「表現の不自由展・その後」開催に寄せて
志田陽子(武蔵野美術大学)
昨年2021年の7月、「表現の不自由展・その後」のプレ・イベントで、講演会の講師を務めさせていただきました。そのときには、2019年の「あいちトリエンナーレ」で起きたような悪質な妨害はもうないだろうと思って、素直に「表現の自由」の社会的意味についてお話をしました。異論がさまざまに存在することを許容する社会づくりが大切なのだと。
しかしその後、やはり妨害によって展示が中止を余儀なくされました。主催者が長い時間をかけて準備してきた企画が、ほんの数時間の怒声や数通の脅迫文書によって、場を失ってしまったわけです。
展示内容に批判がある人は、批評などを通じてその批判を平穏に表現すべきで、表現の場を封じるような妨害は法的に認められない、ということを、まだまだ言い続けなくてはならない社会なのだ、そうだとするとこの「表現の不自由展」開催の社会的意義は依然として高いのだな、と思わせられました。
しかし、昨年の大阪での会場使用を認めさせる裁判所決定、そして東京・国立市での展示実現を見ると、社会の目は少しずつですが、変わってきていると思います。この流れをしっかりつかんで固めてほしいと願っています。開催、おめでとうございます。