2022/04/11 10:51

2022年4月現在、日本では新型コロナウィルスの問題が社会を覆っています。日本全体の問題になっているので、日々のニュースもそれが中心になっています。

でも、日本には数多くの社会問題があります。環境、貧困、少子高齢化、住宅、差別などなど。どれもこれも官民一体となって解決していくことばかり。個人個人の力は、小さいけれど、集まると強いですよね。あなたは、自分の仕事が、どの社会問題の解決につながっているか、考えたことがありますか? そう考えて仕事をすると、またちがったやりがいを発見できますよ。

他に、寄付やボランティアの形でも良いので、あなたは、一社会人として、どの社会問題の解決に取り組んでいますか? そういうことを選ぶ際、あなたはどの社会問題に注目するでしょう?

もちろん当事者なら話は早い。例えば、介護の問題を抱えている人にとって、介護福祉の社会問題は、生活に直結していますよね。貧困なら貧困問題、公害の被害者なら公害問題というように、その人の中でウエイトが高いんです。

では、当事者ではない人たちは、何を支援しようとするでしょう? その時に選択肢に上がらないのが、その人にとって「見えない問題」です。見えない、知らない問題を解決しようと立ち上がる人はいませんよね。

社会問題は有名なものから解決されていくーある本に載っていた言葉です。

認知症の対策が進んだのも、発達障害の研究が進んだのも、有名になったからだと、私は感じ、失語症についても、まずは有名にしなくては!と思いました。それで「失語症の日」を作り、承認してもらったのです。もちろん、障害を見世物にするという意味ではありません。色々な人に知ってもらわないと、日本全体の社会問題解決のスタートラインにさえ立てないと感じたからです。

もちろん、記念日にしたからといって、一気に注目を浴びることはありません。でも、毎年「失語症の日」に皆が自分たちにできることをしていけば、いつか、日本人全員が「失語症」のことを知っているという状態になると信じて活動しています。

今日は、委員のメンバーを3人紹介します(^O^)/

言語聴覚士
三鷹高次脳機能障害研究所所長

皆さん、初めまして。臨床経験40年の言語聴覚士・医学博士で、本委員会委員中、唯一の失語症経験者です。2009年7月、単身赴任先の神戸で発症しました。

私は、専門家として、失語症の状態を想像し、対象の方のお気持ちを考えて、リハビリテーションをしてきたつもりでしたが、言いたいことがうまく言い表せないときに、どんな状態になるのかを、自分自身が失語症になって初めて知りました。そして、ご本人の訴えに対して、思い込みや単なる想像で対応していたことを、心から申し訳なく思いました。

失語症に加えて、体の運動麻痺や感覚障害が強く、以前のように自由に動けない状態は本当に辛いものです。失語症のある方が高次脳機能障害も合併していたら、さらに大変です。周囲の人に分かってもらうこと、助けてもらうことが、とても難しくなるでしょう。

私は運よく命が助かりました。そしてこの13年間「脳卒中サバイバー」として生活してきました。自分の体験をお伝えすることで、少しでも皆さんのお役に立ちたいと願いつつ、本を書きました。このクラウドファンディングのリターンになっている3冊です。ぜひお読みください!

岩手県盛岡市で「言葉のかけ橋」という失語症デイを運営しています。今年で17年目です。言葉のかけ橋では会話を中心にしたグループワークなどの活動を中心に、毎日、失語症のある人たちと楽しく過ごしています。

失語症友の会の事務局も病院勤務時代から担当しており、失語症のある人や家族の交流会などを支援してきました。友の会では年に1回程度、各地の失語症グループとの交流を目的にした旅行に出かけてきました。

私が地域活動に関心をもつきっかけは、遠藤尚志先生(故人)との出会いです。遠藤先生は卓越した発想力と行動力で、保健師など、関係者をうまく巻き込みながら、失語症のある人たちの仲間づくりを全国で展開されていました。

今まで、言葉の障害は重くても、周りに良い影響を与え続けている多くの人たちに出会ってきました。

現在、コロナ禍の中にあって、友の会の活動はほとんど休止していますが、失語症デイは、感染対策を行いながら、定期的に仲間と出会う場所を失語症のある人たちに提供することができています。

失語症デイなど、言葉の不自由な人たちが安心して集える社会資源が、全国各地に拡がってほしいと願っています。


私の失語症支援について

私は川崎医療福祉大学の言語聴覚療法学科の助教をしております小谷優平と申します。

以前は、生活期の言語聴覚療法として失語症者向け通所サービスや、訪問リハビリテーションを提供しておりました。その際、失語症者への支援不足を肌身で感じ、失語症を持つ方々の支援実態の調査や、在宅の失語症リハビリテーションの効果検証を行う研究を始めるきっかけとなりました。

地域における共生社会が必要であることは周知の事実ですが、失語症を持つ方々に寄り添う姿勢は未だ十分とは言えないのが現状です。それは、失語症特有のコミュニケーション障害がゆえに、社会に問題点について発信できないことが一因であると言われており、私たちのような者が失語症者の社会的エンパワメントを高める活動をする意義は大きいと感じております。失語症の日の制定は、正にその一例です。 

わが国では、諸外国に比べて文化の違いなども影響し、失語症を持つ方々へのリハビリテーション・支援や失語症者の評価方法において改善しなければならない点があると感じています。

私は、失語症の日制定委員会の活動と共に研究の側面からも失語症を持つ方の支援に尽力してききたいと思っております。


失語症のことをよく知らないという人たちもいますが、一方、紹介した方たちのように、失語症について社会との間にある障害を取り除こうと奮闘している人もいます。でもやはり、世間一般的にはマイナーな障害で、制度改革や福祉対策が遅れがちです。どうか、一人でも多くの人に知っていてほしい。いやむしろ、失語症のことを知らない人が一人もいない、そんなふうになってほしいと願っています。皆さんの力をお貸しください!