2022/06/11 16:56

こんにちは 馨子です 

今日は韓国に住むアーティスト ハ・ジョンナムさんに活動報告を書いていただきました。

ハさんが用意してくださった返礼品にはお祭りの中で作品に参加できるものもあります。

ハさんが関わってきた土地、ハさんにしか生み出せない作品を感じられる活動報告になっています。

それではどうぞ 

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大町で育ち、今は韓国に住んでいるハ・ジョンナムです。

 原始感覚美術祭に参加して今年で8年目。毎年、毎回、祭を通して感じる思いは宇宙の様です。 私はクラウドファンディングにて、二つの返礼品をご用意いたしました。

両方とも松崎和紙と韓紙、二つの故郷の紙を使った作品となります。

 二つの作品に対するエピソードや思いを、皆さんと共有できれば幸いです。

 袴紙にまつわるおはなし 

昨年、ご縁があり佐渡島でのさどの島銀河芸術祭に参加しそこで古くから伝わる「袴紙(はかまがみ)」と出会い作品を作りました。

「袴紙・下げ紙」とは佐渡島などで古くから伝わり、お正月に神棚から下げたり、鏡餅に敷いたりする縁起物の切り絵です。

「袴紙」を切る際、古くから伝わっている図案がありその図案に応じて紙を切り抜きます。この図案には作家がいません。 

というのは、佐渡島には沢山の集落があり、それぞれ一番の器用な人が「袴紙」を切り、現在まで伝わってきたからです。 

佐渡でも袴紙について知っている人が少なかっのですが、それでも沢山の人の協力を得て、岩谷口に住む田中次英さんに出会うことができました。 

田中さんには大切なエピソードがあります。

数年前、お父さんが亡くなった後に、遺品の整理をしようとある引き出しを開けてみると、お父さんが遺した「袴紙」の図案を見つけたそうです。

その時から「袴紙」に関心を持ち、図案を集め、この風習を次世代にも残そうと子供達に教えているそうです。 

佐渡島では、制作の一部として、作品に使用される「袴紙」の新しい図案も制作しました。 実際、袴紙の図案を作ることは大変な事でした。先人の作った図案は素晴らしく、美しく、そして切り易いのだと再認識しました。 

図案では、韓国の縁起物、韓国の障子枠の模様、ハングルなどを入れて、元の図案とコラボレーションもしました。 

佐渡島での制作が終了し、その貴重な図案も私の故郷である信濃大町に持ち帰ってきました。

今回、西丸震哉先生の「原始感覚」という文字の力、そして北アルプスをモチーフにした、原始感覚オリジナル図案を作成しました。 

袴紙には松崎和紙と韓紙(ハンジ)を使用します。 佐渡島に伝わる袴紙の風習を皆さんと共有し、現代人が無くしつつある「原始感覚」が、皆様に届きますようにと、願いを込めて袴紙を切りたいと思います。

「パフォーマンスに参加_現代美術の一部分となる体験」を企画したきっかけ 

コロナの感染原因の一つとして、空気内にあるウイルスを通してて人々に感染します。

今まで攻撃性のなかった空気が、人を襲う。 

そして、人はマスクをつける様になりました。ーーーー 

1年前、ソウルでも自然が豊かな郊外に引っ越しました。 

外を歩くと木の匂いがし、自然に囲まれている「きれいな空気のある場所」のはずでした。 

でも、外を歩きながらその空気を一度も吸う事が叶いませんでした。 

なぜならマスク着用義務を守らなければ、罰金という制度ができたから。 

そこで想像してみました。 

人間が入れるくらいの「シェルター」を和紙と韓紙(ハンジ)で作ってみよう。 

これは自然の恵みで仕上がった、ナチュラルなシェルターです。 

マスクなしで中に入ったら、その中に漂う空気を思う存分吸えるでしょう。 

その空気は、森からの贈り物。 

大町や韓国、それぞれの場所の土や水そして空気を通してできた松崎和紙と韓紙。

優しい空間に包まれ、まるでお母さんのお腹の中に入る様な感覚を感じる事ができるかもしれません。

紙を通して、大地の自然を感じ、「良い空気」を吸う事ができる事を願っています。

ハ・ジョンナム 

在日コリアン3世。大町と韓国、二つの故郷を持ち、作品の素材も二つの故郷で作られた紙を使用し、インスタレーション、パフォーマンスを行なっている。 さどの島銀河芸術祭、Baggat Art 他