モン族の村の小学校でのお話のつづき(前編はコチラ)子どもたちが本に夢中になり、だんだんとラオス語が出来るようになってくるのをみて、学校の先生たちは、もっと図書室の活動に力をいれるようになったそうです。先生が「紙芝居をやるよ~」と言ったら、子どもたちがワ~っと集まり、並んで座りました。すると、何人かの子どもたちが手に同じ紙芝居を持っていました。不思議に思い見ていると、先生が動かすタイミングに合わせて、自分の手元の紙芝居を一緒に動かしていました。後列の子どもたちの手元に注目「自分でも演じたくて、ああやって練習しているのよ」と先生が耳打ちしてくれました。自分で演じることも、紙芝居の醍醐味のひとつです。あれ!! 場面がズレているよ!そう、先生が演じる紙芝居に夢中になって、うっかり自分の手を動かすのを忘れてしまいました。子どもたちの目は先生の紙芝居に釘付け何回も観た作品でも、楽しいものは楽しいよね!みんな紙芝居に夢中です。その後、子どもたちも紙芝居を披露してくれました。「ドキドキしたけど、うまく出来たよ」ラオス語で紙芝居を演じる子どもたちは、とても堂々としていて、自信を持っている様子です。人前で演じるのは「自己表現」のひとつ。そして、自己表現が出来るようになることは、生きるうえでの大切なスキルのひとつです。ラオスの学校では、ラオス語で授業することが義務付けられており、母語の違う少数民族の子ども達の学習には大きなハードルがあり、退学率の高さも大きな課題となっています。そんな子どもたちを、紙芝居や絵本が手助けしてくれるのです。先月、北部のホアパン県で、図書室開設支援をした時のこと。(この学校も、児童の大半は少数民族です。)『これはジャックのたてたいえ』の紙芝居を、スタッフが太鼓でリズムをとりながらやってみせたところ、途中からは子ども達も声を合わせて、大合唱となったそうです。一緒に居た先生方は、大きな声でラオス語を発声する子どもたちの姿を初めて見て驚いていたとのこと。右のスタッフが持つのは、ミニサイズの紙芝居です。通常サイズの紙芝居がない為、小さなもので代用しました。大きな紙芝居なら、もっとたくさんの子どもたちが一緒に楽しむことが出来るでしょう。 1部でも多くの紙芝居が子どもたちの元に届けられるように、引き続き、ご支援をよろしくお願いします。【ラオスのこども事務局スタッフ赤井】
ウイルスや戦争、さまざまな脅威と立ち向かわなくてならない現代。どんなところで暮らしていようと、情報を得て、自ら考え、行動する力が必要となっています。その“力”は、生きる上で欠かせない「ライフスキル」です。そして、その力=識字力を得るための一歩となるのが“絵本”ではないでしょうか。ラオスは50もの民族が暮らす多民族・多言語国家です。家庭ではそれぞれの民族の言葉を使いますが、学校では、公用語であるラオス語(ラオ語)で授業がおこなわれます。母語とは異なる言語の教科書を使って、学ばなくてはならず、厳しい状況ですが、ラオス語を習得しなければ、進学することもできません。好むと好まざるとに関わらず、ラオス語を習得することが、ラオス社会で生きていく力となるのです。(休み時間に教室の前で遊ぶ子どもたち)ラオスに暮らす少数民族のひとつ、モン族の村の小学校を訪問した時のこと。この学校の児童は全員モン族の子どもたちで、教員も半数以上がモン族出身でした。私たちが最初にこの学校を訪問した際、図書室の建物と本棚はあるものの、本が雑然と置いてあるだけで、あまり使われていない様子でした。(図書室の外観)子どもたちに質問すると、もじもじとしていて、返事がなかなか返ってきません。インタビューに付き添ってくれた先生は、「この子は、まだラオス語で上手く答えられないの」と教えてくれました。この時は、図書室や図書のさまざまな使い方を先生達に伝えて訪問を終えました。その後、約1年後に同じ学校を訪れたところ、驚く変化がありました。最初の訪問時、子ども達は図書室に入っても、多くは絵を見ながら頁をパラパラとめくっているだけでした。 本を読んでいる子も、指で一つひとつ文字をたどり、声を出しながら読んでいるような状態でした。子どもが文字を覚えたての頃や、大人でも外国語を勉強し始めの頃など、このような読み方をしていませんか?ところが次の訪問では、指は使わず、すらすらと読んでいて、黙読している子どもも増えていました。絵を見るだけだったり、文字をたどっていた子どもたちが、本のおはなしを楽しんでいる様子に変わっていました。インタビューでも、好きな本を尋ねてみたら、タイトルが次々に出てきます。インタビューを受けているときにリラックスして堂々とラオス語で答えている様子に驚きました。「本を読むうちに、子どもたちがだんたんとラオス語が出来るようになって、授業もよく理解できるようになったのよ」と、先生達も嬉しそうに話してくれました。たった1年での大きな変化に驚きましたが、変化はこれだけではありませんでした。【次回へつづく】
