今回はSALASUSUの工房で、日々作り手女性たちにトレーニングを提供するトレーナースタッフであるチョモランに、工房での作り手の様子ややりがいについてインタビューしました!
● ライフスキルトレーナーとしてやりがいを感じるとき、印象に残っていることを聞かせてください。
一人、心に残っている女性がいます。工房を卒業後、別の地方で働くことを決めたけれど、新生活でちょっとトラブルがあったんですね。そして私たちのところに、アドバイスを求めてやってきました。
そのことがとても嬉しかった。だって彼女は、そこで立ちすくんで辞めてしまうのではなく、助けを求めてきてくれたんです。そして、私たちに相談した後、彼女自身で意思決定をしていました。
私たちのトレーニングの中で大切なトピックの一つに「問題解決」があります。授業の中で、私たちは問題解決の方法を練習します。問題を恐れたり、自分一人で解決しようとするのではなく、例えば、問題の根っこを見つけるとか、誰かにアイディアを求めたり、情報をもらったりする練習です。だから彼女のように、作り手女性が私たちが授業で伝えてきた考え方を実生活に役立て、私たちにアドバイスを求め、彼女自身で意思決定をしたというのは、とても喜ばしいことでした。
● トレーニングをする中で難しいところはどんなところですか?
難しいところはたくさんあるのですが、やはりトレーニングコンテンツの開発関連が難しいですね。
教師が完璧に話し合って意見をまとめてから授業に臨んでも、作り手の女性たちは私たちが使っている言葉の意味すら分かっていない、と気付くことがあります。実際に授業をやってみるまで、内容が良いかどうかわからないという難しさがあります。
また、内容や言葉だけではなく、教師の柔軟さも課題になることがあります。作り手女性はそれぞれですので、どこまでわかっているのか、意見を言うときにどの程度自信を持っているかなど、それぞれ違います。教師は、授業を進めて行く上で、生徒と状況によって柔軟に対応しなければなりません。
女性たちに授業をするためには、教師は、その授業の主旨や目的についても、明確に理解していなければなりません。しかし、それを教師たちに理解させるのもまた難しいことなのです。
ライフスキルは、なかなか目に見えづらいスキルなので特に教えるのが難しいですね。
● よりよい授業のために、どんなことに取り組んでいますか?
私たちができる最も大切なこと、ひとつは「授業後の振り返り」です。
以前は、「教師や授業内容をどのように向上させるか」ということにだけ注力していました。それが一番大事なことだと思いこんでいたんです。
しかし、教師が良いトレーニングを提供することよりも、作り手が授業の中でしっかり「学んでいるか」ということの方が重要だということに改めて気づきました。
そこで、私たちは教育内容だけでなく教師自身を成長させるべく、新しい方法「授業研究」を取り入れるようにしました。
今は教師の教育スタイルや内容ではなく、「作り手女性の学び」に注目しています。いかに、またなぜ彼女たちは学ぶのかといったことを観察・考察しています。
そして、十分理解しているのに意見交換ができない女性についてはそれがなぜなのかなどを考え、授業後に教師同士でふり返りをします。
作り手女性たちの学びに注目するようになってから、教育内容がよくなっただけでなく、教育しなければ、教育スキルを向上しなければというプレッシャーから教師たちが解放されるようになりました。
● 最後に、SALASUSUで今後目指したいことはありますか?
ただただ、みんなに良いトレーニングを提供して、成長してもらいたいと思います。ライフスキルの意義を知り、日常生活に役立てられるから。
私の周りの人はみんな、特に作り手女性や工房のスタッフは、ライフスキルをもっと向上させることができる。ライフスキルは誰にとっても重要なもので、自分自身で伸ばすことができるのです。
チョモランが言うように、教育のカギは、いかに深く生徒(SALASUSUでは作り手女性)が学んでいるかに注視することです。
昨年から4年間、「職業訓練校におけるライフスキル教育の提供」を、カンボジア労働省とともに実施してきました。
工房で実践して得てきた知見を、工房の外の人々にもっともっと伝えていきたいと、私たちは考えています。