2023/03/24 11:05

弊社が運営をしていた革漉工場の名前は「押上革漉」と言います。
先代から事業を引継いだ時に、職人も愛着のあるこの名前を引き継ぎました。

再度の説明になりますが、、、
革漉とは、不揃いな革の厚みを指定された一定の厚みに割る(スライスする)作業のことです。

実は私が引継ぐ前からこの押上革漉は漉き加工の技術の高さには定評がありましたし、私自身もそれを実感している一人でした。

先に話をしておくと、漉き加工をする上である程度の厚みの誤差は必ず出てしまいます。
それは人間が作業しているというのはもちろんですが、革の作られた工程の違い、厚み、硬さ、牛革や山羊革、羊革など種類の違い等、天然素材である革は不確定要素が多すぎるんです。
それを職人たちは積み重ねた経験値で作業をします。失敗が許されない中で、毎回一か八かみたいな作業を神経をすり減らしています。

例えば1.0mm指定で加工を依頼した場合、どの漉き加工場でもどうしても誤差±0.3㎜でてしまいます、革によってはそれ以上出ることもあります、押上革漉はその誤差が少ない工場でした。

先ほどの1.0mm指定の話だと、±0.1㎜で仕上げることが出来ていたのが「押上革漉の技術力の高さ」だと思っております。

職人はただ漉き加工をするだけではなく誤差が過分に出てしまうと製品作りに影響が出てしまう事やその後の型押などの二次加工がしづらくなったりということをよく理解してくれていました、なので自分の経験値を最大限発揮して誤差を少なくすることに注力していました。
もちろん人為的なミスや機械の不具合、革の質などで不揃いになってしまった事も多くありますが…

特に1.0mm以下の漉き加工が押上革漉の得意とするところでした。

これは革素材をカット売りしているお客様とのやり取りですが、押上革漉がなくなってから0.6mm漉きが安定しなくなり、工場が再建するまでに0.6mmの販売を控えることも考えているという話を聞きました。

ここ最近は革製品も軽量化が進み厚みを薄くすることの要望が多くなりました、その中で今回の火災で押上革漉の技術が再度認識してもらうきっかけになったと思っております。

そういった要望を聞くと改めて再建に向け頑張っていきたいと思う原動力になります。