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誰でも本が作れる、本が発行できる、出版社が作れる革命

現代の出版のシステムに反逆する旧時代的な手づくり工法によって、真の価値をもった作品を読書社会に投じていきます。誰でも本が作れる、誰でも本が発行できる、誰でも出版社が作れる革命によって作られる本です。

現在の支援総額

37,420

124%

目標金額は30,000円

支援者数

14

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2023/04/25に募集を開始し、 14人の支援により 37,420円の資金を集め、 2023/05/18に募集を終了しました

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現在の支援総額

37,420

124%達成

終了

目標金額30,000

支援者数14

このプロジェクトは、2023/04/25に募集を開始し、 14人の支援により 37,420円の資金を集め、 2023/05/18に募集を終了しました

現代の出版のシステムに反逆する旧時代的な手づくり工法によって、真の価値をもった作品を読書社会に投じていきます。誰でも本が作れる、誰でも本が発行できる、誰でも出版社が作れる革命によって作られる本です。

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翼よ、あれが巴里の灯だ


第三幕 

創作の力を取り戻した彼女の書斎、ドアを開けると木組みのテラスになっている。彼女はその二つの空間を移動しながら独白していく。


「アンナは酒樽のなかでおぼれていた私を救い出してくれたのよ、私の体の中からすっかりアルコールはしぼりだされていった、そしたら水がおいしかった、こんなに水がおいしかったのかって思ったわよ、朝のにおい、風が運んでくる森のにおい、草の香りがする、もう大丈夫よ、生命のリズムがもどってきたの、もう私はあなたの背中に背負っている十字架がしっかりと見えるわよ。あなたに立ち向かうだけの人間になったの。話してちょうだい。あなたの七十年の人生のドラマを。アンナはあふれて出くる泉みたいに話してくれたわよ、朝のテラスで、森を散策しながら、昼さがりのポーチで、夜の居間でね、それは大きなタペストリーを織り上げるように話してくれた。ドイツなまりの癖のある英語で、朴訥で力のある言葉で、信念と誠実の言葉で。

アンナは二十五歳のとき、ドイツからアメリカに渡ってきた、古い大陸に生まれた、閉塞の社会に生きる若者たちにとって、アメリカは希望の大地だったわけよ、ニューヨークの18丁目六番地のイタリア人の経営するベーカリーに職を得て、いつの日か自分の店をもちたいっていう希望をいだいて働いていた彼女の前にあらわれたのが、彼女より一歳年下だけど、たくましく、誠実な大工のハンプトマンと恋に落ちるのよ、二人は堅実だった、彼らの恋愛はまず結婚するための資金をつくろうということからはじまっていくのよ。二人はこつこつとお金をためて、彼らのすむ住居を手にしてから、それで、友人たちを招いて、友人たちに祝福されて結婚するのよ。この二人の堅実な生き方をみてよ、これはとっても重大な視点なのよ、ハンナの夢は自分のベーカリーをもつことだった、パン作りの技法を磨き、その店の開業資金をこつこつとためて、もうすぐその夢にふみだすというときに、突然、ハンプトマンは逮捕されるのよ、二年も前に起きた、アメリカ中を揺るがした、リンドバーク・ジュニアの誘拐事件の犯人として、なんなんだ、これはいったいどういうことなんだと叫ぶハンプトン、まったく身に覚えのない犯行が次々に彼に貼りつけられて裁判にかけられる、ハンプトンはその裁判でも一貫して無罪を叫ぶけれど、陪審員は全員ハンプトンに有罪の判決を下す。アンナも懸命にさけぶ、夫は無実よ、夫は何もしてないの、何もしていない夫がなぜ死刑判決なの。そんな叫びもむなしく、夫は、電気椅子に座らされ、二千ボルトの猛烈な電流をながされて処刑される、そのときアンナは三十八歳、それから三十年間、彼女は夫の無実をはらすための戦いをつづけている女性だったのよ。

アンナが懸命に話するその磔刑の人生に耳を傾ける時、酒におぼれていた自分がなんて愚かな、腐った、ぼろきれみたいな人間だったのかって思ったわよ、心がふるえた、心がもうエンジンをかけたみたいにぶるぶるとふるえた、作家としての生命がめらめらと燃え上がってきた、作家として立たねばならない、これこそ私が書かねばならない、激しく突き上げるものがありながら、私はだらしなくだらだらしていたのは、大きな壁があったからなのよ、私はフィクションの作家なのよ、フィクション作家は、タイプライターの前に座って、想像力で、自分のなかに育っていく物語を打ち込んでいけばいいのよ、だけど、アンナのタペストリーを書くためには、それまでの私の文体を打ち壊さなければならない。私は作家としての文体をうちこわすという私自身の革命が必要だった。そんなことで、その仕事に取りかかるのをぐずぐずしていたら、とてつもない本がベストセラーになって登場してきたじゃないの、トルーマン・カポーティが書いた「コールドブラッド」が、カンザス州のアイダホという小さな村で起こった一家四人が殺害された事件をえがいたノンフィクション、カポーティってもともとフィクションの作家だったのよ、ところが彼は一大変革をとげるという芸当をやってのけた、彼はその事件を描くために徹底的な取材からスタートする、アメリカのド田舎アイダホまで何度も足を運び、その地に行われた裁判にも欠かさず出かけて、二人の殺人者にも何度もあって、彼らを収容した刑務所まで足をはこんで、独房で殺人者とキスしたりしている、そうなのよ、ノンフィクションを書くには、まず足を使って取材からのスタート、そのことがなかなか踏みだせなかったけど、「コールドブラッド」の登場で私も、ようやくエンジンをかけて、アクセルを踏み込んで、リンドバーク・ジュニア誘拐事件の取材からスタートさせるのよ。

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