私の生まれた村には図書館も本屋さんもなく、大人になって絵本を読むようになりました。絵本や紙芝居は子どもの物だけではありません!子どもにも解る言葉で書かれた、赤ちゃんからお年寄りまでのもの。そしてその人を大きく育ててくれる力があるのです!「絵本も紙芝居」も「ごはん」と同じです!絵本を読む。紙芝居を楽しむ。これこそ平和そのもの。モニャモニャ戦闘機を多額のお金で買ったり、美しい海を埋め立てるのは平和のためと言うこの国。絵本を読んで、紙芝居を演じてあげたい!「えほん」は「ごはん」ですもの。長野ヒデ子[写真・品田裕実]*********************絵本・紙芝居作家の長野ヒデ子さんは、やべみつのりさんと一緒にラオスへ行き、紙芝居セミナーの講師や、ラオス初の「紙芝居コンクール」の審査など、作り手の育成や普及にたくさんのご協力いただいています。絵本『とうさんかあさん』(葦書房/石風社)で日本の絵本賞文部大臣奨励賞、『おかあさんがおかあさんになった日』(童心社)で産経児童出版文化賞、『せとうちたいこさん デパートいきタイ』(童心社)で日本絵本賞を受賞。紙芝居に『ころころじゃポーン』『おせんべやけた!』(童心社)など、たくさんの作品を作られています。応援メッセージ、本当にありがとうございます。
みんな熱心に何をみているのでしょう?紙芝居に釘付けのラオスの子どもたちです。びっくりしている子、ハラハラしている子、じっと睨みつけている子。となりの子に「ほら!」って言っている子。そして後ろの方でえらそうに腕組みしながらも心はすっかり紙芝居にもっていかれてるやんちゃ坊主。みなさんにも、こんな時間はありましたか。ここはラオスの小学校。私たち「ラオスのこども(ALC)」のスタッフが紙芝居を演じているところです。やんちゃ坊主の一派は中学生で、最初は「なんかやってるぜ」と遠巻きに見ていたのが、いつの間にか夢中になっていました。紙芝居『これはジャックのたてたいえ』は、イギリスのマザーグースの詩The house that Jack builtに、やべみつのりさんが絵を描いたものです。そしてラオス語版は、ラオスの作家・詩人であるドゥアンドゥアンさんが訳しました。この詩は「積み上げうた」とよばれる形式で、文章に後から文をどんどんと継ぎ足していく言葉遊びとなっています。楽しく見ながら、一緒に唱えるうちに、どんどん言葉を覚えていくものです。そして、豊かな口承文化をもつラオスの人々は、これを、伝統のスーン(詠唱)と結びつけました。太鼓をたたき、調子を合わせながら、みんなで「これはジャックのたてた家~」と詠唱するのです。イギリスの伝承詩が、日本伝統の紙芝居と結びつき、ラオスで太鼓と詠唱と繫がったのです。それぞれの伝統が合わさり、もっと楽しくなって、子ども達に届いたのを目の当たりにした時の驚きと嬉しさは言葉になりません。もっと、たくさんのラオスの子ども達にこの楽しさを届けたい。今、コロナを初めとした、心が重たくなるような出来事が多い中で、ラオスの子どもたちに、何かに夢中になり、心から楽しむことが出来る時間を過ごして欲しい、紙芝居や本に触れることで自分の世界を広げて欲しいと願い、このプロジェクトに取り組んでいます。どうぞご協力をよろしくお願いいします。※紙芝居『これはジャックのたてたいえ』日本語版はトロルで出版しています→http://troll-ren.net/publics/index/17/
本を読むことは、僕にとって大きな人生の楽しみです。本を通してたくさんの人の気持ちを知って、自分自身を知ることができました。あたりまえに本を読むことができるのは、とてもありがたいことなのだと思います。ラオスの子どもたちが本を楽しむことが出来て、どんどん世界が広がって行くことを祈っています!矢部太郎************************芸人・漫画家の矢部太郎さんは、やべみつのりさんの息子。『大家さんと僕』で第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞。お父さん(やべみつのりさん)と幼い矢部太郎少年の思い出を描いたエッセイ漫画『ぼくのお父さん』(新潮社)でも、注目を集めています。あたたかい応援コメント、本当にありがとうございます。