2022/10/27 10:56

食べて遺す景色

生きていくことが食べ続けることだとしたら、食べるものを選ぶことは私たちの生き方を定めていくことと言っても過言ではないと思います。
頭で理解させる知識や情報ではなく自然と腑に落ちるような感覚を大切にして、生きていくこと・食べていくものを自分の美意識によって選択していくことは、この情報化が進んだ社会では、これまで以上に難しいことになってしまったのかもしれません。それぞれの選択に絶対的な答えはないけれども、少しでも豊かな暮らし・生き方に意識を向けると、なにを選びとってゆき、同時になにを手放すのかという問題に行き着くのではないでしょうか。

私たちでじま芳扇堂は、酒造りを生業としています。
それも日本酒の源流である「どぶろく」を出島のまちなかの小さな工房から夫婦二人で醸してゆきます。
たくさんは造れません。少しお待たせしてしまうこともあるでしょう。
それでも、皆さまに美味しいお酒を、愉しい食卓を、そして美しい景色を伝えていくために真心を込めて一つ一つお米をお酒に醸してゆきます。

どぶろくはお米を原料とした日本の最古参の伝統酒です。
稲作が伝来した1万年以上前から日本人の暮らしとともに育まれて、私たちはその恩恵に与かっています。
その米が実る田んぼは、令和現在どのような状態かご存知の方も多いかと思います。
日一日と増え続ける耕作放棄地と減り続ける就農人口。
日本の農業の未来には明るい話題よりも暗い話題の方が多いかもしれません。

でも、私たちは知っているのです。

未来へ向けて現在をひた走る情熱的な農家さんがいること、その土地、その風土、その歴史に根ざして先人たちの想いを受け継いで次世代へ紡いでゆく人々がいることを。
私たちでじま芳扇堂もその一員でありたい。そのような生き方・在り方を目指してゆきたい。
だから、私たちはお米をお酒に変えて届けてゆこうと思います。
どぶろくは素材をいっさい無駄にせず、余すことなく活かし味わい尽くす欲張りなお酒です。
五感で観じる、そのすべてのものが私たち自身を形成していくとしたら、どぶろくはその全てを余すことなく包み込んで、届けて、かたち創っていくことができるはずです。

だからぜひ、まずは味わってみて欲しいのです。
食べるものを選びとること、生きる道を決めること、そして未来になにを伝えなにを諦めるのかを決心すること。
きっと食べ続けることでしか得られない、遺していけないものばかりだと思います。

ともに酒を、人生を、まるごと味わい尽くす仲間を、まだまだ募集しています。