動画(62秒)でご覧下さい。 西本願寺門主良如裏書の掛軸
西本願寺門主裏書の掛軸
この掛軸を初めて見た時、ボロボロでゴワゴワに丸まっていて触ったら崩壊しそうでした。「ご先祖様のものでなかったら捨てていた」と思いました。その後、今昔館の調査で約360年前の貴重なものと判りました。
◆ 絹本著色方便法身像(保存修理)
〈作品について〉
裏書きから西本願寺第十三代良如上人(1612~1662,1630~1662門主在位)からの下賜品と判明する方便法身像(阿弥陀如来像)です。
本紙(絵の部分)は、絹に岩絵具と金泥、截金を用いて描かれており、これらを絹に接着している膠の強度が低下して剥落が進行しています。
絹に描かれた絵画は、表からだけではなく裏からも絵具で彩色が施されていることが多く、表の絵具が剥落して絹だけになっている箇所は、絹の目から裏の絵具の色が透けて見えている状態です。
(左)表絹本著色方便法身像 表側 (右)同 裏側
濃い青色に見える部分は、銅の成分が含まれた絵具を使っているため、酸化により裏打ちの紙の変色、強度低下を進行させています。
巻き解きの繰り返しにより折れが多数発生しており、このことが原因で、絵具の剥落が今後さらに進行する恐れもあります。
絵が描かれた絹に直接裏打紙が打たれ、さらに周囲の裂(きれ)とあわせて複数回の裏打ちが施されて掛軸に仕立てられています。その際に使用される糊は「小麦澱粉糊」で、おおむね100年経つと接着力が弱まったり、逆に全体が硬くなってしなやかさが失われたりし、さまざまな損傷を引き起こす原因となるため、日本の絵画はおよそ100年ごとに定期的に解体修理(裏打ちの打ち直し、仕立て直し)が行われてきました。
この作品は、江戸時代初期に制作されたあと、江戸時代末期から明治ごろに少なくとも一度は解体修理が行われています(その時に、裏書きが再使用された痕跡があります)が、そこから起算しても優に150年以上は経過していると思われ、今後絵を維持していくためには、解体修理が必要な時期をすでに迎えているといえます。
〈今回の本格的修理について〉
・絵具層の状態が危険であり、絹の両面に絵具層があることから、水をたくさん使用して短期間に裏打の取替、仕立て直しを行う一般的な方法では、絵の大切な表現が損なわれてしまう可能性があります。また、裏打紙はすでに絵や掛軸全体を保持する力を失ってしまっていることから、すべての裏打紙を取り除いて新たな手漉和紙に交換する必要があります。
・絵の表面を保護した上で、裏面の絵具を壊すことがないよう、少しずつ裏打紙を取り除いていくため、修理には半年以上の期間を必要とします。
・折れなどにより、絹自体がなくなってしまっている箇所には、補修絹(放射線照射により強度を弱めた補修専用の絹)をはめ込みます。
・周囲に付いている裂や金具は、絵に相応しい上質のもので、前回修理のときにも元のものを修理して使ったと思われますので、今回も、損傷している箇所を修理した上で再び使用します。
・将来の折れの発生を少しでも遅らせるため、軸を太く巻くための「太巻添軸」を作成し、新しい桐箱に納入します。
・裏書きは、前回修理では表装背面に貼り戻ししていましたが、前述のように、掛軸を保持するには強度が低下しているため、取り外して別に保存(散逸を防ぐため、本紙と同じ箱に納入)します。このことにより、作品と裏書きを並べて展示することも出来るようになります。
クラウドファンディング期間は4/29までです。
ご支援をよろしくお願い致します。
今日もご先祖様のお力添えを頂戴できますようお願いします。
文化財修復活動の動画
・100年先プロジェクト(45秒)
・阿弥陀如来像(平安末)(70秒)
・西本願寺門主裏書き「方便法身像」(江戸時代)(58秒)
大阪の豪商・加島屋 第10代 廣岡久右衛門正直の孫
神戸中医学院(芦屋薬膳)代表 西野久子(旧姓:廣岡)
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