2022/02/11 07:00

副編集長・中川です。
東京ではひと月ぶりに雪が降りしきった夜も明けての3連休入り、いかがお過ごしの予定でしょうか。
『モノノメ #2』のクラウドファンディングも残すところあと9日。本誌制作も大詰めに差しかかってきているところではあるのですが、ここに来てなんと……新企画の掲載が決定、しました……!

本来であれば、そろそろ印刷所へのDTPファイルの入稿がするする始まっていなければオカシいタイミングであるにもかかわらず、「今のこの目次に、足りないものは何か?」という自問自答の模索を、ほんとうに最後の最後まで諦められないのが、この雑誌の制作の愉しくもしんどいところ。

創刊号の「都市」特集につづき、対をなすようなアプローチでの「身体」特集は、関係各位のひとかたならぬ尽力によってボリューム的にもクオリティ的にも完全に目処がついたし、特集外の特別企画「47都道府県再編計画」や望外の縁で実現した『ドライブ・マイ・カー』鼎談なども取材のとれ高ばっちり。PLANETS CLUBの面々にも力を貸してもらった妄想企画「水曜日は働かない」なんて飛び道具まで持ち出して、連載陣のエンジンもかかってきた。
もう、充分すぎるでしょ。この先、3号4号と続けていくんだし、仮に2号でやり残したことがあったとして、次で回収すればいいじゃないか──。

そんな気分になりかけていたおり、宇野以下、編集部一同の心にどうしても引っかかっていたのが、「文学」成分でした。
前号『モノノメ 創刊号』では、作家の浅生鴨さん書き下ろしの超現実的なもうひとつの戦後日本での日常の裂け目を描いた中編小説『穴』が誌面中央のモノクロページに独自の存在感を築いていたのだけれど、そんなふうに異彩を放ちながらも、「モノノメ」という紙の雑誌のコンセプトを、意外な角度から浮き彫りにしてくれる創作もの。
その役割に相当するぴったりの案が、何度企画会議を重ねても見出せず、当初の校了予定ギリギリになっても台割の保留ページを埋められずにいたのです。

その『モノノメ #2』が探し求めてきた最後のピースとしてようやく辿り着いたのが、イラストレーターの久保田寛子さんでした。
久保田さんといえば、今年1月始まりの「ほぼ日手帳」のカバー「光を数える」を手掛けたことでも注目を集めるイラストレーターさんですが、前号掲載の『穴』でも挿絵を寄せていただいています。


愛らしさと暖かみがありながら、どこか透徹した文明批評的な風刺性をもまとったその作風に出会えたことは、『モノノメ 創刊号』のアートワーク面での大きな達成のひとつでした。なので、立ち上げたばかりの「モノノメ」という紙の雑誌の空気感を確かなものに育てていくためには、やはり久保田さんのイラスト作品が、2号には無くてはならないのではないか。
そんなふうに振り出しに戻るようにして、今度は久保田さん自身が制作してきたイラスト作品の世界観をより掘り下げる方向でのビジュアル中心の誌面企画が考えられないかと、改めて久保田さんご本人に相談を持ちかけてみたのです。

そこで、さまざまな表現手法にチャレンジしてきた過去の作品リファレンスを見せていただきながら、「これは!」と思い至ったのが、近代日本を代表する児童文学作家・小川未明の短編作品「眠い町」にインスパイアされたという一連の版画作品群でした。

世界を旅するケーという少年が、どんな人でも眠ってしまうという不思議な「眠い町」に立ち寄ってからの数奇な巡り合わせを描いたこの話は、青空文庫にも収録されています
「え? これで終わり?」というようなシュールな結末が印象的で、2011年の東日本震災で起きた原発事故後の情景とも重なってならなかったという久保田さんは、本作をモチーフとした版画の連作を作成し、2018年に京都で個展を行ったのだとのこと。

そこで『モノノメ #2』には、このときの久保田寛子さんの版画作品と小川未明の原文テキストとの、時をこえたコラボレーション企画を掲載することにしました。
久保田さんの作品歴の中でも、のちにzineとして発表した漫画作品『タコのくに』への着想源にもなったという物語とビジュアルの相互触発を、どんなふうに誌面に結実できるか。
まさにこれから模索していくところなので、久保田さんのファンの方にも、ぜひ手に取って確かめてみていただきたいと思います。


『モノノメ #2』のクラウドファンディングはこちらにて実施中です