2022/08/25 09:30

満洲国には各宗派の寺院や神社なども多数進出しました。満洲に暮らす日本人は約200万人にものぼりましたから、彼らの精神的な安定のためにはこうした宗教をつかさどる機関は必要不可欠だったからです。

首都の新京(今の長春)に東本願寺が寺院を建てたのは1937年(昭和12年)。写真を見てもわかる通り、完全な日本式の建築でした。

満洲国が日本の敗戦によって消滅した後もこの東本願寺新京別院の建物はそのまま残りました。中学校の校舎などに転用されて使用されていたようです。

しかし2014年、土地使用権をもつ開発業者がここにビルを建てるために突然ブルドーザーで整地を始めました。そのことに不信感を抱いた住民が当局に通報。なぜならこの建物は市が文化財として保存していたからです。

驚いた市は開発業者に対して工事中止命令を出しました。許可なく工事しようとしていましたからそれは当然のことです。しかし市当局の理由が振るっています。「これは日本が中国大陸を侵略した証拠としてそのまま保存しなくてはいけないもの」というのが理由です。

いずれにせよ工事はストップし、私が訪れた2016年の段階でも、建物の周囲の土地をならしただけで放置されたままでした。国や市がいくら条例で文化財として保存に努めようとしていても、何かのはずみで壊されてしまう可能性はいくらでもあります。ましてや文化財に指定されていない民間の建物などは、今後どうなってしまうのかまったくわかりません。

私が焦りながら撮影を続けてきたのは、そういうことがありうるからでした。