、ご支援をご検討くださっている方、誠にありがとうございます。
もしよろしければ、ヴィバーチェの馬たちを、また、馬たちとの触れ合いを楽しみに集う人々の場を、あなたのリターン購入にてお支えくだされば嬉しいです。
何卒よろしくお願い申し上げます。