街を歩いていると、「あ、この建物は戦前に建てられたものだな」と一目でわかることも結構あります。近代建築のことをいろいろ勉強しましたから。
でも、何の建物だったのかを判別するのはこれがけっこう難しい。はっきりと描かれた地図があればかなり助かりますが、地方都市などではそのような地図が存在しないか、存在してもすごく簡易なものしかなかったりします。
さらに難しいのが、戦後になって改築されたり、増築されたり、塗装が変えられたりしたもの。手元に当時の資料があったとしても、何となく似ているけれども、違うともいえる、う~んということがあります。特に民間の建築などはもともとの資料自体があまり残っていなかったりして、頭を抱えることになってしまいます。
帰国して、国会図書館にこもって、書籍や資料を漁ったりするのですが、やっぱりよくわからない。そういう建築物についても、わりと原型に近いようなものはできるだけ写真集に収録するつもりです。
無責任なんじゃないかと、お叱りを受けるかもしれないのですが、おそらくこうした建物は数年、数十年以内に間違いなく取り壊されてしまうことでしょう。老朽化で、再開発で。だから写真だけでもとりあえず資料として残しておきたい、というのが私の考えです。
写真集ができてから、どなたかがこの本を見て、「あ、この建物のことを知っている。でも著者は間違ったキャプションを付けている」と、報告していただくことを実は今から楽しみにしているんです。そしてもし再版する機会があれば、訂正後の正しい解説を加えたいなと。と同時に、その建物のことを知っているその方と、満洲とはいったい何だったのでしょうかね?と議論してみたいなあ。